2020.11.09

特集

電車で見かける「京都産業大学のポスター」設定に込められた深くて熱いメッセージを読み解く!

ポスターSTORY #5「めざすさきへと」のビジュアル

京都産業大学が電車やバスなどの交通公共機関に出しているポスターを見たことはありますか? 淡い色合いで美しくキャンパス等が描かれたイラストとともに、打ち出された「その一歩は、小さくていい。」「夢を、夢で終わらせない。」「今、心が動き出す。」といった心に残るメッセージとともに、小説の一節のようなストーリー、そして「京都産業大学」のロゴマーク。大学に電車やバスで通うとき、あるいは外出したときや実家に帰るときに目にした人がいるかもしれません。
この一連のポスターは、京都産業大学のオリジナルストーリー「君、むすび花咲く」を連載しているものです。
このポスターを担当する広報部職員・大塚貴志(おおつか たかし)さんと、イラストレーター浦上和久(うらがみ かずひさ)さんに話を聞いてみると、実は大学から伝えたい熱い思いが込められていることがわかりました。
※この取材は9月~10月にかけてオンラインで行われました。

近畿圏に加え、北陸・中国・四国地方の交通機関に掲出する理由とは?

地下鉄四条駅のビジョンに掲出されている様子

「このポスターを、見たことがない」という学生もいることでしょう。では、いったいどの電車やバスに掲出されているのでしょうか?
大塚さんによると、阪急電鉄/京阪電車/JR西日本(北陸・岡山・広島エリア)/京都バス/北陸鉄道バス/ えちぜん鉄道(福井)/福井電鉄/広島電鉄/JR四国/高松琴平電鉄(香川)/徳島バスに掲出されているそうです。(阪急電鉄、京阪電車は月に1週間のみ)
掲出されている路線はいったい、どんな基準で選んでいるのでしょう?
「そもそもなぜポスターを掲出するかというと、高校生などへ本学の知名度を上げるためです。知名度とは『存在を知ってもらう』ということ。つまり、ターゲットは、京都産業大学をすでに知っている人ではなく、知らない人に、知ってもらうためのポスターなんです。だから、知名度を上げたい地域に、重点を置いてポスターを掲出しています」と大塚さん。
さて、あらためて先ほどの掲出地域を見ると、近畿圏だけではなく、北陸・中国・四国地方が目立ちます。なぜかというと、毎年それらのエリアからの受験生が多いから。大学が公表している2020年度の在籍者数(出身高校都道府県別)を見ると、1位から5位は京都、大阪、兵庫、滋賀、奈良の近畿圏ですが、これは本学がある地域ということで想定内でしょう。注目の6位以降は岡山、香川、和歌山、石川、広島が続きます。ポスターを掲出している地域と在学生の出身地域が見事に合致しています。
メインターゲットは京都産業大学を知らない高校生で、本学を入学する高校生が多い地域に掲出しているので、私たち京都産業大学に通う学生は、このポスターを見たことがなくて当然なのかもしれません。



2018年度以降のポスター、キーワードは「共感」

2017年8月ポスターのビジュアル
2018年7月ポスターのビジュアル

皆さんが高校生のときに、当時の京都産業大学のポスターを見たことがある人はそれぞれ印象深いビジュアルがあるのではないでしょうか。大塚さんによれば、ポスターは約2、3年のサイクルでリニューアルしているそうです。2017年度以前は、学生の活動や教員の研究を紹介するポスターを展開していました。また、2018~2019年までの2年間は、詩人である、きむさんの詩と写真が印象的でした。
「2018年度以降大切にしてきたのは『共感』です。その考え方は2020年度の今も踏襲しています。『共感』を別の言葉でいうと、高校生に他人事ではなく『自分ごと』として捉えてもらえるかですね」と大塚さん。
なぜ、「共感」を大切にしているのでしょうか? 
「2017年度以前のポスターは、本学の学生や教員が『なににチャレンジし、取り組んでいるのか』といった大学の教育や研究の活動を伝える内容が多かったんです。でも、SNSが普及している中で高校生への知名度を高めようと考えたときに本当にそれでいいのか?と考えたんです。ポスターはまず知ってもらう、知名度を上げるのが目的です。近年の広告は情報を載せて伝えるだけではなく、現在の本学のポスターのように受け手側の共感を得ることが重要になっています。『なんかこのポスターいいよね』と共感を得る、私たちもその手法でいこうと考えたわけです」
大塚さんはこのポスターに懸ける熱い思いをこう語ります。
「本学では近年、写真を使ったポスターがほとんどでした。イラストを採用したのは、ひとつの挑戦なんです。
本学のポスターは、認知してもらう手前の『気づいてもらう』ことが目的です。もし高校生がこのポスターを見て、『何かいい話が載っているな。何のポスター? 京都産業大学? 調べてみようかな』と、志望校の候補のひとつに挙げてもらえたら嬉しいです。自分ごとに置き換えてもらって、『頑張ろう』と思ってもらえるようなメッセージを伝えていけたらよいな、と思っています」

イラストレーター・浦上和久さんが話す「もしかしたら自分かもしれない存在」

ポスター STORY #1のビジュアル
ポスター STORY #2のビジュアル

そんな熱い思いを受けて、今年度のポスターのイラストを手掛けているイラストレーターの浦上和久さんにもお話を伺いました。

—今回の「君、むすび花咲く」の大切にしたこと、制作にあたって苦労したことはありますか?

浦上さん「ターゲットである、高校生の方には当事者として見てもらいたかったので自身を投影できるような等身大のキャラクターを意識しました。特定のだれかというよりも、もしかしたら自分かもしれない存在として見ていただけると嬉しいです。
苦労した点を挙げるとすると、イラストの上にテキストが大きく載るので、絵としてのクオリティを保ちつつ、文字が読める状態をキープするのはむずかしくもあります。ただ、そうした制限があってこそイラストは意味を成すので、とてもやりがいもあります。」

イラストに出てくるキャラクターにも相当なこだわりを見せる浦上さん。しかもそれは浦上さんだけでなく大学側も同じようです。大塚さんによると「実はポスターに出てくる3人のキャラクターには名前と設定があります。それぞれの主人公は、本学と関連するワードとからめて名付けました。キャラクター設定の中でもこだわった部分の一つです」とのこと。
ここで主人公の名前の由来に込められた、思いを解き明かしていきます。

高校3年生の岩倉結衣(いわくら ゆい)

「STORY #1 きぼうのみち」に登場。鮮やかな赤いリュックにポニーテールの後姿が印象的です。「小さな町の公立高校に通う3年生。困っている人を見ると迷わず助ける優しい性格の持ち主。将来の夢は漠然としていて何も決まっていないが、自分が夢中になれる何かを探している」との設定です。
この「岩倉」は北区の地名の「岩倉」から、「結衣」は、大学のスローガンである「むすんで、うみだす。」の「むすぶ」から名付けられたそうです。

高校2年生の星野幸生(ほしの こうせい)

「STORY #2 みらいはひろがる」で、今通っている高校で空を見上げている横顔が描かれています。「私立高校に通う2年生。サッカー部に所属。毎日部活と勉強の両立で忙しくしている。幼い頃から宇宙や天文の世界に憧れていて、今でも星座の名前はたくさん覚えている」との設定です。
苗字の「星野」は、京都産業大学のロゴマークにある射手座(サギタリウス)に由来します。名前の「幸生」には「むすんで、うみだす。」の「うみだす」にちなんで、幸せを生みだしてほしいという思いが込められています。

大学2年生の北山雄希(きたやま ゆうき)

「STORY #3 のびしろはむげん」でSTORY #1で登場した岩倉結衣と再会した様子が描かれています。「京都の私立大学2年次生。結衣と同じ地元出身で、今は京都市内に一人暮らし。大学生活を満喫しながら、将来は地元に貢献できることがしたいと考えている。趣味はランニング」との設定です。
大学からほど近い地名の「北山」に、学歌の中から「天翔ける~雄飛し行かむ」の「雄飛」からアレンジして「雄希」と名付けられました。

こういったこまやかな設定を受けて、浦上さんの美しいイラストは形になりました。

在学生は「初心にかえるきっかけ」にしよう。

ポスター STORY #3のビジュアル
ポスター STORY #4のビジュアル

浦上さんは、京都産業大学の学生に向けてこんなコメントを寄せてくれています。

浦上さん「大学生の期間というのは、未来に種を蒔く時期だと思っています。将来、どの種が芽吹いて育つかわからないけれど、今は自分の可能性を蓄える時期として捉えてもらえたらと思います。いろいろな不安があるかもしれませんが、ぜひたくさんの種を蒔いてください。」

今、京都産業大学に通う学生に、どのようにこのポスターを受けて止めてほしいのか。大塚さんはこう話します。
「ポスターを見た在学生も『そういえば高校生の頃、自分も将来にこんな希望や不安をもっていたな』とか、大学生の主人公もいるので今の自分を投影してもらえればと思います。様々な立場から共感の広がりがあったら嬉しいです。」


今回の取材を経て、私も高校生の頃に電車のなかで京都産業大学のポスターを目にしたことを思い出しました。STORY #4で、高校2年生の星野くんが初めて参加したオープンキャンパスで、広大な敷地と大学生の活気に圧倒されたのも、高校生の頃の私と一緒で懐かしく感じました。
今大学に通う私たちにとって「キャンパスで過ごす大学生活」という、高校生の頃に憧れていた気持ちを思い出させてくれる、そんな広告でもあるのではないでしょうか。少しずつ大学の中でも勉強できる環境になってきた今だからこそ、思い出したい気持ちでもあります。
この「君、むすび花咲く」シリーズは2021年3月まで、毎月更新されていきます。3人の主人公たちがどのような経験をして、成長するのかが楽しみです。本学のWEBサイトに特設ページがあり、そこではポスターに掲載されている以外のストーリーも読むことができます。大塚さんによると、それぞれのストーリーのタイトルにも秘密が隠されているといいます。色が変わっている頭文字を全て繋げると…?在学生の皆さんもチェックしてみてくださいね。

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