041231 2年次・小川久美訳

2004年12月31日付バリ・ポスト紙より

「お母さん、お母さん、お母さん」ウィラ(5歳)は父、母、そして兄弟の泣き声に迎えられ、大声で叫んだ。ウィラはスルタ・アリミン・アプリとエバヤニ夫婦の子どもで、西アチェ海域でマットレスの上に乗り漂流しているところを偶然発見されて救助され、西アチェ県ムラボの避難民キャンプにたどり着いたのだ。


12月26日(日)の朝、ウィラは兄のペンディ(10歳)、妹のノナ(2歳)といっしょにムラボの家の近くで遊んでいた。地震が起こって少し経つと、海の水位が上がり始め、すぐに巨大な波が西アチェ全域の浜辺に打ち当たってきた。海から500メ-トル離れていたムラボ軍管司令部も、その周辺にあった家屋も、アリミンの家も、すべてが平地までやってきた波に襲われ壊滅した。


ウィラは、波にさらわれ海の中にひきずりこまれたが、波に巻き込まれながらも、水に浮いていた棚か何かの木材につかまった。「私は海を見るのは慣れているから怖くなかったの。何かのドアにもつかまったけど、マットレスが流れているのが見えて、マットレスに乗り移ったの。怖くはなかったけど寒かった。」と、ウィラはけがをした左足を押さえながら話した。


母のエバヤニは「まさかやってくるとは思っていなかった地震と津波で私たちはバラバラになってしまいました。この2日間、私たちはウィラが無事なのかどうか全く分かりませんでした。」と、水が引いた後で、足の骨を折った夫、ペンディとノナには出会えたものの、ウィラを見失ってしまったことを話した。


2日間海で漂流した後、ウィラは、ボ-トでムラボ周辺の海を捜索していた住民によって発見された。1人でマットレスの上に乗って浮かんでいるウィラを見つけて、彼らはウィラを助け、ウィラを待ち続ける家族と会わせるために、ムラボの避難キャンプまで連れてきてくれた。現在ウィラと家族はメダンの親戚の所へ行くために救援の飛行機を待っている。


(2005年3月31日、2年次ウダヤナ大学留学中・小川久美訳)

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