【法学部】性犯罪被害者と向き合うー現場で働く警察官から知る性犯罪の現状と対策—

2023.01.31

ゲストスピーカーの京都府警・中京警察署刑事課課長代理 三原 恵 警部

法学部の専門教育科目「社会安全政策Ⅱ」(担当:田村 正博 教授)は、薬物犯罪やテロなど個別の犯罪類型ごとに現状と対策を学ぶ授業で、京都府警察で対策に当たっている方の講義を受けることで、より現実に即した問題認識を持つことを目的としています。
今回は「性犯罪・性暴力」をテーマに、京都府警・中京警察署 刑事課課長代理 三原 恵 警部をゲストにお迎えし、性犯罪捜査を通してその実態と対策について学びました。

(学生ライター 文化学部3年次 松田 こころ)

三原氏は警察官として30年間勤めておられ、殺人や自殺の現場など数々の事件を担当されてきました。その中でも今回は性犯罪の現場を中心に講義されました。


性犯罪には、被害者が犯人と面識がない「非面識型」と、被害者が犯人と面識がある「面識型」とがあります。非面識型には、住居に侵入する犯行や交通機関、施設内での犯行があります。住居に侵入する犯行への対策としては、鍵を必ずかけることが重要になります。住居が高層階であったとしても窓から侵入されるケースがあるため、戸締まりを忘れてはいけません。
面識型は、知人や親族、また学校や会社で関係性のある人物からの犯行を指します。特に学校や会社では、地位や影響力を利用した犯行が見られます。最近ではSNSで出会い、犯行に及ぶケースも増加しています。これは出会いを求める女性とわいせつ目的の男性という目的の違いから犯行が起きています。


こうした性犯罪に対して、警察では被害者をさまざまな角度から支えています。例えば、性犯罪指定捜査員の配置や警察と産婦人科、肛門診療医とのネットワークの構築、性犯罪捜査のための証拠採取セットの整備、初診料等の一部の公費による負担を行っています。
また、児童を被害者等とする事案に対しては、関係機関(警察、検察、児童相談所)が連携して対応しています。その取り組みの1つとして、児童の負担を軽減し児童の供述の信用性を高めるために、代表者聴取という方法を採用しています。代表者聴取とは、それぞれの機関の代表者が、同じ機会にまとめて児童から事件当時の状況を聞く方法です。

講義の様子
性犯罪の被害にあった場合は1人で抱え込まないことが大切です。京都府警察では性犯罪相談ダイヤル「ハートさん」(#8103)を設置しています。
三原氏は、捜査員の立場から「性犯罪は魂の破壊である」、「犯罪捜査において大切なのは、被害者を思う『心』」とおっしゃっていました。また、被疑者への怒りと被害者と向き合うことの難しさも現場の目線からお話されました。学生も現場を見てきた三原さんの話を真摯に受け止めていました。
三原氏の被害者にただ寄り添うだけでなく、被害者の今後の人生と変化する心にまっすぐ向き合っていらっしゃる姿がとても印象的でした。性犯罪と聞くとただ漠然と嫌なイメージがあり、誰かと話すことを避けてしまっていましたが、被害の現状を知り対策を正しく知ることで防げることもあるのだと気づくことができました。
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