爆発を繰り返す天体「回帰新星」に迫る!

2018.04.23

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ニュース研究理学部天文台
新星(詳しくは「古典新星」)は、突如、星が輝きだすように見える現象ですが、その正体は「白色矮星と普通の恒星の連星系で起きる大爆発」です。普通の恒星からガスが白色矮星表面に降り積もり、臨界量に達すると爆発を起こすのです(図1)。爆発の際には、白色矮星に降り積もったガスが放出され、白色矮星自身は吹き飛びません。そのため、こうした現象は基本的に繰り返して起きると考えられており、実際に複数回の新星爆発が観測された天体がいくつかあります。それらを「回帰新星」と呼んでいます。
回帰新星は、爆発の度に降り積もったガスをすべて吹き飛ばしているのではなく、少しずつ白色矮星にガスの残りが溜まってゆき、白色矮星の質量が次第に増えてゆくと考えられています。しかし、白色矮星には、「チャンドラセカール質量」と呼ばれる、物理的に許される限界が存在します。もしも、チャンドラセカール質量以上の重さになると、白色矮星内部で爆発的な原子核反応が進んで大量のエネルギーを放出し、白色矮星自身が吹き飛んでしまいます。これは、「Ia型超新星」と呼ばれる極めて大規模な爆発現象で、ほぼ一定の明るさで光ることから、我々の銀河系の外にある系外銀河までの距離を測るために利用される重要な天体です(その観測から、この宇宙が加速的に膨張していることが発見されています)。つまり、回帰新星は、Ia型超新星の前段階の天体である可能性が高いのです。
回帰新星における(通常の)新星爆発は、白色矮星が重くなるほど頻繁に起こるとされます。では、これまで人類が観測した中で、もっとも新星爆発の周期が短い(つまり、もっともはやくIa型超新星になる可能性が高い)回帰新星は?というと、それが、M31N 2008-12a なのです。この不思議な名前の新星は、実は、私たちの天の川銀河に近い別の銀河、アンドロメダ銀河(M31)に存在する回帰新星です(図2)。ほぼ1年に1回の割合で、爆発を繰り返しています。M31は遠くにありますので、この新星もそんなに明るくはないのですが、多くの天文学者が、今後もっとも早くIa型超新星となる可能性が高い天体として、注目しています。
図2:回帰新星M31N 2008-12aが存在するアンドロメダ銀河(©NASA)。
今回の論文では、このM31N 2008-12a が2016年に起こした爆発について詳しく調べた結果を報告しています。可視光線の観測からX線の観測まで、さまざまな波長での観測が、世界中の天文学者の協力の下で実施されました。これまで、この回帰新星は347±10日の間隔で爆発していました。そのため、当初、2016年の爆発は9月中ごろと予想されていたのです。ところが、実際に爆発が起こったのは、約3か月遅れで、その年の12月12日だったのです。どうした急に、そんなに遅れてしまったのでしょう? また、この時は、いつもの爆発よりも、最大光度が明るくなっていました。爆発が遅れた事と関係があるのでしょうか?
いつもよりも爆発が遅くなった原因は、どうやら、爆発直前までの白色矮星へのガス供給がゆっくりとしていた為、という事のようです。ガスが伴星から白色矮星にゆっくりと供給される場合、なかなか白色矮星表面の温度が上がらず(光としてエネルギーが白色矮星表面から逃げることで、白色矮星表面のガスが冷却される効果があります)、そのために爆発の原因となる熱核暴走反応(Thermo-Nuclear Runaway)がなかなか起こらないからです。結果として、いつもよりも多くのガスを白色矮星表面に溜めてから新星爆発が生じており、3か月余分に時間がかかりましたが、より多くのガスを吹き飛ばして普段より明るくなっていたと考えられます。
本研究に参加した神山天文台・主任研究員の新井さんは、「今回研究対象となった天体M31 N 2008-12aは2008年12月に発見されて以来、毎年爆発を繰り返してきました。この天体ほど高い頻度で新星爆発を繰り返す天体は他にはありません。そのため、チャンドラセカール質量に近い白色矮星を持つ回帰新星とIa型超新星の関係という天文学的に重要なテーマを調べる上で格好の実験サンプルです。この天体はアンドロメダ銀河にあり、それほど明るくありませんので(極大可視等級が約18等)、まず毎年の爆発を察知するのが特に難しいのです。観測を成功させるために研究を主導したMartin Henze氏は世界中の突発観測可能な天文台や、アマチュア天文家に声をかけ、爆発の検出のためのモニター観測と、爆発後の追観測を実施しました。日本からも多数のアマチュア観測家が参加してこの研究に寄与しています。」と、その研究の重要性について語っています。
このように、回帰新星M31N 2008-12a は世界中の注目を集める新星爆発を繰り返し、徐々にIa型超新星の段階に向かって進んでいると期待されています。自然は、いつも人間の期待を裏切るような振る舞いを見せてくれます。その中から、新たな発見が生まれるのです。Ia型超新星への進化という観点からも、M31N 2008-12a の今後の振る舞いについて、引き続き、注目する必要があります。

本研究の成果は、米国天文学会の学術論文雑誌 Astrophysical Journal, Volume 857 (2018)「2018年4月号」に掲載されました。

タイトル:Breaking the Habit: The Peculiar 2016 Eruption of the Unique Recurrent Nova M31N 2008-12a(ユニークな回帰新星 M31N 2008-12a における特異な爆発)
著者:M. Henzeほか
雑誌:The Astrophysical Journal号;・頁 : Volume 857, article id. 68

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