【理学部】物理科学科卒業生の松井 愛弥さんと中道 晶香 教授が地震発生の統計性に着目した理論研究の論文を発表

2024.03.25

研究成果

理学部 物理科学科 卒業生の松井 愛弥さんと本学 中道 晶香 教授(専門:宇宙論、理論天文学)とお茶の水女子大学の森川 教授の共同研究で、いつ地震が発生するかを表す統計的な性質に関する理論研究に新しい進展があったと発表しました。この研究成果は、日本物理学会発行の学術誌Journal of Physical Society of Japanの論文として出版されました。

掲載論文

題目:Seismic 1/f Fluctuations from Amplitude Modulated Earth’s Free Oscillation
著者:Akika Nakamichi, Manaya Matsui and Masahiro Morikawa
掲載誌:
Journal of Physical Society of Japan 93, 024004 (2024)
DOI:10.7566/JPSJ.93.024004
URL:https://journals.jps.jp/toc/jpsj/2024/93/2

背景

地震は、複数の要因によって引き起こされる複雑な現象です。この複雑さにもかかわらず、個々の地震や或る地域に継続して発生する地震を調べると、地震活動の普遍的な性質が報告されてきました。しかし、地震をグローバルに捉えて世界のすべての地震はどのような性質を持つのかについては不明なままでした。

研究概要

本研究では、過去50年間にわたる全世界の地震のデータを分析し、パワースペクトル密度と呼ばれる統計的な性質を調べました。すると、全ての地震データを扱うと地震はランダムに発生していますが、マグニチュード5以下の小地震に限定するとパワースペクトル密度は低周波数側で 1/f ゆらぎを示し、また、地震がいつ発生したかという時系列のデータだけを分析しても同様に 1/f ゆらぎを示すこと(図)がわかりました。
1/f ゆらぎは風や音楽や心拍数などさまざまな現象に現れますが、その起源は明らかになっていませんでした。そこで、1/f ゆらぎの起源は、振動数の近い多くの波の重ね合わせと波の変調と復調機構であることを提案し、この説を地震について検証し、地球全体が常に振動する固有振動が小地震を起こすきっかけになっている可能性を指摘しました。
本論文の内容は理学部 物理科学科 4年次生の特別研究から生まれた研究成果とその発展です。物理科学科卒業生の松井 愛弥さん(写真)は現在、株式会社メイテックで、さまざまな地震波などから原子力発電所施設の建屋や機器の安全性を評価する耐震関係の仕事をしています。
図:1972年から2022年までの世界の地震がいつ発生したかという時系列のデータを解析したパワースペクトル密度。グラフの傾きは低周波数側で-1に近く、 1/f ゆらぎを示す
中道 晶香教授(左)と松井 愛弥さん(右)

参考

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