【法学部】戦慄かなのさんはやっぱりFabulous(ファビュラス)だった~後編:服部ゼミの様子
2023.01.17

セルフプロデュースユニット「femme fatale」のメンバーであり、NPO法人bae(ベイ)の代表理事を務める戦慄かなのさんが、法学部の科目「矯正社会学Ⅱ」で登壇されました。その後、法学部の学生約60名とのゼミ授業にも参加され、児童虐待や育児放棄、少年院に関する数々の質問にお答えいただきました。その様子を、前編(矯正社会学Ⅱの様子)と後編に分け、詳細にレポートしていきます。
後編の記事では、服部ゼミの様子についてご紹介。学生から挙がった質問と戦慄さんの回答、その後の交流の様子を含め、写真付きでレポートしていきます。
(学生ライター 外国語学部4年次 福崎 真子)
討議の様子


学生から戦慄さんへの質問


Q1. 虐待の被害者にとって頼れる存在 昨今の虐待防止対策
学生:戦慄さんの、高橋みなみさんとの対談動画を見ました。そこで「頼れる存在がいなかった」という話が出ていましたが、当時の心境を教えてほしいです。また、昨今コロナ禍で虐待被害が見つかりづらい状況にありますが、どのような対策が必要だと思いますか?
【高橋みなみ × 戦慄かなの】対談|少年院とはどんな場所なのか?(1/2) - YouTube
(対談動画はこちら↑ 戦慄さんがAKB48第一期メンバー 高橋みなみさんと共に自身の過去を語っている)
戦慄さん: 頼れる人がいなかった当時は、自分でもどうしたらいいか分からず、本当にどうしようもなく、諦めに近い状態だったんじゃないでしょうか…。
その上で、昨今必要な対策を言うなら「地域コミュニティの繋がり」だと思っています。カウンセラーや教員の方々よりも、近所の人が、子どもだけじゃなく親と、そして家族全体と関わりを持つことが、虐待の根本的な解決に繋がるのではないでしょうか。
Q2. 「誰」が「どういうアプローチ」をすべきか
学生:服部ゼミで児童虐待について学習していて、先生や周りの大人が子どものプライバシーに対してどこまで踏み込んで良いのか、加減が難しいと感じました。戦慄さんは児童虐待に対して「誰」が「どういうアプローチ」をすべきだと思っていますか?
戦慄さん:難しい…(迷うような表情)。でもやはり、一番子供にとって身近なのは学校の先生なんですかね。すごく難しいんですけど、ケース・バイ・ケースというか…。
アプローチに関しては、子どもと対話するだけじゃ解決には繋がりにくいと思っているので、もしできるのなら、その親とコミュニケーションを築いて、親からのSOSを受け取れるようになることが大事だと思います。

Q3. 同じ少年院にいた子たち 戦慄さんが社会復帰できた理由
学生:少年院を出てから再度非行に走ってしまう人はどれくらいいるのでしょうか?また、戦慄さんが社会復帰できた理由は何だと思いますか?
戦慄さん:少年院を出てから、当時一緒にいた子たちの今の様子が凄く気になることがあって。どうしても話が聞きたくて、一緒にご飯に行ったことがあるんですけど「ああ、あの子は少年院にまた戻ったよ」みたいな話をよく聞きますし、非行ではないにしろ、水商売みたいなことをしている子が大半です。ダメだというわけじゃないんですけど。少年院を退所するときは、みんな「介護士になりたい」「大学入りたい」とか言って出ていくんですけど…。やっぱり、少年院の中でビジョンを固めて、変わりたいという強い意志を身につけないと難しいのかなって思うときがあります。
Q4. お母さんと「ゼロから関係を築いていきたい」
学生:矯正社会学Ⅱの授業で、戦慄さんは「お母さんとの関係を保っている」という話を聞いたのですが、なぜそう思えるのでしょうか?私だったら、縁を切りたいと思ってしまいそうです。
戦慄さん:どうなんだろう…(深く考える仕草)。もちろん、私と違う人がいてもいいと思うんですよ。切りたい人は切ればいいし。親孝行しないといけないとは全く思ってなくて。
私は、自分が自立してお母さんと関わることにデメリットは無いと思っているし、それくらいポジティブな気持ちでお母さんと向き合って、またゼロから新しい関係を築こうと決めているんです。「私、こんなことされたのに」とか考えないようにしています。私の中で、虐待をしてきたお母さんと今のお母さんは別人です。虐待のことを許したわけじゃないけど、今は暴力を振られることがないし。不思議に思えるかもしれないけど、やっぱり私としては昔からお母さんの愛情が欲しかったので、こういう違った形で関われることはむしろ幸せです(凛とした表情)。
Q5. どこからが虐待?SOSを出す基準
学生:どこからが虐待だと思いますか?また、被害者がSOSを出して良い基準は何だと思いますか?
戦慄さん:SOSは、出したいと思ったときに出したら良いと思います。虐待は…。私もいまいち定義が分からないんですけど、子どもが大人の言うことに縛られていたり、それで自立できなかったり、人格形成に関わるものであれば虐待だと思います。暴力や暴言などの決まった行動が無くても、ただ自分が嫌だなって思う親なのであれば「毒親」というジャンルになり得ますよね。
学生のリアクション&記念写真撮影会の様子

参加者のなかには、戦慄さんの大ファンである学生も。戦慄さんが大好きなキャラクター「ワンワン」のぬいぐるみを持って駆けつけました。「私は中学生時代に挫折し、非行に走りそうな時期がありました。そんななか、戦慄さんのアイドルとしての活躍が私にとっての支えでした。これからもずっとキラキラしていてください…!」と、涙を流しながらエールを送る場面もありました。
討議の最後には、盛大な拍手のなか、学生から戦慄さんへ感謝の花束が手渡されました。その後は記念写真撮影会が行われ、各々が楽しそうにポーズをきめるなど、互いに交流できたことへの嬉しさを噛み締めました。
学生の感想
終始、非常に真剣な眼差しで戦慄さんの講義を聞いた学生。今回の講義を通して一番印象に残ったことについて聞きました。
- 戦慄さんとお母さんの関わり。自分なら虐待をされていた親に対して「会いたい」という感情は湧いてこないと思うのですが、戦慄さんは色々なことを乗り越えて今の親子関係を築いていることを知って、すごいなと素直に思った。
- 「自分のような辛い思いをする人を少しでも減らしたい」という強い気持ちが伝わってきたこと。
- 戦慄さんと妹さんのように、虐待による影響は人それぞれ異なるということ。虐待自体も定義が難しく、その被害の表れ方も多種多様で、確固とした枠組みはないと思った。虐待を受けていることに気付かずSOSを出さない子どもがいる現状も放置できない。
- 戦慄さんは母親にかなり酷い虐待を受けていたにも関わらず、今も年に2回母親に会っている関係だと聞いて驚きましたが、その理由(また0から関係を作り直したい)を聞いて、戦慄さんはすごくしっかりした考えを持たれている方だなと思った。
- 子どもだけでなく、大人へのケアも重要だということ
筆者の所感
自らの非行について向き合うこと、自らが受けた虐待について振り返ること、虐待被害根絶のために自らがリーダーとなって組織を動かすことなど、戦慄さんの取り組みは、きっと中途半端な気持ちでは達成し得ない、純粋に称賛されるべきことであると感じます。
本当は、戦慄さんの話す言葉を一字一句漏らさず、文字に起こして皆さんに伝えたいという気持ちでいます。戦慄さんの、虐待の本質に迫る質問に対し、言いよどみながらも回答してくださる様子や、学生を励ます明るい表情、虐待のエピソードについて語るときの少し悲しそうな微笑み、NPO活動について宣言するときの凛々しい眼差しまで含め、記事用に組み立て直した文章では全て伝え切ることはできないと思うからです。
しかし、例えそれらの一部分でも、この記事を読んでくださる皆さまにお伝えできていれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。


