京都産業大学キャンパスマガジン サギタリウス New!! 2012 Apr vol.55
Voice of Sagittarius  京都産業大学の先生を徹底解剖!  理学部 数理科学科 渡辺 達也 准教授  博士(理学)。変分構造を持つさまざまな微分方程式の中で、非線形シュレディンガー方程式の定常問題として現れる非線形楕円型偏微分方程式の解析を中心に研究。
Voice1 数学の研究者に憧れ、猛勉強していた中学・高校時代。
私が数学に関心を持ったのは、中学時代に数学者の矢野健太郎氏 の本を読んだのがきっかけです。古代ギリシャ時代にまでさかのぼり、数々の高名な数学者のエピソードをまとめた内容だったと記憶していますが、この本で数学にがむしゃらに取り組む研究者の姿勢に憧れまして(笑)、数学の勉強を頑張るようになりました。受験勉強のための学習でもあったのですが、まったく苦痛を感じることはなかったですね。問題を解くのが好きで楽しくて、先生から与えられる問題に必死になって取り組んでいました。気が付けば深夜、ということもよくありました。
中学・高校時代はそんなふうに数学に没頭し、苦労をすることもなく過ごしましたが、大学に入ると一変。あまりにも高度な内容に付いて行けず、人生初の挫折を味わいました。嫌になって、ただ卒業することだけを考えて過ごす毎日でしたが、ある日突然、目が覚めるように数学の面白さに再び出会ったのです。
解説:日本の数学者で数学教育、一般への啓蒙についても精力的に活動。著作も多数残されている。
Voice2 3年次になって、知識がすべてつながり、ひらめきの時が!
3年次に選択したゼミでの出来事でした。ゼミで学んだ変分法という手法を用いると、グラフを描くことで面白いように微分方程式が解ける。これまで学んできた微積分の知識が全てつながり、ひらめきを感じた瞬間でした。このときから私の数学への思いが新たになり、今につながっていくのです。
現在私は、シュレディンガー方程式 という、微分方程式を中心に研究しています。物理学者が法則や原理を組み合わせて打ち立てた「式」を、数学的アプローチで検証し、論理的に突き詰めていくというものです。実験だけではその「式」の正当性が証明されたとは言えないというのが数学者としての考え。数学で厳密さを高め、「式」の精度を上げていくことが、私の研究の使命です。
解説:1926年に、エルヴィン・シュレーディンガーが提案した量子力学の一形式である波動力学の基礎方程式。
Voice3 数学ってロールプレイングゲームに似ている。
こうした学問が社会とどう関わっているのか、と疑問に思う人が多いかもしれません。基本となる微分方程式は経済学でも必須であり、人口推移予測や放射性物質の半減期の割り出し、ウィルスの伝染予想などにも応用されています。しかし私の研究内容は、ある程度経験を積まないと「面白い」と実感できないところがあり、ひたすら地道に問題に取り組まなければなりません。大変ではありますが、やればやるだけ自分の力になり、その経験が無駄になることは一切なく、その後の「面白さ」の実感につながっていきます。私はこの研究を、「 ロールプレイングゲーム のようだ」と日頃から思っています。敵を倒す=答えを求めることを最終的な目標として定め、「どう攻めるか」と試行錯誤を繰り返しながら前へと進む。ときにはわなに落ちることもあるかもしれないし、戦略が間違っていることもあるでしょう。うまくいかないときは気持ちを切り替え、柔軟な発想で取り組まなくてはなりません。それでも、最終的に答えに到達したときに感じる達成感は何物にも代え難いもの。物事って、うまくいきすぎても面白くないじゃないですか。学生の皆さんには、根気強く向き合う粘り強さ、そして自分の思考で攻略していく楽しさを、数学を通じて感じてほしいと思っています。
解説:割り当てられたキャラクターを操作し、架空の状況下で与えられる試練を乗り越えて目的の達成を目指すゲーム。
渡辺先生のハマりもの!  ケーキ作りって数学に似ているんですよ。
最近、休日にケーキを作ることが増えました。甘い物が好きで「自分で作ってみよう」と思ったのがきっかけですが、今ではガトーショコラならレシピを見なくても作れます。分量を1gたりとも間違えてはいけないという厳密性は数学に似ていますよね。運がよければ私の研究室で食べられるかもしれません。
レアチーズケーキはまだまだ勉強中!
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