050112 2年次・久禮郁子、2年次・吉野綾希子共訳

2005年1月12日付コンパス紙より

徐々にではあるが、地震によって壊され、津波によって砕かれてしまったナングル・アチェ・ダルサラム州のいくつかの地域が、再び息を吹き返し始めた。まずしなければならないことは、災害によって壊滅した社会資本の復旧である。しかし、その復旧の過程の中で、私たちは、アチェを一つの独自の文化をもつ社会としてよく理解し、アチェの人々自身が積極的に復興過程に参加できるようにしなければならない。


よく言われることだが、「文化はある地域を開発するための第一の入り口」であり、問題は、アチェ文化の魂を忘れることなく、包括的に、将来のアチェをどのように立て直すかということである。


社会人類学者のムフリス・パエニ氏は、1970年代末に、アチェ、特にガヨ地方の社会変化を研究した経験を持ち、現在は文化観光省の社会部門専門職にあるが、先週末コンパスのインタビューに応じて意見を述べた。以下はその抜粋である。


  • 被災後のアチェをどのように復興させていくべきでしょうか。
    • 今、私たちのすべきことは、あのアチェを、包括的にあるいは全面的に、一つのシステムをもって復興に導くことです。散発的な復興ではいけません。私たちはアチェを社会資本と文化が統合した一つのシステムとして見なければなりません。
  • 文化に対する理解はどれほど重要でしょうか。
    • 津波に襲われた後のアチェに、アチェ人以外の人が自分たちのやり方を持ち込むのはまちがいです。私たちの国にある、お互いに助け合うという気持ちを大切に、アチェ文化を理解し、アチェ人の立場でアチェを復興させるのです。単なる同情で、ましてやアチェをビジネスの対象として見る人は、アチェに来るべきではありません。
  • 文化的見地からは、アチェをどのように復興させていくべきでしょうか。
    • 目に見える文化の復興と目に見えない文化、価値の復興という二つのことがあります。


まず、私たちは、アチェが貴重な史跡の宝庫であることを知っています。アチェの至る所に、アチェのみならず世界的にも貴重な遺産である史跡が見られます。例えば、バイトゥラフマンモスク、ファン王女遺跡群、シアークアラ墓地等です。これらはアチェの誇りの象徴であり、同時にアチェ文化の魂の一部でもあります。アチェ社会は、物事を千年単位で考えるような、過去をとても尊重する社会なのです。


社会資本の復興以外に、アチェが先祖から受け継いできた遺産が早急に復興される必要があります。壮麗な遺跡がよみがえるのを見れば、彼らは、自分達がまだアチェの大地に生きているという品位と自尊心を思い起こすでしょう。日本は、長崎の被爆地に美しい公園を作り、未来への希望を表しました。今からでも、アチェの人々の魂に訴えるような、アチェを象徴する文化遺産の景観の復興を考えなければなりません。


また、それに劣らず重要なのは目に見えない文化を守ることです。アチェ社会は自然から多くのことを学んできました。アチェの人々を、アチェの外へ持っていってはならないのです。アチェの子どもは、アチェの自然を先生として教育されます。アチェの子どもが養子として連れて行かれることは決して認められません。


  • 文化的見地からのアチェ復興において、どのようなことに注意するべきでしょうか。


アチェの伝統舞踊を見てください。クライマックスの状態で音楽が響き渡ったかと思えば、突然あるタイミングで止まり静寂が訪れるような、非常にダイナミックなものです。津波に襲われたアチェはすぐに復興されなければなりません。アチェには、あまりにも多くのことが約束されてきました。復興も、長い間待たされ、その間に病気が蔓延するようになってはいけません。アチェの人々は実現を求めているのです。


アチェ社会は偉大で栄光ある過去にとても強く影響されています。スルタンの黄金時代は、イスカンダル・ムダがいかに偉大であったかということなど、アチェ社会に語り継がれてきました。イスカンダル・ムダの時代、アチェは黄金の貨幣をもち、貿易を中心として栄えました。そのことが、アチェの人々の思い出を常に刺激し、どのようにしてかつてのアチェの繁栄を取り戻すかと考えさせるのです。


また、アチェは、サムドゥラ・パサイ王国の最盛期、4万から5万の人口を抱え、マドラス、ボンベイ、スリランカのような南インドからやって来た人々も多くいました。このため、アチェの民族性はインドとも共通している部分が多く、アチェの文化は他のマレー系の民族の文化とも同じではありません。


現在、アチェには、今の支配者はアチェの栄光を取り戻すことができず、それどころか、アチェをさらに困窮させている、との思いがあります。サバンからメラウケまでの統一インドネシア共和国の中で、アチェがその独自の文化を尊重され、復興に向かうことが必要です。


(2005年2月17日、2年次・久禮郁子、2年次・吉野綾希子共訳)

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