【神山天文台】ジャコビニ・ツィナー彗星でダストは崩壊していなかった~特異な彗星の新たな素顔が偏光撮像観測で明らかに~

2023.07.18

ジャコビニ・ツィナー彗星が2018年に地球に接近した際、新中善晴氏(京都産業大学研究機構)・河北秀世教授(同理学部・神山天文台長)らの研究グループは、独自に開発した偏光撮像装置を用いて観測を行いました。このたびそのデータを詳細に解析したところ、この彗星に含まれているダスト(塵)について、その粒子サイズの分布が彗星コマの中の位置によらず均一であることが明らかになりました。これはコマの中でダストが大規模に崩壊していないことを示しています。この彗星のダストには有機分子が豊富に含まれると推定され、この場合、彗星コマ環境では崩壊しにくい一方で、この彗星から放出されたダストが起源とされる10月りゅう座流星群の流星体が、大気飛翔中の発光の途中でバラバラになりやすい特徴も説明できる成果です。

本研究の成果は2023年7月17日、米国天文学会誌The Planetary Science Journal(オンライン版)を通じて出版されました。

論文情報

雑誌名 The Planetary Science Journal(オンライン版)
論文タイトル Optical imaging polarimetry of comet 21P/Giacobini–Zinner during its 2018 apparition
(21P/ジャコビニ・ツィナー彗星の2018年回帰の可視光偏光撮像)
著者 新中 善晴(京都産業大学 研究機構)
河北 秀世(京都産業大学 理学部/神山天文台)
小林 仁美(株式会社フォトクロス)*本学客員研究員
古荘 玲子(都留文科大学/国立天文台)
渡部 潤一(国立天文台)
DOI 10.3847/PSJ/acdf49

本研究は科研費「若手研究(課題番号:JP20K14541、研究代表者:新中善晴)」の支援により実施されました。
本研究で用いたデータの取得にあたって国立天文台の50センチ公開望遠鏡に搭載された偏光撮像装置PICOは、河北秀世 教授(本学理学部・神山天文台長)が池田優二氏(株式会社フォトクロス代表取締役、神山天文台客員研究員)らとともに開発したものです。PICOはこれまでに、米国航空宇宙局(NASA)のディープ・インパクト計画で行われたテンペル第1彗星の核への衝突実験で放出されたダストの性質を明らかにしたり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のDESTINY+計画(2024年打ち上げ予定)の探査対象である小惑星フェートンの表面のダストの性質を明らかにしたりするなど、様々な成果を出しています。

研究紹介ショート動画

研究代表者の新中善晴氏(京都産業大学研究機構)が本研究について紹介します。

関連リンク

【執筆:楜澤徹郎 京都産業大学URA(リサーチ・アドミニストレータ-)】
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