コンパス紙インターネット版 2011年3月19日(土)

なぜ私はまだ東京で頑張っているのか?(一部省略)

 現在、東京に住むインドネシア国民のジュナント・ヘルディアワンが自身の経験をコンパス紙に投稿してきた。

 福島第一原発危機が起きた時、恐怖感がじりじりと込みあがってきた。東京と福島第一原発の距離は約200kmしかない。仮に最悪な事態が起きたとすれば、数時間のうちに放射能が東京の街にふりかかる、という考えが私にはあった。日が経つにつれ、あたかも制御できないかの如く原発危機がエスカレートしていく。様々な爆発と放射能放出はいまだに続いている。 メディアは絶えずこの緊迫した状況を伝えている。放射能はすでに東京まで流れてきているとも言われ、最も放射能の影響を受けやすいと言われる幼い子供もいる私たち家族は、さらなる恐怖感で満たされた。祖国インドネシアの友人からの電話やSMSは、すべて同様に「今すぐ帰るんだ。状況はますます危険だ!」と言っている。

 メディアもまた更なるパニック騒動に火をつける。これは、東京で特に外国人居住者に感じられる。外国人居住者の集団的大移動の波は高くなっている。成田空港は祖国に帰ろうとする外国人であふれかえっている。私は、フランス、イタリア、ドイツやその他のヨーロッパ諸国からの外国人の同僚に連絡を取ってみたところ、彼らはすでに避難しており、彼らの会社に問い合わせた時には大半が東京の外にいた。中国からの同僚はすでに南へと避難しており、韓国からの同僚一人だけが、残って働いていた。

 そのような状況を目の前にしたら私だってパニックになって当然だろう。私も他の数百の人間に続いて逃げるべきなのか。大丈夫と言ってくれる日本人の同僚を会社に残して、パニックになるべきなのか。テレビで放送されていることを信じて、避難するべきなのか。

 パニック状態にある場合、私たちは冷静に正しく物事を考えることができない。私は後に、今の東京の状況を振り返るだろう。日本人の顔には、パニックを起こしている様子は全く見られない。彼らは普通に活動し、普段通りに道を歩いている。仮に変わった事があるというならば、電力供給不足で、列車の運休を含め、多くの場所で節電が行われている。

 先週も、通常通りに同僚のアナリストは状況を分析し顧客に電話をかけていた。私もまた、日本の投資家でインドネシアでさらに投資を行おうとしている人がいるのだがと、日本の銀行から相談を受けていた。彼らは、パニックの様子を示さない。

 なぜ彼ら日本人はパニックにならないのか?

 私がこのように尋ねた時、彼らは、政府を信じているからと答えたで。日本人は日本政府が最善を尽くし、常に国民の事を考えていると信じている。原子力危機の時はおろか、地震の際も、東京の交通機関が全停止した時も、突然駅で、無償で毛布と水が配布された。いくつかの自動販売機も無料になった。食べ物もどこからか分からないが突然出てきた。

 日本政府はすでに様々な可能性に備えている。原子力危機も、政府が最悪な事態を考えていない、ということはない。結局のところ、日本人は働いて、通常通り活動する。

 彼らもきっと起こる展開に対して心配はしているが、それを示さない。

 会うたびに、日本を再建するために彼らはお互いに励まし合っている。メディアで描かれているようなパニック騒動は全くない。

 先日私は、東京の在日インドネシア大使館で開かれた緊急会議に参加する機会があった。原子力に詳しい専門家の説明に、福島原発は利用する物質が異なるため、チェルノブイリ原発事故のような災害は起きないとあり、東京に流れてくる放射能の数値は、私たちが飛行機に乗ったり、パソコンの前に座っている時に受ける量よりも微量だと伝えられた。

 この様なことから、私が東京から避難しなければならない理由が見つからない。

 日本人は変わらず働き、私たちもまた変わらず働かなければならない。

インドネシア語専修 4年次 峰 成美

PAGE TOP