【経済学部】時代の流れを読み、先立って動く! 老舗酒造メーカー「月桂冠」の変遷

2022.12.07

経済学部の専門教育科目「経済人特別講義」(担当:関田 静香 准教授)は、日本経済の各分野で活躍される方々を講師として招き、学生がこれまでに学んだ経済問題についてより知見を深める講義科目です。今回はゲスト講師として月桂冠株式会社専務取締役営業本部長 多胡 賢之氏が登壇され、社会情勢に対して先進的な視点を持ち柔軟に変化してきた月桂冠の変遷について話を伺いました。

(学生ライター 法学部3年次 竹嶋 宣輝)

講義をされる多胡氏
月桂冠は本社を京都(伏見区)に構え、国内では札幌や仙台、東京などにも事業所等を展開し、日本酒の製造と販売を行っています。また国外へも販売先を拡大し、米国では現地での製造販売を行うなど、世界中に日本酒を販売しています。
多胡氏は、1986年4月に月桂冠に入社し、各支店・流通部・営業部での営業経験を経て、2022年に専務取締役営業本部長に就任されました。
今回の講義では、激しく変化する日本経済の中での月桂冠の変遷について話されました。

月桂冠は京都・伏見にて江戸時代の1637年に「笠置屋(かさぎや)」の屋号を名乗り、酒銘を「玉の泉(たまのいずみ)」として創業しました。当時は酒造りできる期間が冬に限られたことから、製造量が制限され、重い酒税を課されるなどしたため、大きな売り上げには直結しませんでした。
しかし明治~昭和時代に転機が訪れます。大倉酒造研究所(現:月桂冠総合研究所)の創設による科学技術の導入や、月桂冠の酒銘採用、いつでも生産可能な四季醸造システムなどさまざまな事業を展開され、売り上げを大きく伸ばしました。
その後1970年代前半にピークを迎えた日本酒市場は、1975年から長期減少傾向にあります。時代の変化とともに販売先も変化していきます。販売先の変遷をたどる際に多胡氏は「誰が銘柄決定権を持ち、誰が商品の採用権を持っているかが営業の本質」と語られます。この「銘柄決定権者」はお酒を選択する主体を指します。昔は個人経営の酒販店店主がおすすめの日本酒を選んでお客様に販売しており、銘柄決定権は店主にありました。そのため、月桂冠のメーカー営業は個人経営の酒販店への売り込みが主な業務でした。
しかし、2001年の酒類販売業免許の自由化を皮切りに、個人経営の酒販店が廃業・事業縮小に追い込まれます。規制緩和が進み、小売業界で競争が激化したことで価格も下落し、銘柄決定権はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど企業に移ります。同時に、月桂冠の営業先もこれら企業がメインになります。
近年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、販売先である小売店の売り上げが減少しています。他方では通信販売による売り上げが増加しました。銘柄決定権者は企業から消費者に移りつつあります。


最後に、多胡氏は学生に向けて「これから成長していく企業を見ることも大切ですが、自分の好きなことができるかどうかという視点を大切にしてください」とメッセージを贈られました。
普段口にしている日本酒のメーカーにこれほど多くのストーリーがあり、業界の中でも先立って市場分析や研究開発に取り組まれていることを聞き、「先立って動く」ということは部活動やゼミの活動においても手本にすべき立ち居振る舞いだと感じました。また、「好きなことができるかどうか」という多胡氏のアドバイスを、これからの就職活動において大切な視点の1つとして持っておきたいと思いました。

授業最後の質疑応答の様子
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