【国際関係学部】「国際キャリア開発リサーチC」パラオ共和国(前編「インターンシップ編」)

2024.10.04

「国際キャリア開発リサーチ」は、国際的な活動を行う公的機関や民間企業等と連携し、プロジェクト研究や問題解決型研究に取り組む短期集中型の演習・実習科目です。今年度の「国際キャリア開発リサーチC-2」(三田貴教授担当)では、学生6人がパラオに3週間(8月15日〜9月5日)滞在し、政府・行政機関「大統領府(Office of the President)」「人的資源・文化・観光・開発省観光部(Bureau of Tourism)」「パラオ政府観光局(Palau Visitors Authority)」「コロール州固形廃棄物管理事務所(リサイクルセンター)」でインターンシップを行いました。

(国際関係学部3年次 杉 旺城)

インターンシップ概要

今年度のパラオ・プログラムでは4つの機関が学生を受け入れてくださいました。各機関の概要とインターンシップ内容は次の表に示しますが、この記事では、私の大統領府でのインターン内容や現地での経験を中心にお伝えします。

パラオ共和国大統領府 (Office of the President)
概要 大統領と国内外の橋渡しをする政府の中枢機関
活動内容 各省庁との会議、国外の機関・記者に対する調査・報告、広報など
パラオ政府観光局 (Palau Visitor Authority)
概要 持続可能な観光開発と責任ある観光の奨励を通じて、パラオの伝統とユニークな魅力を
促進する独立行政機関
活動内容 日本人観光客向けガイドブックの校閲、エコツアーのデモンストレーション、魅力を
日本人観光客向けにSNSで発信
パラオ政府 人的資源・文化・観光・開発省観光部 (Bureau of Tourism)
概要 観光に関する規制を担う政府機関
活動内容 人的資源・文化・観光・開発大臣、BOTスタッフとの会議、PVA主催の
エコツアー参加と評価プレゼンテーション、ホームステイの基準その他観光関連の
新たな規制についての提案
コロール州 固形廃棄物管理事務所 (Koror State Government Solid Waste Management Office)
概要 パラオの資源循環の拠点となるリサイクルセンター
活動内容 ゴミとして収集されたペットボトル、ビン、生ごみ、プラスチックをリサイクルし
再資源化工程の実習、ガラス工房(使用済みのビンを新たにガラス工芸品へ)の実習

大統領府でのインターンシップ

大統領府は政府の中枢の組織では、他の政府機関、国外の公的機関との会合や協議会などと計画されている業務を遂行しながら、随時、対外国政府・各種団体・個人からの表敬訪問や交渉など各種のアプローチに対応する必要があり、「柔軟性」と様々な場での「対応力・コミュニケーション力」が高度に求められる職場です。下の写真は海上自衛隊駆逐艦「有明」で行われた日パラオ外交関係樹立30周年記念行事とAssociation of Pacific Island Public Auditors(APIPA・太平洋諸島監査協会)の年次会合に出席した時のものです。両行事では、他国との外交がどのように進められているのか、大統領府の役割という側面から現場で学ぶことができました

海上自衛隊駆逐艦「有明」での日パラオ外交関係樹立30周年記念行事
APIPAの年次会合にて
私が従事した仕事の中で、特に印象に残ったのは「広報」です。パラオではテレビや新聞、ラジオよりもSNS(特にFacebook)がメディアとして重要な役割を果たしています。大統領府も例外ではなく、最も重要な情報発信手段として、プレスリリースや大統領が出席した会合・イベントの概要や成果などをFacebookで公開しています。私はそのうちの一つの記事の執筆と投稿を任されました。「政府のプレスリリースを英語で書く」というのはとても重要かつ難しい責務になるので、適切な表現を調べたり、構成や内容を同僚に相談したりしながら進めました。校閲・校正を経て、同僚の方と写真を選び、最終的に投稿するまでの一連の作業を担当しました。自分が書いたものが政府の公式な情報として公開された成果を見ると、大きな達成を感じました。同時に、政府の機関として広報に携わることに対する責任の重さを実感し、SNSが政府とパラオの人々をどのように繋いでいるのかを業務を通じて見ることができたことはとても貴重な経験となりました。
パラオ共和国大統領府サテライトオフィス
オフィス内にて。ここで広報文書の作成や投稿を行いました。

こうした広報業務に加え、このインターンシップにおける最大の経験は、大統領とお会いしインタビューしたことです。一国の大統領とお会いし、直接一対一でお話する機会を得ることは誰もができることではありません。大統領府職員の計らいでこの機会を作っていただきました。インタビューでは、私が関心を持っている研究テーマである「民主主義と専制主義といった政治レジームと民主主義におけるメディアの役割」を中心に、パラオ共和国大統領としてたくさんの質問にお答えいただきました。質問は事前に準備していましたが、インタビューは対談です。大統領がおっしゃったことに反応したり、その場の状況に応じて質問を変更・組み換えをしたりする必要がありました。大統領と政治体制やメディアなどの関心を持つ学問領域に関して英語で対談をするという貴重な経験は、国際関係を学ぶ学生としてとても意義のあることでした。国際関係に対する新たな知見と実地での経験は、私の今後の研究に大きな影響を与えるものでした。

大統領府にて。パラオ共和国スランゲル・ウィップスJr.大統領のインタビュー後に

成果報告会

滞在最終日となった9月4日は、インターン受入各機関の関係者やホストファミリーを招いて、3週間の滞在での経験や学び、調査・研究したこと、将来に向けたアクションプランなどを学生6人が発表しました。

当プログラムの実施に協力してくださったNGOの方からの冒頭挨拶
リサイクルセンターの発表の様子

私は、インターン期間中におこなった新聞社とラジオ局への取材をもとに「パラオにおけるメディアの特性と役割」について発表しました。大統領府の広報がテレビやラジオ、新聞よりもFacebookで行われていることに興味を持ったからです。大統領府の職員の方の協力で新聞2社とラジオ局に取材をすることができました。それを踏まえて、パラオにおいて、Facebookがいかに重要な情報源であるか、SNSが「知る権利」をどのように保障するのか、そしてフェイクニュースが民主主義にもたらす脅威についてお話をしました。他のインターン先の方やホストファミリーの方から、発表に対して「よく調べられている」「その通りだ」といった好意的なフィードバックから「若年世代のSNSの使い方」「小さな国で嘘を流布することの特異性」といった新たな知見を得ることもできました。これは、今後の研究テーマに組み込みたいと考えています。

大統領府の発表の様子
大統領府の担当者の方からのフィードバック

それぞれの発表に対して、たくさんの方が感想・意見などを提供してくださいました。後半は、ホストファミリーとインターン先の方々から学生に対して個別のフィードバックをいただきました。学生は自分の研究テーマに対する知見や将来設計に対する好意的な反応を得ることができました。来年度の同プログラムに対する機運を高めながら、終始和やかな雰囲気で報告会及びプログラムを終えました。

おわりに

私は、この3週間を「インターンシップ」や「ホームステイ」という言葉だけでは説明できない経験をしたと考えています。パラオという人口2万人の国において人と繋がることの重要性、学生としてパラオ社会にどう貢献することができるのか。3週間の経験から就活や進学といった将来にどう活かすことができるのか。パラオで「人」と関わり合うことでしか学べないことがたくさんありました。学生はそれぞれの進路設計がありますが、パラオでの経験は私たち学生にとって今後の展望を一層明確にするものでした。

報告会後の記念撮影
このプログラムの受け入れ協力をしてくださったNGO組織Palau Resource Instituteの皆様、私たちを温かく迎えてくださった各ホストファミリーやインターンシップ先の皆様、そしてプログラムを実施してくださった三田教授と国際関係学部に、心より感謝申し上げます。また、来年度以降もこのプログラムが日本とパラオの架け橋としてさらに発展していくことを心から願っております。
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