【経済学部】自産自消できる社会に~農家が考えるこれからの農業の在り方~
2023.08.24

経済学部の専門教育科目「地域づくり人特別講義」(担当:菅原 宏太 教授)は、受講生が地域づくりについて多面的に考える能力を身につけることを目的として開講しています。講義では、地域づくりにかかわる企業・団体の代表者などを講師として招き、地域が抱える課題や地域づくりの現場から見た日本社会についてお話しいただきます。今回は、株式会社マイファームで代表取締役社長を、そして学校法人札幌静修学園および一般社団法人日本有機農産物協会のそれぞれで理事長を務めていらっしゃる西辻一真氏をお招きし、日本社会における農業の在り方についてお話を伺いました。
(学生ライター 文化学部4年次 市原 美季)

農家に携わる企業を起業し、夢を実現された西辻氏ですが、経営者としての考えが大きく変わる出来事があったそうです。2011年の東日本大震災の影響で農園のお客さんが離れてしまい、会社の経営が大きく傾いてしまいました。こうした背景によりマイファームから離れることを余儀なくされた西辻氏ですが、数年後、自身が設立した会社が倒産目前にある状況を知り、2013年に経営立て直しのためマイファームに復帰することを決意されました。その際、西辻氏が会社に戻ってくることを信じて会社に残ったメンバーや、自身が復帰するタイミングで一斉に戻ってきてくれたメンバーたちを見て、なぜあの時会社に残るという判断をしなかったのかと深く反省されたそうです。この経験から、無理な事業拡大を控えることや、会社の理念は社員やアルバイト含め全員で決めるなどの意識を強く持つようになり、会社経営をより客観的に捉え進められるようになったそうです。

授業の最後に受講生から、「労働力不足により大量生産型農業や機械化が進んでいる中で、人にこだわる理由とは何か」という質問がありました。西辻氏は、「生産者と消費者それぞれの食に対する意識を変えることが重要だ」と述べられました。食品ロスの多さが深刻な課題とされている日本において、生産者は作物を大切に作り、消費者はその作物を大切にいただくという考えがまだまだ広まっていないように思われます。作物に手間をかけて大切に育てるということは、機械には難しく、人の手でしかできません。また丁寧に育てられた作物を残さず美味しく食べることも、消費者である私たちにしかできないことです。このお話を聞き、農家の方々だけではなく、私たちの行動次第で日本の農業の在り方を少しでも変えることができるのではないかと感じました。