超小型探査機が彗星の水のなぞを解明

2017.01.24

PROCYON探査機とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星 (コンセプト画像)。Credit: NAOJ/ESA/Go Miyazaki

国立天文台、ミシガン大学、京都産業大学、立教大学および東京大学の研究者からなる研究グループは、超小型深宇宙探査機プロキオン(PROCYON)に搭載されたライカ(LAICA)望遠鏡を用いて、2015年9月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の水素ガスを観測し、彗星核からの水分子放出率の絶対量を決定しました。
この彗星は、欧州宇宙機関ESAが進めたロゼッタ彗星探査計画の対象天体でした。探査機は彗星のごく近くにいたため、広がった彗星全体を観測することはできませんでした。またこの彗星は地球からの観測条件が悪く、我々の観測によってはじめて彗星のコマ・核モデルが検証できました。
プロキオン探査機による彗星観測は当初の探査計画では予定されていませんでした。探査機や望遠鏡の運営チームの努力により、検討開始から短期間で観測が実施され、科学的意義の大きな成果が得られました。
今回の成果は、超小型深宇宙探査機による世界初の理学成果です。また、大型の探査計画による精密な観測を低コストの計画がサポートするという理想的な形が実現され、今後の探査計画策定のモデルケースになると期待されます。

研究チームに参加した河北秀世(神山天文台・台長)は、「2015年5月初め、プロキオン探査機に搭載されたライカ望遠鏡で彗星の観測ができないかと、ライカ望遠鏡の開発担当者から相談をうけました。その時、すぐに頭に浮かんだのがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星でした。当時、本学大学院で学位をとったばかりの新中 善晴さん(現在、国立天文台特別客員研究員/日本学術振興会特別研究員PD)にも協力をお願いし、観測計画を主導してもらいました。」と当時の様子を振り返り、「検討開始から4ヶ月という短期間で観測が実現され、ロゼッタ彗星探査計画を日本の超小型深宇宙探査機がサポートするという実績が残せた事は、今後、このような小型衛星・探査機を使った日本独自の彗星探査の可能性が示せたのではないかと思います。将来が楽しみです。」と今後の彗星探査の発展に期待を寄せています。
 

本研究を主導した、本学大学院卒業生の新中 善晴さん(現在、国立天文台特別客員研究員/
日本学術振興会特別研究員PD)【写真は在学時のもの】
この研究成果は2017年1月24日発行の米国の天文学専門誌『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載されました。詳細につきましては、国立天文台のWebサイトをご覧ください。
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