死にゆく大質量星が星のごく近くに作る衝撃波を発見

2018.09.12

概要

東京大学大学院・京都産業大学などから成る研究グループは、京都産業大学 神山天文台の口径1.3m荒木望遠鏡と近赤外線高分散分光器WINEREDを用いて、「はくちょう座P星」(死にゆく大質量星)からの定常的なガス放出に伴う衝撃波が星のごく近くに作られていることを、世界で初めて見つけました。神山天文台において独自開発した、世界最高レベルの感度と高い波長分解能を持つ近赤外線分光器WINEREDを用いることで、星の周囲に放出されたガスの空間構造と速度構造を詳細に調べることができました。今後、大質量星がどのように死にゆくか、星の一生の解明に寄与することが期待されます。

本研究の詳細については、東京大学大学院・理学系研究科のホームページをご覧ください。

WINEREDについて

京都産業大学 神山天文台では東京大学大学院や関連企業と恊働した研究組織「赤外線高分散ラボ(Laboratory of  Infrared High-resolution spectroscopy:LiH)」によって、世界最高性能を誇る波長1ミクロン帯・近赤外線高分散分光器WINEREDを開発してきました。その性能は同様な天体観測装置の中でも群を抜いており、2016年までは神山天文台の口径1.3m荒木望遠鏡に取付けて観測を実施してきましたが、2017年からはチリ共和国にあるラシヤ観測所(欧州南天文台)・口径3.6m NTT望遠鏡にWINEREDを移して観測を実施しています。また、2018年度中には、ラスカンパナス天文台・口径6.5m マゼラン望遠鏡に取付けて観測する予定です。世界の観測適地にある大口径望遠鏡とWINEREDを組み合わせることで、これまで同波長域で人類が見た事のない遠い宇宙の姿を明らかにできると期待されています。

神山天文台の天文台長であり、また今回の論文の共著者でもある本学理学部の河北 教授は「今回の研究成果も、またWINEREDの開発そのものも、本学のメインテーマである『むすびわざ』の精神を具現化したものです。本学の教員・学生、学外研究機関や関連企業の研究者の方々など、国内外の専門家が神山天文台に集まることで新しい出会いがあり、そこから様々なイノベーションが誕生しつつあります。」と今後の発展への期待を述べています。
図1:ラシヤ観測所・NTT望遠鏡に設置したWINERED。
現在、次々と新しい観測データが得られており、様々な研究が進行中です。口径8mのSubaru望遠鏡に匹敵する観測データも得られており、事実上、世界の最先端に立っています。
図2:ラシヤ観測所から見た夜空(天の川)。
晴天率が高く、水蒸気が少ないなどの好観測条件がそろっています。また、日本からは観測が困難な大・小マゼラン銀河や、天の川銀河の中心方向が容易に観測できるため、様々な研究テーマに挑戦できるというメリットがあります。
お問い合わせ先
京都産業大学 神山天文台
窓口取扱時間
月曜日~金曜日:9:00~16:30 ※休館日を除く

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