京都産業大学 キャンパスマガジン サギタリウス VOL.49
Voice of Sagittarius
湯川秀樹博士にあこがれ、学生時代は物理学を専攻。 画像
湯川秀樹博士にあこがれ、学生時代は物理学を専攻。
細胞生物学・分子生物学を専門に、細胞内で生み出されるタンパク質の生成・修復・品質管理について、世界的にも独創性の高い研究に取り組む永田先生。湯川秀樹博士にあこがれ京大に入り、素粒子論をやろうと物理学を専攻したが、「当時、学生運動が盛んだったこと、短歌にのめり込んだこと、恋人が現れたこと、この3つの理由ですぐに物理の分野から落ちこぼれてしまいました(笑)」。そんな永田先生が生命科学の世界に触れたのは大学卒業後、一般企業に就職してからだった。「会社からバイオの研究をまかされましたが、大学でやっていたのは理論物理学で、実験なんてやったことがない。顕微鏡の使い方もよくわからない状態から、見よう見まねで研究をスタートさせました」。そこで細胞生物学の世界のおもしろさに目覚め、「もっと好きなことを研究したい」と5年半で会社を退職。研究員として京大に戻り、本格的に研究に取り組むことになる。
コラーゲンを食べても肌はツヤツヤにならない!? 画像
コラーゲンを食べても肌はツヤツヤにならない!?
アミノ酸が連なった状態のものがタンパク質であり、アミノ酸が正しく折りたたまれ正常な構造を形作ることでタンパク質が機能する。その正常な構造・機能の獲得を助けるタンパク質の一種を分子シャペロンといい、永田先生はコラーゲンの働きを助けるHSP47という分子シャペロンを世界で初めて発見した。「客員准教授として米国国立がん研究所に留学していた1986年に発見。それ以降、ライフワークとしてこの分野の研究に取り組んでいます」。例えば肝硬変をはじめ、コラーゲンが必要以上に作られたことによって起こる疾患の場合、HSP47の量を減らすことで治療の効果があるなど、病気とのかかわりにおいても同物質は世界的に注目を集めている。「ちなみに、美容面からコラーゲンを食べるとお肌にいいとよく宣伝されていますが、そんなことはありません。口にしたコラーゲンはすべてアミノ酸に分解されるので、摂取したコラーゲンがそのまま体内のコラーゲンに入れ替わるということは絶対にないんですよ」。
生命科学の世界は、わからないことだらけ。
これまでの工学部生物工学科が再編成され、今年新たに誕生した総合生命科学部。その初代学部長に就任された永田先生に、この学問の魅力について聞いてみた。「生命科学の世界では、解明されていることよりまだわからないことの方が断然多い。こんなこともわかっていないか!?という感動とおもしろさ、そしてその誰もわかっていないことを探っていくことの醍醐味、それが何よりの魅力です」。そこで大切なのが、まずは「なんでだろう?」といろんなものに興味を持つこと。世の中はわからないことだらけで、それらの謎に興味の目を向けさせることが、教育のうえでは最も大切だと永田先生は語る。「興味さえ持てば、後は自分で調べたくなる。そして、自分で手を動かして調べ始めると、がぜん研究が楽しくなってきます。 わからないこと だらけであることを知り、興味を持ち、その中で自分のやりたい分野を追究してみてください」。
先生のもうひとつの顔
先生のもうひとつの顔
歌人としての顔もあり、現在「塔」短歌会主宰、宮中歌会始詠進歌選者、朝日新聞歌壇選者などを務めています。ひとつの分野を追究すべき研究者が、細胞生物学者と歌人のふたつの道を両立している。そのことで悩むこともありましたが、40年たった今、ようやく「両方やっていてよかった」と心から思えるようになりました。
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