令和5年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

今年度より「学習成果実感調査システム」が更新され、設問内容を簡潔な全学共通設問のみとし、回答の負担軽減を図るとともに、実施時期についても最終授業から定期試験期間終了までとすることで、回答率の向上を期待した。調査対象科目は全科目であるが、春学期は、そのうち1年次配当の「プレップセミナー」およびその他の「AL科目」を重点科目に指定し、秋学期は講義科目を重点科目として調査を行った。
・実施率および回答率について
今年度春学期の実施率は法学部全体で82.3%と昨年度よりわずかに減少した。実施はしたが、回答者が0であった場合は未実施となることも要因と考えられる。なお「プレップセミナー」では100%の実施率であった。秋学期は法学部全体で87.6%、「講義科目」では85.0%であった。秋学期は、全学的に回答率が低くなる傾向にあるため、調査開始前に繰り返しアナウンスするなど、回答率向上を図ったため実施率は向上した。
アセスメント・プランの一環としての本調査の意義が各教員には浸透していると評価できるものの、学生にとっての回答インセンティブが課題である。
春学期の回答率は、全体では前回の28.2%から28.4%と微増の結果であった。設問項目や実施時期の変更と回答率の相関関係は今回の結果からは明確には読み取れない。「プレップセミナー」では毎年回答率が高く、今年度は64.0%と昨年度の56.7%をさらに上回った。全体でも30%を超えるくらいまでは高めていく必要がある。
秋学期の回答率は、全体では21.7%で2022年度よりは向上したが、春学期より低下する傾向は続いている。昨年度との比較で向上していることから、設問項目の見直しが一定の成果を現しているとも思えるが、継続的に観察する必要がある。
・調査結果について
調査を実施した全ての科目において、「授業の到達目標にどの程度到達したと感じているか」との設問に対して、春学期は、「達成できた(80%以上)」が32%、「概ね達成できた(60%以上80%未満)」が59%であった。秋学期は、「達成できた(80%以上)」が40%、「概ね達成できた(60%以上80%未満)」が54%であった。いずれの学期も60%以上の到達度は90%以上であった。学生の自己評価は実際の成績評価よりも高めであるようにも思われるが、回答率を考えると、比較的出席率や真面目に授業に取り組んでいる学生が多く回答していることの表れかも知れない。
科目の満足度については、春学期では、(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、「プレップセミナー」および(プレップセミナーを除く)「AL科目」の両方において、80%を超えており、法学部全体でも70%を超えている。秋学期では、(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、法学部全体で83%、「講義科目」のみでは81%と高水準を維持している。
「この科目を通じて大学で学ぶ意欲が高まったか」との設問については、(強くそう思う+そう思う)と回答した者は両学期とも70~80%で昨年度までの類似の設問と大きな変化は見られず高い水準が維持できている。
基本的に対面で実施する「プレップセミナー」や「AL科目」で学びの意欲、到達目標への達成感を感じる者が多いことは、法学部で近年おこなってきたActive Learning重視のカリキュラム改革が目的としてきた主体的な学習態度の形成が定着しつつあると評価できる。
1回あたりの準備学習が1時間を超えていると回答した者は、今年度は「AL科目」では昨年度並みの64%であったものの、全体で51%(秋学期は55%)、「プレップセミナー」でも57%と昨年度よりわずかに減少した。シラバスで準備学習・事後学習を指示しているし、課題も出しているはずであるが、授業以外での学習時間が減少傾向にある。明確な原因は明らかではないが、今後も継続的に観測していく必要があろう。学習成果の可視化や単位の実質化を見据えて、授業時間以外の学習時間を適切に確保し、各科目の到達目標への到達度を学習者が実感できるよう適切な事前・事後課題を与えることが今後も引き続きFDの課題である。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業とワークショップ

別紙「学部による公開授業&ワークショップ」実施報告2023」を参照されたい。

(2)その他研修会等

スタッフセミナー
実施日時:2024年2月22日教授会終了後

  • 場所:サギタリウス館4階S415教室
  • 実施内容:進路・就職支援センターから担当者を招き、4年次生の就職状況の分析を中心に報告を受けるとともに、授業改善に向けた示唆を得るための議論を行うとともに、「KSUドリルSPI」の活用状況を踏まえて、学生への一層の周知の必要性を共通認識とした。
  • 参加人数:26名(内職員2名)

3. 総括

(1)1.と2.において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

AL科目だけでなく、講義科目のほとんどが対面授業に戻ったが、講義を録画し、復習用にオンデマンド配信をするなど、オンラインと対面それぞれの利点を活かす工夫が多くの授業で行われたことが、学習成果実感調査における「学びの面白さ」等学生の満足度に現れた。
本学部では、初年次・少人数科目である「プレップセミナー」をはじめとしたAL科目を充実させることを通じて、学生が主体的な学習のしかたを身につけ、より主体的・意欲的に法学部の科目に取り組むことができるようにすることを目指してきた。学生をSAとして育成し、そのSAが下級生向け授業に参画する授業形態についても、主体的な学習に向けた好循環をもたらしているものと評価できる。
学習成果実感調査等においても、回答率は低かったものの、回答があった限りでは、学生の主体的な学習態度が定着してきていると評価できる。また、スタッフセミナーにおいては、公務員を志す学生のサポートを充実させた成果が出ていることが確認できるとともに、法学部における各科目の学習内容を積み上げていくことが公務員を目指す学生にとっても有益であることが、一定数の合格者の定着という成果として確認できた。引き続き、自ら主体的に学習する態度の形成に重点を置いて法学部での教育を充実させていく。

(2)1.と2.において確認された改善すべき点

将来に就く職業(キャリア)との関係での現在の学習内容の主体的選択などについて、学生の間に能力・関心のギャップがあり、多様な学生にどのように効果的に各種情報を届けていくのか、個々の学生のニーズにマッチした情報提供は4年次演習履修者が少ないこともあり、困難であった。4年次演習の履修者を増やす方策を検討する必要がある。それと同時に、比較的多くの学生が履修する3年次演習の段階で学生に主体的学修を意識させる必要がある。インターンシップ等自ら積極的に動く学生と、自ら情報収集をしない、できない学生との二極化が見られる。後者の学生をできるだけ早く把握し、進路・就職支援センターなどにつなぐこと、さらに、通常の授業を通じて社会問題への関心を持たせる工夫も必要である。
「学習成果実感調査」の回答率が一昨年度よりは回復したものの、低水準にとどまっている。意欲的に学習している学生が多く回答していると思われるので、到達目標の達成度は高い水準を示しているものの、引き続き回答率の向上に努めるとともに、結果の分析を今後のカリキュラム改革につなげたい。

4. 次年度に向けての取り組み

2018年度にスタートしたAL科目重点化の方向を進めてコース制を採用した新カリキュラムにより、学生の科目選択の選択肢が増え、将来の進路志望に関連づけた系統的履修が可能になった。カリキュラム改革の成果は、ここ数年の留年率の低下、学習成果実感調査における満足度などからは、着実に現れていると思われる。次年度も、引き続き、AL科目についてその教育効果を継続的に把握していくとともに、コース制が卒業生の進路決定にどう影響しているか等を注視し、新カリキュラムの成果と課題を確認する。
さらに、次の段階のカリキュラム改革に向けての議論をスタートしているところであり、これまでの成果を踏まえ、継続して取り組みつつ、改善点を明確にする必要がある。
具体的には、春学期には「プレップセミナー」を中心に、秋学期には(主体的な学習ができるようになっているかについて知るために)「講義科目」を中心に、調査を行って基礎的なデータの収集をしていく。また、上記課題などについて、引き続き、組織的な情報共有と意見交換の機会を設けるべく検討していきたい。
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