東北関東大震災に関するインドネシアでの報道(2011年3月23日)

 2011年3月11日午後2時46分に発生したマグニチュード9.0の東北関東大震災は、その発生以降、インドネシアでも連日その状況が報道されています。インドネシアにおける今回の地震・津波、および原発被害について、インドネシアの方々がどのように捉えているのか当地に在住している日本人として感じたことを簡単ですがまとめてみました。


1.やっぱり日本はすごい

 もともと対日感情が良好だというインドネシアの前提条件を考えても、今回の大災害に対する日本人・政府の対応にはインドネシア人一様に尊敬、感心しています。報道や当地の人たちの間で繰り返し賞賛の的になっているのは以下のような点です。項目以下の文章は私が聞いた範囲でのこちらの方の意見です。

(1)略奪・暴動がおきない

 先進国であるアメリカでカトリーナ台風被害があったときも略奪があった。インドネシアならかなりの確率で略奪が起こるに違いない。日本の教育・文化のなせる業だ。

(2)厳しい状況にあっても被災者がしっかり整列して支援物資(食料やガソリン)を受け取っている

 インドネシアも含めて他の国では支援物資を先を争って奪い合う。それどころか支援物資の横流し、市場での販売までされることがある。

(3)ボランティアがしっかりと機能する

 さまざまな人たち、時には自身も被災者であるにも係らず、何かを被災者・被災地のためにしようという人たちが大変たくさんいる。そしてそれをコーディネートする仕組みが実に自然に立ち上がる。インドネシアだとここまでできるかどうかわからない。たぶん自分のことで精一杯

(4)被災者自身が不平不満をいうことなく、現実を受け入れ黙々と復興に向けて生活している

 日本人は「我慢する」こと「人に迷惑をかけないこと」を幼い頃からしっかり学んでいるのだとおもう。それに日本人は政府を信じている。

(5)このような大災害時でも中央、地方政府機能、民間との連携が機能する

 この混乱の中、中央政府、地方政府、民間企業との連携が多少の混乱はあれどもしっかり行われていると思う。日本人の政府への信頼や救助等の業務に当たる人たちの使命感の強さには感心する。

(6)災害対策がしっかりしている

 災害の大きさが今回は予想を超えていたようだが、防災インフラ、教育ともしっかりしている。

 新聞では本日現在まだ今回の大災害記事が1面を飾っています。テレビではニュース番組のほか、週末のテレビトークショーでは元日本留学経験者も出席してコメントを述べる機会が見られます。上記のような点を評価すると共に、日本は必ず早期に復興するという報道が多く見られます。

2.日本は友達

 これまでの対日感情のよさ、アチェ地震・津波災害時に日本から多くの支援がなされたこともあり、今回の災害に対しては地震発生直後から支援の動きがインドネシア国内でも広がっています。

  1. インドネシア政府: 200万ドルの緊急支援を実施。救助隊の派遣。
  2. 元日本留学生が設立したダルマ・プルサダ大学にて3月17日、今回の災害犠牲者追悼と早期復興を願う「祈りの会」がインドネシア・日本友好協会(PPIJ)主催で開催。塩尻駐インドネシア大使、ラフマット・ゴーベルPPIJ理事長、ギナンジャール・カルタサスミタPPIJ会長などインドネシア・日本双方から約300名が参加。
  3. 日本留学、滞在経験のある若手インドネシア人組織KAJIが3月26日チャリティーコンサートを実施予定。
  4. 在インドネシア日本大使館、インドネシア赤十字でも義捐金受付を開始。
  5. インドネシアに留学している日本人留学生が路上で募金活動開始。
  6. アチェ、メダン、ジョグジャカルタ、バリなどでも追悼集会、募金活動が現地の学生らによって実施されている。

 特に2.は塩尻大使、ヒダヤット工業大臣、マルザン技術評価応用庁(BPPT)長官、ソフィアン・ワナンディ経営者協会会長など日本とのつながりの深い関係者が参加していました。挨拶の中で、ラフマット・ゴーベル氏は「インドネシアと日本は家族であり、家族の苦しみも悲しみも分かち合いたい」と述べておられました。

 このほか身近なところでは、私を含め多くの在留邦人が感じていますが、たくさんのインドネシア人の友人が(普段あまり連絡を取らない人も含めて)「日本に居る家族は大丈夫か?」と電話やメール、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)で気遣ってくれます。

 レストランで初対面のウエイターから「日本の家族は大丈夫ですか?/Keluarga di Jepang tidak apa - apa ?」と尋ねられることもありました。

3.関心の高い放射能問題

 今回、東北関東大震災で災害規模、被災者数と共に特に注目を集めているのは福島県の原子力発電所の障害についてです。

 2025年までにバンカ・ブリトゥン州内などに、原子力発電所を建設する計画のあるインドネシアでは今回の原発被害に対する日本政府の対応(放水作業、住民の原発周辺からの避難など)について詳細を報道するほか、原子力発電所の構造、放射能の人体への影響についても連日報道されています。

 また、野菜や水道水から放射性物質が検出されたニュースも大きく報道されています。日本から入国する便の乗客への放射能簡易検査や、日本からの輸入貨物、食品の検査も始まっています。今回の事故を受けて原発反対の動きは当然のように起きていますし、日本からの魚の輸入が一時的に停止される模様です。

 ただ、残念なのは、放射能被害が日本全国に及んでいるかのような報道も散見されることです。日本で生活するインドネシア人ビジネスマン、学生、看護師、介護士の家族の中には日本から早急に帰国するように親族から求められるケースも多くあるようです。現に、3月23日までに200名を超える在日インドネシア人がインドネシア政府の支援等で帰国しています。

ジャカルタ在住の卒業生・勝西紀之氏

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