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- キャンパスマガジン「サギタリウス」
- 2012 Dec. Vol.58
皆さんは、自分の遺伝子を自由自在に操り、環境に合わせて姿形を変えることができる植物があることを知っていますか?実は私が研究している「ニューベキア 1」という植物こそ、その特異な能力を持った植物なのです。温かい陸地では楕円形のほうれん草のような形の葉に、また水中では、まるで針のように細く尖った葉を形成。生息する場所に合わせて、別の植物かと思うほど形をダイナミックに変えていきます。調べてみると「条件に合わせて使う遺伝子を切り替えている」ということが分かりました。では、ニューベキアはどのようにして「使う遺伝子の切り替え」を行っているのか?その仕組みを明らかにするのが私の研究目標です。
1 解説:北米原産の半水生植物。
右の写真のように、温度や水の量、光の強さや波長に合わせて、多様に葉の形を変える能力を持つ。
そもそも私の専門である植物環境応答学とは、植物の適応能力について遺伝子という切り口から解明を試みるもの。自力で移動できない植物は「光の強い場所では葉を厚くする」というように、さまざまな環境に適応する能力を進化させてきたことは知られていますが、個々の植物が形を変える仕組みについては依然として多くの謎が残されています。私が以前取り組んだ「ダーウィンが発見した2種のトマト」の研究を例に、少し詳しく説明しましょう。
ダーウィンがガラパゴス諸島で発見した多様な動植物の中に「内陸部のトマト」と「海岸部のトマト」があります。海岸部に生息するトマトは内陸部のものより葉の切れ込みが深く尖っており、進化によって塩分の多い土壌に適した葉の形を獲得したとされています。しかし、具体的にその違いの原因となっている遺伝子は誰も特定できずにいました。私はここに着目してアメリカで研究を開始。ダーウィンの『種の起源』発表からちょうど150年後の2009年 2 に合わせて、原因遺伝子を特定して論文を発表するという実績を残すことができました。遺伝子解析の技術が進歩した現在でも、私が研究したこのトマトのように生命の進化の謎はまだたくさん残っているのです。そんな中、他の植物が長い年月をかけ「進化」するのに等しい変化をわずか数日で実現するニューベキアは、進化の謎を解く鍵になり得ると私は考えています。
ダーウィンがガラパゴス諸島で発見した多様な動植物の中に「内陸部のトマト」と「海岸部のトマト」があります。海岸部に生息するトマトは内陸部のものより葉の切れ込みが深く尖っており、進化によって塩分の多い土壌に適した葉の形を獲得したとされています。しかし、具体的にその違いの原因となっている遺伝子は誰も特定できずにいました。私はここに着目してアメリカで研究を開始。ダーウィンの『種の起源』発表からちょうど150年後の2009年 2 に合わせて、原因遺伝子を特定して論文を発表するという実績を残すことができました。遺伝子解析の技術が進歩した現在でも、私が研究したこのトマトのように生命の進化の謎はまだたくさん残っているのです。そんな中、他の植物が長い年月をかけ「進化」するのに等しい変化をわずか数日で実現するニューベキアは、進化の謎を解く鍵になり得ると私は考えています。
2 解説:2009年はダーウィン生誕から200年の節目にも当たり、「ダーウィンイヤー」と呼ばれる記念年となった。
トマトの研究での「異なる形を生む遺伝子の特定」の研究からさらに進み、ニューベキア研究では「同じ遺伝子なのに違う形になる」という新たな生命の謎に挑戦。先人がいない研究のため、答えの存在すらも定かではなく、全てが手探りです。壁に突き当たることばかりですが、葉の形の変化に重要な働きをしている植物ホルモンを明らかにするなど徐々に見通しは立ってきました。また最近は、暗所で紫外線を当てると光る遺伝子を移植した「光るニューベキア」の作成にも成功。遺伝子の機能解析の効率が上がると期待しています。ニューベキアの適応能力について解き明かし、他の植物へその能力を移植できれば、植物の環境適応力の飛躍的な向上にもつながるはず。緑化や食料増産 3 の分野においても大きな希望となることでしょう。
私の研究室ではもちろん、ニューベキア以外の植物も研究対象にしています。講義では1・2年次で高校の復習を兼ねてしっかり基礎を身に付け、3年次には最先端の学術論文を紐解いていく、というように段階的に学ぶので、真剣に取り組めばいずれ高度な研究に踏み込むこともできるでしょう。まずは、身近な植物について「不思議」と感じる気持ちに従って学び始めてみてください。私自身もそうでしたが、それが、ダーウィンでさえ解けなかった「生命の謎」に挑む出発点になるかもしれません。
私の研究室ではもちろん、ニューベキア以外の植物も研究対象にしています。講義では1・2年次で高校の復習を兼ねてしっかり基礎を身に付け、3年次には最先端の学術論文を紐解いていく、というように段階的に学ぶので、真剣に取り組めばいずれ高度な研究に踏み込むこともできるでしょう。まずは、身近な植物について「不思議」と感じる気持ちに従って学び始めてみてください。私自身もそうでしたが、それが、ダーウィンでさえ解けなかった「生命の謎」に挑む出発点になるかもしれません。
3 解説:高い再生能力も併せ持つニューベキア。その能力が移植できれば「葉の切れ端から増えるイネ」が作れる可能性も。
バードウォッチングが昔からの趣味ですね。以前はよく遠出したものですが、最近は忙しいので研究室か鴨川周辺で見ています。研究室からは、カワセミなどの珍しい鳥も意外と多く見られるんですよ。学生が生物に親しめるよう、フィールドワークで「鴨川にいる10種類の鳥を探してスケッチする」という課題を出したりもします。