更生保護施設の役割や重要性を学ぶ

2021.09.03

法学部では2年次から、少人数制のゼミで専門的な研究を展開しています。法律学科 服部 達也教授のゼミでは「社会の中の刑務所・少年院」をテーマに、犯罪者・非行少年の社会復帰支援の重要性について学んでいます。2021年7月15日の講義に、特別講師として更生保護施設「田川ふれ愛義塾」の理事長 工藤 良氏を招き、更生保護施設の役割などについて話を伺いました。
(学生ライター 文化学部2年次 橋本 健太)

ゼミ生に語りかける工藤氏
工藤氏はまず、自身の少年時代について話されました。小学生の頃に両親が離婚し、母親が仕事から帰る深夜まで弟の世話をするという環境で育った工藤氏。家庭でのストレスと同時に学校ではいじめを受け、孤独感を強めていったそうです。ストレスや孤独から逃れるために、小学校を卒業すると暴走族に入りました。18歳で暴走族の総長になった工藤氏は、22歳の時に覚せい剤使用の罪で逮捕されます。
再起を誓った工藤氏は、うつ状態に苦しみながらも家族のために必死に働き、安定した生活ができるようになったそうです。その後、自身の経験から非行少年の居場所をつくりたいと思い、更生保護施設の運営を始めることになったと、現在の活動を始めるきっかけについて話されました。

次に、更生保護施設の現状について説明されました。工藤氏によると、少年院・更生保護施設で改心する少年・少女は全体の約2割で、約8割は再び罪を犯してしまうそうです。「期待を裏切られることもあります。信用はしないが信頼はするという感覚があります」と、更生保護施設で暮らす子どもたちと接する上で感じていることを話されました。
真剣に講義を聞くゼミ生
工藤氏が理事を務める田川ふれ愛義塾が運営する更生保護施設では、非行少年・少女と精神疾患を持つ子どもたちが暮らしています。工藤氏は、更生保護施設で暮らす子どもたちとの接し方について「いくら知識を持っていても、突発的な言動をする少年・少女の対応は難しいものです。肌で感じ、じっくりと話を聞くことが大事だと思っています」と話されました。また「社会は罪を犯した人に居場所を与え、見守っていかなければなりません」と更生保護施設の必要性について強調されました。
講義後にゼミ生から「田川ふれ愛義塾のような更生保護施設が地域から理解を得るのは、難しかったのではないか」という質問がありました。この質問に対して工藤氏は「理解を得るのは確かに難しいことです。しかし、地域の方のお手伝いをするなど地域貢献活動をすることで、徐々に受け入れてもらえました」と回答されました。最後に、ゼミの担当教員である服部教授が「支援者を支援する人の存在が重要である」とゼミ生に話し、講義を締めくくりました。

私たちが普段の生活の中において直接的に更生保護施設に関わることはほとんどありません。本講義の取材を通して、更生保護施設の役割を知り、理解を深めることで、より住みやすい社会へとつながるように感じました。
PAGE TOP