令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

春学期調査では、「この科目で主体的に学習した」(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、「プレップセミナー」および(プレップセミナーを除く)「AL科目」の両方において、出席率にかかわらず、いずれもほぼ80%である。また、「その他」の科目(講義科目)においても、主体的に学習した(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、70%を超えた。オンライン授業となったことによる影響も考えられるが、法学部で近年おこなってきたActive Learning重視のカリキュラム改革は主体的な学習態度の形成を促すことを目的としてきたが、そのような学習態度が定着しつつあると評価できるのではないか。
ただし、オンライン授業となったこと、調査もオンラインでのアンケートになったこともあり、例年に比べると実施率、回答率が低下している。
「プレップセミナー」において、「学びの面白さを感じた」「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」「総合的に満足している」「法学部の学びについてイメージをもつことができた」「自分の将来について考える機会をもつことができた」の各項目について、「(強く)そう思う」とする回答者の割合は、昨年度に比べわずかではあるが増加した。初年次教育(導入教育)として主体的な学習態度の形成を促すこの科目の役割が定着してきたと評価できる。また、オンライン授業となり、反転授業型の授業形式の回が多くなったことから、1回あたりの準備学習が1時間を超えていると回答した者が、70%を以上となった。次年度は対面授業に戻るが、反転授業型も数回取り入れることで、この傾向が続くことを期待したい。今後も継続的に観測していく必要があろう。
「AL科目」においては、昨年度の調査において「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」の項目で「(強く)そう思う」とする回答者の割合が80%を超え例年にくらべて増加している。引き続き、主体的に学習することができるようにAL科目の内容を検討していくべきであろう。
秋学期調査では「講義科目」を中心に調査を行った。秋学期も受講者数の多い講義科目ではオンライン授業が続き、オンデマンド型授業では、調査への回答を促進することが困難であったと思われる。そのため、実施率は55.56%、回答率では17.5%と春学期に比べても減少した。実施率については、moodleにリンクを掲示しても受講生が一人も回答しなかった科目もあったため実施にカウントされなかった科目も多かったのではないかと推察される。
ただし、回答してくれた受講生に関しては、シラバスを確認したという回答が98%、1回の授業あたりの準備学習等に1時間以上費やしたという回答が60%以上であり、「学びの面白さを感じた」という項目について「強くそう思う」+「そう思う」と回答した受講生が80%弱に、出席率80%以上では80%にそれぞれ昨年度より大幅に増加した。主体的に学習したか、自らの成長を実感することができたかといった項目の数値は、いずれも面白さを感じたという項目より5~10ポイント低いものの、例年に比べると学びの面白さが主体的な学習や成長の実感にも結びついているように見受けられる。もっとも、上述のように回答率が低く、回答した学生は、主体的に学習する意欲の高い学生が多かったと思われるため、学生の全体的な動向であるとは言いきれないのも事実である。今後も継続的に観測していきたい。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業について

(2)スタッフセミナーについて

(3)法学部独自のFD研修について(FD委員会主催)

① 2020年4月15日「moodle自主トレ」(対面とZoomによるオンライン併用)
春学期からのオンライン授業に向けて、これまであまりmoodleを使っていない教員も少なくなかったことから、moodleを活用したオンライン授業に対応するため以下の内容で研修を行った。

  1. チャット機能
  2. 出欠管理機能
  3. レジュメや資料の掲載
  4. 課題・レポート提出システム(ファイルのアップロードによる提出)
  5. 各種小テストの設定方法
  6. 小テストの方式は、多肢選択問題、組み合わせ問題、空欄補充問題
  7. 投票機能
  8. アンケート・フィードバック機能:教員・学生間の対話シート

② 2020年9月23日「真理館教室でのオンライン授業設備のお試し会」
秋学期の対面授業開始に際して、真理館各教室に設置されたWebカメラ等の利用実習を行った。特に板書をオンライン上の受講生に大きく見せる方法について検証した。当時はTeamsにスポットライト機能が実装されていなかったため、情報センター提供の方法を使って検証した。

③ 2021年2月22日「対面授業の録画をテーマとするFD研修」
2021年度より授業の録画とオンデマンド配信が原則化されることを受け、Teamsの授業を録画し、moodleでリンクを掲示する方法の解説を兼ねて、実際に複数の講義方法を試しながら録画し、オンライン授業における対面・オンライン・オンデマンドの受講生の見え方の違いの検証等を行った。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

コロナ禍におけるオンライン授業という緊急事態の中で、組織的な情報共有にも重点をおいて活動をおこなった。本学部では、初年次・少人数科目である「プレップセミナー」をはじめとしたAL科目を充実させることを通じて、学生が主体的な学習のしかたを身につけ、より主体的・意欲的に法学部の科目に取り組むことができるようにすることを目指してきた。学生をSAとして育成し、そのSAが下級生向け授業に参画する授業形態についても、主体的な学習に向けた好循環をもたらしているものと評価できる。プレップセミナーの運営にFD委員長も加わり、SAとのランチミーティングも継続して行うなどこれらの点について組織的な情報共有を多少とも進めることができたと考えている。特に今学期はSAによる自発的な新入生のためのSAセミナーが実施されるなど、教員と学生がこれまで以上に協働してオンライン授業を成功させることができたと言える。
学習成果実感調査等においても、回答率は低かったものの、回答があった限りでは、学生の主体的な学習態度が定着してきていると評価できる。また、スタッフセミナーにおいては、法学部における各科目の学習内容を積み上げていくことが公務員を目指す学生にとっても有益であることが、合格者の大幅増という成果として確認できた。引き続き、自ら主体的に学習する態度の形成に重点を置いて法学部での教育を充実させていく。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

将来に就く職業(キャリア)との関係での現在の学習内容の主体的選択などについて、学生の間に能力・関心のギャップがあり、多様な学生にどのように効果的に各種情報を届けていくのか、特にオンライン授業となり教員・学生のコミュニケーションがとりづらい状況において、個々の学生のニーズにマッチした情報提供は困難であった。自ら情報収集をしない、できない学生をできるだけ早く把握し、進路・就職支援センターなどにつなぐこと、さらに、通常の授業を通じて社会問題への関心を持たせる工夫も必要である。
また「プレップセミナー」などの初年次教育において多様な学生が共通して修得すべき基礎的能力はどのようなものであるのかが、検討すべき課題であることが確認された。

4. 次年度に向けての取り組み

2018年度にスタートしたAL科目重点化の方向を進めてコース制を採用した新カリキュラムが次年度に完成する。学生の科目選択の選択肢も増えて、新カリキュラムで学んだ学生が卒業することとなる。次年度は、引き続き、AL科目についてその教育効果を継続的に把握していくとともに、卒業生の進路を注視し、新カリキュラムの成果と課題を確認する。
具体的には、春学期には「プレップセミナー」を中心に、秋学期には(主体的な学習ができるようになっているかについて知るために)「講義科目」を中心に、調査を行って基礎的なデータの収集をしていく。また、上記課題などについて、引き続き、組織的な情報共有と意見交換の機会を設けるべく検討していきたい。
なお、今年度導入した貸出ノートパソコンについて、春学期はオンライン授業となったために、利用できなかった。秋学期にはいくつかの授業において活用されたが、本格的な活用は次年度になる。Webカメラも使えるようになり、授業での活用の幅も広がることが期待できる。また、全学的なBYOD化にともない、その活用の実態を継続して調査するとともに、今後の活用のあり方を改めて検討したい。
PAGE TOP