【国際関係学部】平和構築論Ⅱにて、前UNDP駐日代表の近藤 哲生氏をお招きし、講演会を行いました。
2025.01.16

近藤氏は、外務省に入省後、フランスやフランス語圏の在外公館、国連代表部などで勤務された後、2001年にUNDP(国連開発計画)に移られ、以降定年退職される2023年まで、世界各地の紛争や貧困に苛まれる途上国での活動を行ってこられました。
講演会初めに、近藤氏は私たち学生に対して「今日何を学んで持って帰るのか」と講演の目的を話されました。2030年の持続可能な開発目標であるSDGs成果発表まで5年を切っています。今未達成のことに焦点を当てるのではなく、「5年後の立場に立って今を見返し、見つめ直すことが重要」であると述べられました。つまり、未来の視点から現在を顧みることで、達成できていない項目に対し過去・現在に悲観的になるのではなく、今から何を進歩、進化していくことができるのか、創造的に考えることができると、現在を生きる若い世代である私たちへのアドバイスをいただきました。
近藤氏の外交官としての出発点として、特に重要だったのが、旧ザイール、現コンゴ民主共和国での体験でした。外交官として現地に赴かれましたが、当時は独裁政権下であり、大統領による富の独占は国全体を貧困に陥れる原因となっており、国際的な補助金だけでは開発事業を進展させることができず行き詰まっていたそうです。この経験をもとに、帰国後は人道支援に寄り添いたいと思うようになったそうです。
外務省から出向していた国連勤務当時の1990年代半ば、冷戦崩壊による緊張緩和により、冷戦期に軍事的目的で使用されていた資金を、恐怖や欠乏からの自由が保障されていない、人間としての尊厳が損なわれている、つまり「人間の安全保障」の危機に瀕している人々のために資金を投資することが、国連開発計画より提案されました。当時、東西冷戦で抑え込まれていた民族間の対立や、植民地時代の負の遺産によって多くの低開発国で紛争が発生していました。国連で勤務する中で、近藤氏は、貧困や気候変動、ジェンダー不平等、そして紛争といった世界各国の情勢に触れ、より現場に寄り添った人道支援への意欲が掻き立てられ、UNDPで勤務することを決心されたそうです。


日本は島国であり、地理的にも紛争や貧困地帯とはかけ離れた場所に位置することで、どうしても世界的時事問題を身近に感じることができにくい現状があります。「(日本は)やや閉鎖的であるかもしれませんが、実際に救われた人々の顔や町並みを見ると、日本の国際協力の貢献を身に染みて感じることができるはずだ」ともおっしゃいました。まさにこれらの言葉は、授業初めにもおっしゃったように、数年後の未来の視点に立って今を見返すことであり、人や政策へどれだけの前向きな投資ができ、平和構築と開発促進を前進させられるのか、私たち自身に問いただすものでした。これからを生きていく私たちにとって、未来の視点から現在を見つめ直す機会をいただいた講演会になりました。