【文化学部】京都・東九条フィールドワーク「こんなに温かい町だなんて、知らなかった。」~前編:フィールドワークの様子を紹介~

2022.05.31

文化学部京都文化学科の専門教育科目「京都文化フィールド演習」は、教室での学びと、京都の町で行うフィールドワークでの実践型演習で構成される科目です。
「多文化共生やさまざまな文化活動を知り、観光やまちづくりを考える」をテーマに学ぶ平竹 耕三教授クラスの学生たちは、京都市南区の東九条を訪れ、韓国の文化が根付く町を歩きながら、文化を継承・発展させるより良いまちづくりの方法を学びました。
フィールドワークの様子と、フィールドワークの企画意図や科目の魅力に関する教員・学生の思いを、前編と後編(企画意図と科目の魅力を紹介)に分けてレポートします。

(学生ライター 外国語学部4年次 福崎 真子)


前編では、フィールドワークの様子を紹介します。
東九条の町を歩く学生たちと平竹教授

京都市東九条のコリアンタウンについて

京都駅から南側に向かって少し歩くと、閑静な住宅街が現れます。ここ東九条は、かつて在日コリアンが多く住んでいた町です。昔と比べて人口は減りましたが、現在でも韓国・朝鮮にルーツを持つ方々が、京都府内で一番多く住む場所です。人口流出や建物の老朽化による町の過疎化が進んでいることを受け、外部から人を呼び込むため大規模な町並みの整備が行われることになっています。現時点では、妨げとなる木々の伐採や道路の舗装工事などが予定されています。

学生の取り組みとその様子

今回のフィールドワークで学生たちは、父が在日コリアン母が日本人のダブルであるヤン・ソルさんを中心に、ボランティアスタッフの方々と一緒に町を歩きながら、お話を伺いました。

はじめに、町並みの整備に伴って東九条の須原通周辺で開催されている「東九条 空の下写真展」を見学しました。この写真展は「昔の町並みが消えてしまうのではないか」、「町の姿は変わっても、ここで生きていた(生きている)人の証を残したい」との思いで、東九条でまちおこしのボランティアを行う方々が主催しています。町並みや人々の生活の様子を捉えた写真が、屋外の金網フェンスにいくつも並んでおり、最近撮影されたものから昔に撮影された白黒のものまで、展示されている写真の種類はさまざまです。

東九条 空の下写真展で写真を眺める学生と平竹教授
学生の質問に答えるヤン・ソルさん

学生たちは、普段目にする機会が少ない韓国文化を写真の端々から感じとり、住民が大事にしてきた地域特有の歴史について思いを馳せているようでした。「これすごく綺麗じゃない?」と、気に入った写真を学生同士で見せ合う姿も見られました。

※本来、展示写真のカメラでの撮影、ネットやSNSでの拡散は禁じられています。
取材のため、写真展実行委員の方から特別に許可をいただいて撮影しています。
学生たちも授業終了後に消去する前提で撮影しました。

空の下写真展の情報は公式SNSでご確認ください。

町と写真展の見学を終えた学生たちは、京都市 地域・多文化交流ネットワークセンターに集まりました。4人ずつのグループに分かれ、写真展で特に印象に残った・気に入った写真を紹介し合うワークに取り組みました。学生たちは、自分が選んだ写真について発表を行い、皆で共有しました。ワークには東九条にある地域福祉センター 希望の家の前川 修所長も参加し、ボランティアスタッフの方々と一緒に学生が選んだ写真一つ一つについて解説をしてくださいました。

紹介する写真について話し合う学生たち
発表の準備をする学生たち

地域住民がやぐらを囲んで祭りをする様子の写真を紹介した学生の発表

「ここに来る前にインターネットで調べたとき、東九条は寂しく活気がない町なのかなと思っていたんですが、町を実際に歩いてみると、それは違うと感じました。大人が町を盛り上げて、子どもが文化を引き継いで、皆がいろいろな場所でイベントを行っている。特にこの写真を見て、地域の皆が楽しめるような温かい町なんだと思いました。」

対する前川所長の解説

「この写真に写っているのは夏祭りの様子ですね。現在はコロナ禍で中止されていますが、毎年8月に開催しています。やぐらは地域の人が皆で立てるんです。土木建築の仕事をしている方が多くいたので、やぐらの組み立て技術をよく学ばせてもらったものです。最近ではガーデンパーティをしたり、フィリピンの方々がコンサートを開いてくれたり、楽しむ形態を変えながら開催しています。」

母親と子ども、飼い犬が家の前で触れ合う写真を紹介した学生の発表

「小さな子どもが写っている写真がどれもいいなと思いました。親子愛の温かさや絆が感じられて、この町が、昔から地域の方にとってアットホームな場所なんだと想像できました。」

対するヤン・ソルさんの解説

「インターネットで検索すると、東九条は治安が悪い、怖いイメージがあるなどと、マイナスイメージがあふれているでしょう。どうでしたか。この写真に写っているお母さんは、実は先ほど別の学生が紹介した写真の中でキムチのお店でキムチを漬けていた方なんですよ。当時お店の近くにあった建物の前で撮られた写真のようです。このような韓国料理店が、この地域には現在でもたくさん見られます。」
発表を行う学生たち①
発表を行う学生たち②
ワーク中には「温かい町」という言葉が何度も飛び交っていました。
実際に地域を訪れ、そこに住む方々と交流したことで「東九条は怖いイメージ、寂しい町=町の再開発が必要」と思っていた学生たちにとって予想外の発見があったようです。各グループが発表を終え、フィールドワークは終了しました。

フィールドワーク終了後には、教員および参加学生に話を聞きました。
フィールドワークの企画意図や科目の魅力に関する教員・学生の思いについては【後編(企画意図と科目の魅力を紹介)】をご確認ください!
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