令和2年度 秋学期 公開授業&ワークショップ 実施報告
1. 法政策基礎リサーチ
1. 実施日時
- 公開授業:令和2年12月23日(水)13:00~16:30 5クラス合同
- ワークショップ:令和2年12月23日(水)16:30~16:40
その後、メール、オンラインの科目担当者打合せ等で意見交換を実施
2. 実施場所
真理館2〜5階各教室(15教室にて分散開催)
3. 科目名
法政策基礎リサーチ(担当教員:久保、芝田、焦、中井、朴)
4. 参加者数
- 公開授業:
学生数 法政策基礎リサーチ受講1回生約150名
SA約30名が参加
教員 9名(オンライン参加を含む) - ワークショップ:教員5名
5. 内容
(1)公開授業について[授業の概要]
- 「法政策基礎リサーチ」は、2015年度に開講された科目で、法政策学科における初年次教育であり、2018年度からは法政策学科の初年次導入科目として選択必修に位置づけを変更されている。2年次生科目の「フィールドリサーチ」に向けての準備的側面を持つ。法政策学科の初年次導入科目としての重要性から、その検証および今後の方向性を検討することも兼ねて今年度も実施することとした。
- この授業は同一シラバスで5クラス開講がなされている。
- 半年間のトレーニング(「アクションリサーチI」久保担当)を積んだSAがチーム(5〜9人)となって、各クラスに入っていることが大きな特徴である。
- 授業内容については担当教員間ですりあわせをしているほか(但し、個別の内容やグループワークの形態などはクラスの規模などによって変えている)、SAも教育内容や教材づくりに積極的に関与して展開している(「アクションリサーチII」久保・芝田・焦・中井・朴担当)。
- 「法政策基礎リサーチ」では、受講生に政策学の基礎を学ばせながら、グループワークによる政策提言を2回もしくは3回行わせることで、企画立案能力や班内で相談してまとめ、発表するコミュニケーション能力を習得させることを目的としている。
- 公開授業の12月23日の合同ポスターセッションでは、今年度は初めて、感染対策の観点から5つのクラスがTeams上に特設されたチームに一堂に会するオンライン形式で、ミニ発表と質疑応答を行った。
(2)ワークショップ[意見交換の内容等]
- オンラインでの開催ははじめてであり、開始当初は混乱する場面があったが、比較的短期間で軌道修正できて、あとは円滑に運営できたのは良かった。
- 担当クラスの異なるSAであっても、個人的な信頼関係があるために情報共有がうまく進んだ。
- オンライン形式のポスターセッションというのは、(対面の)ポスターセッション形式も知らない新入生にはハードルが高かった。
- 質疑応答の時間に余裕があったほうが良かったので、もう少し発表回数を減らしたほうが良いだろう(1回の発表時間を10分よりも15分にするか)。
- 学生からの意見として、質疑応答をしたいができない雰囲気があったというものがあった。ポスターセッションを対面で一度やっておけば、良かったかもしれない。
- 全体としては発表内容のレベルは高かったと思うが、ジャッジシートの形式に沿うように型にはめるのを、どの程度やるべきかの加減が難しい。
- 教員やSAからのフィードバックを受け止めて改善を進めることができるように、合同発表会までに、時間的な余裕があったほうが良かった。
- 取り上げるテーマ・政策課題が難しい場合には、1年次生である受講生が、問題を確定させるのに時間がかかり、発表の出来を左右すると思われる。
- しかし差があったほうが、善し悪し・手応えが受講生たち自身にとってもわかりやすい。
- 最終発表のテーマが抽象的なものについては、教員サイドが具体的かどうかを判定して選別する必要があるのではないかと思う。
- オンラインからのSAは参加しづらく、自分がサポートを担当する班を見ることについては対面SAとの間で差があるという指摘が、SAからあった。
2. 法教育演習Ⅰ
1. 実施日時
- 公開授業:令和2年12月15日(火) 9:00~10:30
- ワークショップ:令和2年12月15日(火) 12:15~13:00
2. 実施場所:
- 真理館405教室
- 真理館203教室
3. 科目名
法教育演習Ⅰ(火曜1限開講クラス、担当教員:中井、岡本)
4. 参加者数
- 公開授業:
学生(受講者)21名(対面19名、オンライン2名、欠席1名)、担当教員2名、AS1名(AB1名欠席)、参観教員3名 - ワークショップ:
教員5名
5. 内容
(1)公開授業について[授業の概要]
- 「法教育演習Ⅰ」は、「プレップセミナー」に配属されるSAを育成することを主な目的とした、演習科目である。そのため、「プレップセミナー」について担当教員との協働の在り方、科目内容と受講生との関わり方などが当該科目の重要なテーマであり、あるべき「プレップセミナー」のかたちを考える課題解決型学習という側面を持つ。法学部におけるユニークな(SA育成、課題解決型の側面)授業であること、SA候補の受講生と法学部教員がより良い授業について考える機会となることが、本科目を公開授業に選定をした理由である。
- 公開授業の回のテーマは、「ファシリテーションとファシリテーションスキル(1):ロールプレイ」であった。具体的には、以下の流れで進行された。①受講生を後述③の各テーマを担当する小グループに分け、ロールプレイが円滑に行えるよう、アイスブレイクも兼ねて、春学期に受講したプレップセミナーのオンラインクラスでSAがどのような役割を果たしていたか、SAに対してどのような印象や感想を持ったかについて意見交換がなされた。②ファシリテーションの意義を理解させると共に、ファシリテーターとしてのSAの活動内容や心得(人権への配慮等)について教示された。③対面・オンラインによるプレップセミナーで起こり得る5つのケースについて、個人、グループで対応方法を検討した後、対応方法の実演がなされた(ロールプレイ)。④最後に、担当したグループに、対応策の意図を聞きながら、全体で振り返りがなされた。
テーマ①授業開始前、学生同士がコミュニケーションを取らず、各自がスマートフォンを見ているというケース
;その日の授業内容を話題として振ってみる。例えば、デイベートの回では、「今日、デイベートをするけど、デイベートってどういうものかわかる?」など。【意図】とりあえず、何か会話をスタートさせようとした。
テーマ②グループワークの授業において、一人だけ、スマートフォンを触り、議論に参加していない学生がおり、グループの雰囲気が良くないように見受けられるケース
:「何を調べたらいいかわかる?」と聞いてみたり、「一緒に考えてみよう」と前向きにさせる言葉を投げかけてみる。【意図】何をしたらいいのかわからず、それゆえに議論に参加していない可能性もあるので、何をしたらいいのかがわかっているか、確かめようとした。役割を貰ったら関わることが出来ると思ったので、グループ内でスマホを触っている学生に役割を与えさせようとした。
テーマ③学生が「簡単に単位を取れる科目を教えてほしい」と言ってきたケース
:「自分は興味のある授業を受けていたから、カモ単はわからないなあ」、「課題をしっかりと出していたら難しいことはない」等、経験談を話したり、「楽勝科目にこだわらずに興味のある科目を取っていったら良い」とアドバイスをする。【意図】質問に答えないと、せっかく築いた関係性が壊れてしまう可能性があるので、希望を持たせる、ポジティブ要素を伝えたうえで、「楽単」は言わないようにした。
テーマ④グループワークで無言のグループがあるケース
:どこまで進んだのか、状況を把握させるような言葉や、何をしたらいいのかわかっているのかを確認できるような言葉を投げ掛ける。もっと踏み込んで、「誰がどこを担当するのか決めよう」と進行を促すような言葉を掛ける。【意図】何をするかが分かっているのか、何か困っているのか、単に話せないのかを確認した。SA抜きで話が出来るまでは支えようと思った。
テーマ⑤Teamsのビデオ会議で、皆がカメラをオフにし、表情が見えず、意思疎通が取りにくいケース
:積極的に「聞こえますか?」「アイスブレイクの中身がわかったか、返事をしてほしいです」などと声掛けをする。カメラオンが無理であれば、チャット機能(goodボタン)を活用する。「みんなの顔が見たいです」などとカメラオンを促す言葉を投げかける。【意図】チャット機能は活用できると思ったので、カメラが無理であってもgoodボタンを活用しようと考えた。前の授業から顔出しを促進することも考えた。
(2)ワークショップについて[意見交換の内容等]
まず担当教員より、今回の授業を公開授業として選定した理由、授業内容の意図について説明があった。また、今年度は、ロールプレイのテーマとして、春学期のオンラインによるプレップセミナーで実際に教員やSAが遭遇した状況をモチーフとした新たなテーマ、テーマ⑤を追加した点が紹介された。以上を踏まえた上で、参加教員間で意見交換がなされた。主要な点は以下の通りである。
- SAに対する印象や感想について、「話しやすい雰囲気を作ってくれた」「頭が良さそう、先生とのコミュニケーションが上手かった」「関わりやすそうな印象があった」との好意的な感想を述べる学生が多かった。また、「少し怖い印象があった、もう少しフレンドリーにアイスブレイクしてほしい」など、SAによるアイスブレイクの要望が高いことがわかった。
SAに対する学生自身の抱く感想や印象を聞けたことにより、学生が望むSA像、SAに対するニーズがわかり、今後の教員とSAとの協働のしかた、SAとの接し方の参考になった。
(ちなみに、昨年度の「学部による公開授業&ワークショップ」実施報告書には、「入学直後の1年次生は学習に対して概して受け身であるが、そこからSAになろうとするというのは『能動的になる』ということであるから、ものの見方や関わり方を180度変えないといけないことを意味する。本科目の受講により、それまでの『プレップセミナー』受講者として『SAにいろいろとやってもらってうれしい』という気持ちから、『SAとしていろいろとやらなければならない』という意識への変化を促すことになるが、そのためには教員としてはなるべく学生からの意見を拾う姿勢を取る必要がある。」と記載されている。今回の公開授業の内容は、学生の意見を参加教員が直接見聞きすることができるものであり、意義のあるものであったといえよう。) - ロールプレイのテーマはいずれもプレップセミナーで起こり得るケース、実際に起こってきたケースであり、学生がどのように解決するのかが見られ、興味深かった。
- 法教育演習Ⅰのカリキュラムとして、今回のロールプレイは15回の授業のどこに配置するのが良いか。これまでは、観察&フィードバックの方法を学んだ後にロールプレイを行ってきたが、今回は、公開授業の日程により、前後が逆となった。その結果、ロールプレイに対する印象が違ったように思う。観察方法やフィードバック方法を学んでいない、いわゆる素の状況で対策方法を考え、ロールプレイを行ったことから、学生のこれまでの経験値から考え出した対策方法であり、その意味で新鮮であった。いずれの順番が良いか、今後の検討課題といえよう。
3.まとめ
[活動の効果を高めるための今後の方策など]
- 今年度は、公開授業の対象科目は例年通りの選定であったが、コロナ禍にあって、いずれの科目においても対面とオンラインを併用し、新しい試みがなされていた。今回の公開授業およびその後のワークショップでの議論を踏まえて、次年度の公開授業の内容の充実につなげたい。
- 教員間での情報共有は重要であるので、公開授業やワークショップ等には多くの教員に来ていただきたい。今年度はTeamsのビデオ会議を活用したことにより、オンラインでの参観も可能であったが、授業担当者以外の教員の参加は例年に比べて増加したとは言えなかった。教授会等で開催日時を告知し参加を促すとともに、学部内の各種会議などの機会をとらえて、ワークショップでの議論を紹介するなどの形で、少しずつでも授業改善の試みを情報共有し、意見交換を重ねることが必要であろう。