神山天文台とインドネシア・バンドン工科大学による国際共同研究の成果:特異な爆発を示した古典新星ASASSN-17hx

2019.07.01

今回のポイント

  • 京都産業大学神山天文台とインドネシア・バンドン工科大学ボッシャ天文台はこれまでも学生間の交流や共同研究を進めてきました。
  • 今回ボッシャ天文台で、神山天文台から移設した観測装置を用いた古典新星ASASSN-17hxの観測が実施され、同新星は観測時期に応じて見られる成分が変化するという非常に珍しい特徴を持つことが判明しました。このことは、新星爆発の爆発メカニズムの解明にむけた重要なヒントになると考えられます。
  • 神山天文台はバンドン工科大学・ボッシャ天文台との研究協力をさらに強固にし、今後も新星の観測研究を通じて、日本とインドネシアの交流を更に進めてゆく予定です。

本文

京都産業大学 神山天文台は、2014年にインドネシア・バンドン工科大学の学生を招いた新星に関する研究・観測実習を実施(こちら)、2015年には本学とバンドン工科大学間の研究協定を締結し(こちら)、2016年には本学神山天文台から低分散分光器をバンドン工科大学ボッシャ天文台へ移設して、日本では観測できない新星の観測研究を開始しています(こちら)。新星は、白色矮星と呼ばれる地球サイズの高密度天体で生じる爆発現象であり、爆発に伴い太陽系や他の星・惑星系の材料の一部を宇宙空間に供給しているという意味でも、重要な天体です。新星は恒星が密集した天の川中心部に近い方向に出現する確率が高いため、天の川中心方向が観測しやすいインドネシアから観測することは非常に有利になるのです。2016年以降、神山天文台はボッシャ天文台を協力して、新星の観測研究に関係する成果を挙げてきています(こちらこちら)。

これまで、新星は爆発放出物の成分の特徴から2つのタイプ(鉄イオンの輝線が顕著なFe II型と、鉄イオンの輝線が目立たずヘリウムや窒素の輝線が顕著なHe/N型)に分類されてきました。しかし、なぜこのような2つのタイプに分かれるのか、分類の物理的意味は未だ十分に理解されていません。今回、ボッシャ天文台で実施した観測によって、2017年6月23日ごろに爆発を起こした新星ASASSN-17hxが、観測時期に応じて観測されるタイプが変化するという非常に珍しい特徴を持つことが判明しました。この結果は、これまで行われてきた新星の分類が、新星爆発による放出物の成分量を直接反映しているということではなく、放出メカニズムに起因した物理状態の違いを反映している可能性が高いことを示唆しており、新星爆発の爆発メカニズムの解明にむけた重要なヒントになると考えられます。
神山天文台の河北台長は「バンドン工科大学のハキム・マラサン教授とは20年来の親友。その縁で神山天文台とバンドン工科大学のボッシャ天文台との間で、学生の交流や共同研究が始まりました。今後、バンドン工科大学ボッシャ天文台との研究協力をさらに強固にし、今後も新星の観測的研究を続けていく予定です」と語っています。今後も神山天文台では、観測研究を通じて、日本とインドネシアの交流を更に進めてゆく予定です。
この研究成果は、 Adhyqusa et al. “Optical spectroscopy of nova ASASSN-17hx at Bosscha Observatory”として、2019年6月26日(世界時)に英国の学術専門誌『ジャーナル・オブ・フィジックス:カンファレンス・シリーズ(Journal of Physics: Conference Series)』のオンライン版に掲載されました。

図1:新星爆発の想像図(クレジット:京都産業大学)。
図2:2014年に本学で実施したバンドン工科大学の学生との新星に関する研究・観測実習の写真(一番手前の右がハキム・マラサン教授)。
図3:古典新星ASASSN-17hxの光度曲線 (American Association of Variable Star Observers (AAVSO) databaseより)

論文情報


タイトル “Optical spectroscopy of nova ASASSN-17hx at Bosscha Observatory”
(ボッシャ天文台での新星ASASSN-17hxの可視光分光観測)
著者 Azlizan Adhyaqsa, Ade N. Istiqomah, Dhimaz G. Ramadhan, Irfan Imaduddin, Hakim L. Malasan, Akira Arai(新井 彰) and Hideyo Kawakita(河北 秀世)
雑誌 Journal of Physics: Conference Series, 1231, 012006 
発行年月日 2019年6月26日(世界時)
 DOI  10.1088/1742-6596/1231/1/012006
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