神山天文台が明らかにする新星爆発の姿

2018.10.09

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ニュース研究理学部天文台
新星は、太陽のような普通の恒星と、白色矮星と呼ばれる高密度な恒星(角砂糖1個分の大きさが1トン以上もある)の2つが、非常に近い距離で互いに巡り合っている「近接連星系」において起こる爆発現象です(「古典新星とは?」)。新星爆発が起こる際には、さまざまな元素が合成されており、普通の天体ではほとんど合成されないような元素が作られることから、宇宙の「元素工場」の一種として、注目されています。

神山天文台では2010年の設置以来、口径1.3m荒木望遠鏡と本学独自開発の観測装置を活用した新星の研究を続けてまいりました。特に2012年には、世界で初めてC2分子およびCN分子が爆発直後の新星中で生成されている様子を本学学生が捉え、これを学術論文として世界に発信しています(「新星におけるC2分子の世界初検出!」)。この発見のきっかけとなった、2012年に爆発した「へびつかい座」新星V2676 Ophは、その後も詳しい研究が神山天文台のスタッフによって継続され、続々と関連成果が得られました(「太陽系の材料は新星爆発で作られた」「古典新星の「火の玉」における分子生成の謎を解明」「新星爆発は煤だらけ?」)。今回、神山天文台・天文台長の河北 教授は、V2676 Ophに関する一連の研究の総まとめを「A Review of the Evolution of Classical Nova V2676 Oph: Formation of Molecules and Dust Grains」と題する論文として発表いたしました。本論文の内容は、2017年9月11日—16日にイタリア・パレルモ島で開催された国際研究集会「The Golden Age of Cataclysmic Variables and Related Objects IV」で河北台長が行ったV2676 Ophに関する招待講演を元にしており、爆発によって放出されたガスの分布などについての新しい知見についても報告しています。

新星V2676 Ophは、爆発直後に光球面が大きく膨張し、通常の新星よりも光球面温度が下がっていたようです。一酸化炭素分子COの放射冷却がトリガーとして連鎖的に冷却が進んだ可能性があります。こうした温度低下が原因となって、通常は見られないC2分子やCN分子が生成されていたと考えられます。また、新星爆発で放出さえたガスは炭素に富んでいたと考えられており、爆発後90日後ほどたった頃に大量に炭素を含むダスト(塵)が発生しています。今回の論文では、爆発後1,138日後の観測データを解析した結果、爆発後にドーナツ状にガスが濃い部分が形成され、その中でダストが生成されていた可能性が示唆されました(新星爆発では球対称にガスが放出されるのではなく、連星系の軌道面内に円盤状にガスの濃い部分が形成されているとする最近の仮説を支持する結果です)。
図1:へびつかい座の新星 V2676 Oph の模式図
一方、同じ国際研究集会にて招待講演を行った神山天文台・新井 研究員の論文「Optical and Near-infrared High-resolution Spectroscopic Observations of Nova V2659 Cyg: Structure of Nova Ejecta and Origin of Two-distinct Velocity Systems」も同時に出版されました。新井研究員は新星爆発における7Be(ベリリウム)という重要な元素の観測でNature誌に論文を掲載されるなど新星研究の分野で活躍をしています(「新星爆発は宇宙のリチウム合成工場だった」「新星爆発によって生じる「火の玉」の内部構造の謎を明らかに」)。今回の論文では、2014年に爆発した「はくちょう座」新星V2659 Cygにおいて観測された特殊な吸収線スペクトルについての観測結果を報告し、新星爆発時の非対称なガス放出について議論しました。特に、今回の論文では、神山天文台で開発した高効率・赤外線高分散分光器WINERED(東京大学大学院との協働開発)を荒木望遠鏡に取り付けて行った観測成果が重要な役割を果たしています。WINEREDによって、これまで新星においてほとんど得られていなかった波長1μm付近の高分散スペクトルを得ることに成功し、中性He(ヘリウム)原子の出す輝線(再結合輝線)を高い精度で観測し、視線方向に-450 km/s および+170 km/sで膨張するガス成分を検出しています。

新星爆発の観測的な理解は、現在においても十分に進んでいません。観測的には様々なバリエーション(光度曲線の形状の違いやガス膨張速度の違い、スペクトルに見られる輝線の種類の違い、ダスト生成の有無など)が存在することが分かっている一方で、詳細な観測を行うことができるような明るい新星爆発が起こる確率が少ないためです(新星は天の川銀河面で生じる確率が高いのですが、そうした方向には星間ダストによる減光が強く生じるため、太陽系に近い領域で新星爆発が起こらないと明るく観測されません)。継続的な観測研究の推進が、新星爆発の着実な理解へとつながります。現在、神山天文台は日本国内の新星観測研究の拠点となりつつあり、今後も独自開発の観測装置を用いた独創的な研究を推進する計画です。
図2:口径1.3m荒木望遠鏡に取り付けたWINERED。現在は、La Silla観測所(チリ共和国)の口径3.6m NTT望遠鏡に取り付けて観測を実施している。

掲載論文

  • "A Review of the Evolution of Classical Nova V2676 Oph: Formation of Molecules and Dust Grains", Kawakita & Arai, 2018, https://pos.sissa.it/315/064/pdf
  • "Optical and Near-infrared High-resolution Spectroscopic Observations of Nova V2659 Cyg: Structure of Nova Ejecta and Origin of Two-distinct Velocity Systems", Arai et al., 2018, https://pos.sissa.it/315/053/pdf

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