法学会春季講演会「性の法学—ジェンダー法学から考える—」開催

2016.06.28

6月28日、神山ホールにて大阪国際大学准教授の谷口 真由美先生を講師にお迎えし、京都産業大学法学会春季講演会が開催されました。

講演ではまず、日本のパスポートには性別を男女のみのSexと表記しているが、インドではGender(ジェンダー)であることを切り口に、ジェンダー法学について分かりやすく解説されました。

ジェンダーには男・女以外にも多くの種類があり、近年ではLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニングまたはクイア(変態))などと呼ばれています。そのような人々は社会の少数派として、多数派からの心ない眼差しにさらされています。しかし多数派はそのことに鈍感であり、無意識に少数派を傷つけています。ここで少数派の視点に立つのがジェンダー法学であるとされました。

続いて、聴衆の多数を占める法学部の学生を念頭に、憲法、刑法、民法といった具体的な法について、ジェンダーの視点から読み込むことで何が見えてくるかが示されました。男尊女卑が当たり前だった時代に憲法が両性の平等を規定したことの背景や、刑法や民法の規定に女性を男性の私有財産のように扱う考え方が反映していることなどが、これも様々なエピソードを交えながら語られました。

例えば、刑法の強姦罪は女性のみが被害者として想定され、また裁判では被害者側の激しい抵抗が立証されなくては有罪になりません。民法の再婚禁止期間も女性にのみ適用され、またDVなどを背景に、同期間中に生まれた子供が無戸籍となるなど深刻な問題を引き起こしています。

このように重いテーマも扱われましたが、大阪弁のツッコミに溢れた軽妙な語り口で、多彩なエピソードに彩られた講演は聴衆を魅了し続けました。また少数派の視点の意義や多数派の鈍感さを指摘されたことは、あらゆる学問分野に必要な批判的精神を体現しているという意味でも、重要なメッセージとなったと思われます。
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