京都産業大学キャンパスマガジン サギタリウス 2012 Jul vol.56
Voice of Sagittarius 外国語学部 ドイツ語学科 ヤスパゼン マルテ教授 ドイツ語学科教授。専攻分野は言語授業でのマルチメディアと日独文化交流。ドイツ語の音声学を研究の中心としつつ、コミュニケーション領域を重視したクリエイティブな試みを行っている。
Voice1 日本にやってきたのは、「能」を習うため!? 多彩な先生の略歴。
 私が京都産業大学に来るまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。ドイツ時代は大学の法学部に通い、労働法を専攻していたのですが、卒業後は法の道へは進みませんでした。もともと演技や表現に興味を持っていたこともあり、ラジオ番組の脚本や監督の仕事に就き、俳優業にも少し関わったこともありました。そしてあるとき、日本の伝統芸能である「能」 に興味を持ったことをきっかけに、日本にやって来たのです。もう23年前のことになりますね。
 日本に来てからはドイツ語教師として仕事をする傍ら、能の流派である金剛流の師範に弟子入りし、謡や舞、面の彫り方を習いました。ドイツでの経験を生かして、ラジオのドキュメンタリー番組の制作を始めたのもこの頃からですね。そしていろいろなご縁があり、4年前に京都産業大学に招かれ、ドイツ語の教授へ。ほら、本当に平坦な人生ではないでしょう(笑)
解説:日本の伝統芸能。流派によってはドイツ公演も行っている。
Voice2 クリエイトする楽しさで、言葉の壁を越える。
 このような私の経験からすると、日本の学生は決まった道を真っすぐに進んでいる印象を受けますね。就職制度の違いなどが大きく影響しているのだとは思いますが、目の前にはたくさんのドアがあり、開けばさまざまな体験につながる道があるのに、知らずにそこを通り過ぎてしまっているように見えてしまいます。
 そこで、私の授業ではドイツ語の習得だけでなく、新しい世界に目を向けるヒントとして独自のアプローチを実践しています。例えば1分間のスピーチを動画で撮影し、客観的に自分を見る体験をしてもらいます。さらに一歩進めて、オーディオやビデオ を使ったドイツ語での短いメディア作品を学生自身に作ってもらい、YouTube にアップします。私はクリエイティブのプロとして編集方法やストーリーの作り方などのアドバイスは行いますが、あくまでも作るのは学生自身。ドイツ語を使うことの楽しさを感じてもらうことはもちろん、自分の中からアウトプットし、自己表現する体験を通じて、さまざまな「扉」を開いてほしいと思っています。ドイツ語の扉、恥ずかしさを乗り越える扉、何を表現するのかを見つける扉…。その扉に気付き、開いていく度に、何らかの発見があるはずです。その発見は間違いなく自己を磨き、成長につなげてくれるものになるでしょう。
解説:編集には学内のコンピューターを利用。
「Audacity」「Windows Media Player」などの編集ソフトの基礎が学べる。
Voice3 自分だけの道につながる、たくさんの体験を。
 言葉の次に大切なのは文化を知ることです。私はドイツの情報を発信する活動に取り組んでいますが、最近では大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館の協力を得て、ドイツの原発廃止 についてのパネル展示を学内で行いました。原子力を廃止するべきか否かは、簡単に結論が出ない社会課題の一つです。この展示では、ドイツの取り組みを一つの事例として多くの人に知って欲しかったという思いがありました。原子力問題だけでなく、多様な選択肢の中で何かを選んでいくためには、まず正しい情報を取捨選択する力が必要であり、そのためにはまず「知る」ことが重要です。この「知る」ということもまた、大事な扉なのです。
 学生の皆さんが今見えている道には、もしかするとまた異なる道が現れてくるのかもしれません。広い視野を持ち、たくさんの体験を積んで、自分にしか見つけられない道を見つけてください。挑戦することを怖がる必要はないのです。私を見てください。ね、大丈夫でしょう?
解説:2011年5月、ドイツ連立与党は、2022年までにドイツ国内の全ての原子力発電所を停止することを決議。
ヤスパゼンのハマりもの!エレキもアコースティックも何でもこいです。
ギターを演奏することが好きですね。アコースティックもエレキも弾くのですが、愛用しているのはフェンダーWStratocasterWかな。好きなジャンルは、あえて選ぶならロック。私の世代だとジミ・ヘンドリックスとジェフ・ベックなんかは外せませんね。インディーズも好きで、休日に大阪のとあるバンドのドキュメント映画も制作しています。
フェンダーWStratocasterW
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