【国際関係学部】What Is Dispute Resolution?—国際ビジネスにおける国際商事仲裁の重要性と国際弁護士の役割—

2025.01.21

2024年12月19日(木)に「International Business Case Studies」(担当:植原行洋教授)の授業において、ゲスト講師としてミハエル・ムロチョク氏をお招きしました。グローバル化が進む昨今、国際ビジネスにおける紛争解決(Dispute Resolution)の方法や国際弁護士の役割などの重要性を学びました。

(学生ライター 国際関係学部2年次 小西 美月)

ミハエル・ムロチョク氏

もし、日本企業が他国の企業や代理店と、なんらかの紛争(トラブル)に陥ってしまったら、どのようにして解決しているのでしょうか。最も有効的で使用されている方法は弁護士に依頼し、解決に向けた場を設けることです。ムロチョク氏は、スイスの弁護士資格を有する外国法事務弁護士で日本をはじめとする諸外国でビジネスに関する国際案件で活躍されています。本稿は、ムロチョク氏から学んだ、四つの基本的な紛争解決方法を皆さんに紹介します。
まず一つ目は「Negotiation:交渉」です。この方法では、第三者は関与せずに当事者間での解決を試みます。これは私たちの学生生活でもなにかうまくいかない時に、相手と直接話し合って解決することがあるため理解しやすかったです。
二つ目は「Mediation:調停」です。この方法では第三者を調停人と呼び、調停人の仲介による両者の合意を目的としています。そのため、最終的な和解には双方の合意が必要不可欠です。ただし法的には非拘束であることが調停の特徴です。
三つめは「Arbitration:仲裁」です。二つ目の方法と似ていますが、仲裁は法的に拘束される手続きを有し、仲裁人に決断を委ねる方法です。この仲裁人にはムロチョク氏のような国際弁護士が務めることが多いそうです。仲裁人は強制力を持っており、裁判所のような役割を担っています。当事者の一方に対して賠償金などの罰則を命ずることができ、その役割は「交渉」や「調停」とは大きく異なります。加えて、後述する「訴訟」のように内容が公にならならず、クローズドドアで進むため、当事者にとっては企業イメージが損なわれないなどのメリットがあります。
最後に、四つ目は「Litigation;訴訟」です。最終手段として使用される場合が多く、司法の場に持ち込むことで裁判所からの判断を仰ぎます。この方法は、裁判所による判断が全てを決定します。通常、裁判では、内容を公開することが原則であり、公に紛争内容が晒されることは避けられません。さらに裁判の期間が長期間になるというデメリットもあります。
このように、紛争解決は当事者の要望や案件に合わせて、方法を選択して和解へと進める必要があります。ムロチョク氏曰く、最も当事者の双方がスピーディーかつ納得して合意する手法は「Arbitration:仲裁」だそうです。当事者間で話し合いはするものの、判断を紛争内容に精通している仲裁人を選んで一任する仕組みが用意されており、和解への近道に感じました。

ロの字に配置された座に着き、まるで会議のように始まった講義は、インタラクティブで参加しやすいものでした。説明の進行中であっても、ムロチョク氏に疑問点を直接伺うことができ、とても理解がしやすかったです。今回学んだ四つの方法は、かかるコストも期間も大幅に異なるため、ビジネスを開始する際に予め契約書を交わし、紛争解決手法を明記しておくべきであると思いました。海外ビジネスにおいて海外の代理店の存在は、販売ルートの確保において重要である一方で、行き違いが生じてしまった場合は、紛争解決手段を有効に使い、国際弁護士などの仲裁人を通して一刻も早く和解するべきだと考えます。ビジネスは相互の信頼によって成り立っているからこそ、ビジネスを開始する際に契約書に紛争解決条項を明記し、信頼関係を見える形にしておくことが肝心だと学びました。
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