【神山天文台】近赤外線高分散分光器WINEREDがチリ共和国の口径6.5mマゼラン望遠鏡でのファーストライトを迎えました

2022.11.22

日本時間2022年9月13日、京都産業大学神山天文台の研究プロジェクト「赤外線高分散ラボ(Laboratory of Infrared High-resolution spectroscopy: LiH)」は、東京大学や民間企業と協働で開発した近赤外線高分散分光器WINERED(ワインレッド)をラス・カンパナス天文台(チリ共和国)の口径6.5mマゼラン望遠鏡に設置し、ファーストライト(※天体からの光をはじめて入れること)を迎えました。

赤外線高分散ラボでは、2015年のプロジェクト設立当初から世界展開を念頭に活動をしており、その第一歩として、世界トップの性能を持つ観測装置の開発を行ってきました。WINEREDの大きな特徴は、望遠鏡で集めた光を無駄にしない(感度が高い)という点で、現在世界中で利用されている同様の装置と比べて3~5倍以上高い感度を有しており、世界最高水準を達成しています。

2012年5月からWINEREDを神山天文台 荒木望遠鏡(口径1.3m)に搭載し、エンジニアリング観測やサイエンス観測を開始してきました。観測対象は、太陽系小天体や星間物質、太陽系外惑星、本学創設者 荒木俊馬博士が理論研究をしていたセファイド型変光星やはくちょう座P星、新星といった質量放出天体など多岐にわたります。こうした成果により、2017年から2018年にかけて、観測条件の良いラ・シヤ天文台(チリ共和国)の新技術望遠鏡(口径3.58m)へWINEREDを移設し、サイエンスのさらなる拡大を目指して観測を行ってきました。その後、2018年から、これまでに観測されたことのない最も遠い宇宙や暗い天体を観測するため、カーネギー財団が所有するラス・カンパナス観測所(チリ共和国)のマゼラン望遠鏡(口径6.5m)への移設を進めてきました。

2019年までに、WINEREDのマゼラン望遠鏡への設置や観測に必要な準備が進められましたが、ファーストライトを迎える直前のタイミングで、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、何度も観測が延期されてきました。今年5月に、ようやく3年ぶりにラス・カンパナス観測所への訪問が再開され、5月、7月、9月と現地で観測に向けた準備を進めてきました。現地での設置や調整作業は、神山天文台の猿楽 祐樹 研究員、大坪 翔悟 研究員、竹内 智美 研究員の3名が中心となり、日本の共同研究者やカーネギー財団、ラス・カンパナス観測所の研究者と協力して進められ、2022年9月12日にマゼラン望遠鏡(口径6.5 m)でのファーストライトに成功しました。ファーストライト後は、装置の性能や望遠鏡駆動を確認するエンジニアリング観測や、大マゼラン星雲内のセファイド型変光星などのサイエンス観測が実施され、予定通りの性能であることが確認できました。今後は、装置自体のさらなる性能向上と、マゼラン望遠鏡での観測安定化を目指し、本学在学生や研究員を中心に研究を進めていきます。

ファーストライト後の記念写真。
マゼラン望遠鏡のナスミス台でWINEREDを設置している様子。
マゼラン望遠鏡のナスミス台に設置されたWINERED。
制御室から観測する様子。
WINEREDのマゼラン望遠鏡でのファーストライトで得られた天体のスペクトル画像。
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