AIの利便性とリスク ~国際関係学部教員によるNews解説ワークショップ開催~

2021.07.14

国際関係学部では、教員が専門分野の話題のニュースについて詳しく解説する「News解説」のワークショップが、昼休み(12:30~13:00)を使い定期的に開催されています。今回は真理館の教室で「人工知能と差別-これまでの課題・これからの課題-」をテーマに開催されました。
人工知能(AI)は、人間にとって善悪どちらの存在なのでしょうか?

(学生ライター 外国語学部3年次 福崎 真子)


担当されたマコーマック ノア教授

2021年6月29日に開催されたワークショップの担当は、マコーマック ノア教授。画像や図を会場前方のスクリーンに映し、オンライン上での配信も並行して解説されました。

冒頭でノア教授は、参加者の興味関心を引くような、AIに関するニュースを紹介されました。受刑者の再犯リスクを見極めるのにAIを使うと、白人ばかりリスクが低いと判断されたり、企業が求職者を選定するのにAIを使うと、男性ばかりが採用されたり…。このように近頃では、AIの下す「合理的」とされる判断が、「人種差別」と捉えられてもおかしくない事態になってきているのだそうです。

次に、AIが私たち学生の身の周りに及ぼすかもしれない悪影響について説明されました。 例えば、学校の試験や就職面接で、AIが面接・採用担当として使われるようになると「過去に合格した人と同じような人だけが合格し続ける」という、過去の再生産をたどってしまう可能性があります。他にも、職場に“顔認証機能で仕事の生産性を上げるAI”が導入されるようになると「この人は眠そうな顔をしているからクビ」「この人は真面目に話を聞いていない顔をしているから仕事には不向き」などと、労働者がAIに監視され、理不尽な理由で管理され続ける状況になるかもしれないのだそうです。

会場の様子 真剣に耳を傾ける学生たち
AIの顔認証機能について話すノア教授

アマゾンやマイクロソフトなど、世界のインフラ整備を担う大規模企業の影響で、AIの活用・技術促進が主流かつ肯定的になっている国際社会と国際経済。しかしノア教授は「AIが活用される現場で影響を受けるのは、主に学生や労働者、消費者が中心だが、その人たちの意見が直接AIの開発に生かされているわけでない。これは、日本における民主主義的な制度からしていかがなものか?」と疑問を投げかけました。

最後に、マイクロソフトが開発したAIである「Tay」について説明されました。2016年にTwitter上でチャットボットとして運用された「Tay」は、1日も立たないうちに、ジェノサイドを支持したり、ホロコーストを陰謀論と見なしたりするなど、差別的な発言をするようになったことで利用が即時停止されました。インターネット上での人同士の会話を学び、アレンジして発信するよう設計されていた「Tay」は、他のAIと比べて唯一、禁止用語リストが搭載されていなかったそうです。「Tay」の差別的発言は、人間がそうするよう仕向けた・教育した結果であったと言えると解説されました。 ノア教授は、「AIは、誰がどのように設定するか・情報を入れるかによって、性能がまるきり変わってしまう」と、AI技術の脆弱性を指摘されました。

ワークショップ終了後にノア教授にお話を伺うと「AIは学生にとってそれなりに身近な存在で、常に目にする言葉ではあるけれど、ニュース記事以上に踏み込んだ知識を得る機会は少ないと思う。AIが一体どのようなものなのか、少しでも深く考えてもらうきっかけを作りたかった」と、今回の開催目的を語ってくださいました。

ワークショップ全体を通して、ノア教授が、教室全体に視線を配り、身振り手振りで表現しながら学生に語り掛ける姿が印象的でした。


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