仲野 元紘 さん

略歴

1997年 京都産業大学外国語学部言語学科ロシア語専修入学
2001年 同卒業
(2009年2月現在)

どんな学生生活をおくっていたか

私がロシア語を学ぶことになったのは、元来のあまのじゃくな性格もあり「誰もがしていることではなく、他人と違ったことをやりたい」と思っていた中で、大学受験勉強中に、英語以外の言語に興味を持ったことがきっかけです。何気なく見た世界地図で、それまで遠い国だと思っていたロシアが実は日本の隣国であることに気づき、また、ソ連崩壊後、市場主義経済が導入されて数年が経った頃でもあり、「もしかしたら近い将来、日本とロシアの関係はより緊密になり、ロシア語の需要が増えるかもしれない」と考え、ロシア語を学んでみようと思ったからでした。

入学後、留学先での授業が卒業単位として認められる「認定留学制度」を利用して、3回生の時にモスクワに約1年間留学しました。ロシア語の勉強だけではなく、留学期間中にできるだけいろいろな経験をしてみたいと思い、留学期間の後半は、大学寮を出て、ロシア人の実生活を体験できるホームステイをしました。また、1人でロシア国内の旅行もしました。夏には、ヴォルガ河のクルージング・ツアーに参加したり、冬には、シベリア鉄道でイルクーツクとウラン・ウデまで行き、バイカル湖やチベット仏教の寺院を見に行ったり、また、北極圏のムールマンスクまで行き、オーロラを見に行ったりしました。これらの経験は、語学力アップや社会勉強だけではなく、それまで気づかずにいた自分の新たな一面や行動力などを知る機会にもなりました。また、未知の環境に飛び込むことに不安を感じていても、いざやり始めたら意外に何とかなるものだなと、ある種の自信もつきました。

近況について

大学卒業後は、ロシア語を活かせる仕事をしたいと思い就職活動をしましたが、一般企業では希望する就職先が見つからず、海外の日本大使館で2年間の期限で働く「派遣員」の採用試験に合格したことから、在ラトヴィアの日本大使館で勤務することになりました。派遣員としての2年間は、初めての社会経験の上、海外、しかも大使館という特殊な環境もあり、いろいろと大変なこともありましたが、多くのことを勉強させてもらいました。上司からすれば、まだまだ未熟な若者だと思われていたと思いますが、今思うと寛大な心でご指導いただいたように思います。

また、仕事以外でも、週末に時間を見つけてはラトヴィアはじめヨーロッパ内をバスで旅行し、ラトヴィア語も少しだけ勉強しました(話せる程のレベルにまではなれませんでしたが…。ちなみにラトヴィア語の文法は格変化がロシア語よりも1つ多く、ロシア語よりも格変化が多い言葉が世の中にあることにびっくりしました。)。

派遣員の任期終了後は、外務省の職員として採用され、現在に至っています。
外務省で勤め始めてからは、主に会計事務の仕事を担当してきたため、ロシア語を使う機会がすっかりなくなりロシア語を忘れてしまっていますが、今、こうして京産大の卒業生として在学生のみなさんにメッセージを書くにあたって、自分の人生を振り返ってみると、何が自分の人生に影響を与えるか分からないということを強く感じます。

私はたまたま大学で専攻していたロシア語によって外務省で働く今の自分があるわけですが、それが何かは人それぞれだと思います。
学生の頃の私は、専攻していたロシア語を使う仕事しか考えられないと思っていましたが、派遣員や今の仕事を通じて強く感じたことは、言葉はあくまでもコミュニケーションの一手段であり、言葉を話すことが目的ではなく、自分が何を思い、何をやりたいのかが重要だということです。これは仕事だけでなく、人と人との関係においても言えることだと思います。自分が相手に何を伝えたいか、それをどう伝えるのか、それに対する相手の反応・意見を受け入れ、そしてそれに対して自分がどう応えるのかが大切だと思います。

学生の間にやっておいた方がいいこと

在学生のみなさんには、専攻している学問を学ぶことはもちろん大切ですが、それだけを学べば十分ということはなく、いろんなことに興味を持ち自分の可能性を広げていただきたいと思います。本を読んで知識を蓄えていくことも大切ですが、「百聞は一見にしかず」で、自分の感性を十二分に使って自ら体験することをお勧めします。様々な経験を通して、大学の中だけでは学べない「人としての総合力」を身に付けていって欲しいと思います。

そして、その経験の中から生涯を通してやりたいと思うものを見つけてもらえればと思います。学生の間にそれを見つけることは簡単なことではありませんし、一生をかけても見つからない人もいるかもしれません。

ありきたりな表現ですが、学生には時間がたくさんあります。社会人になるとこの「時間」のありがたみを切実に感じます。この時間を有益に使ってたくさんのことに挑戦してください。もちろん、挑戦したこと全てが良い結果を生むとは限りません。失敗することもあると思いますが、なぜ失敗したのか自分の中で振り返り次に活かすことで、人は成長し、より良い方向に向かっていくものだと思います。

最後に、とにかく、思う存分学生生活を楽しんでください。一見無意味に思えるようなことでも、将来いつか自分の役に立つ経験が得られるものと思います。
PAGE TOP