【理学部】宇宙物理・気象学科 小郷原 一智 准教授が執筆した火星大気の解説が日本流体力学会誌に掲載されました
2024.02.02
研究概要
宇宙物理・気象学科 小郷原 一智 准教授が、最近四半世紀の火星大気観測の結果をまとめた解説を執筆し、この度日本流体力学会誌「ながれ」に掲載されました。「特集:惑星流体諸現象とその力学」の一稿であり、そのほかにも金星大気、木星大気、地球型惑星のマントル、惑星大気の宇宙への散逸に関する解説が掲載されています。
掲載論文
URL:第42巻 (2023) :第5号 2023年10月 発行|一般社団法人 日本流体力学会
題目:四半世紀の継続観測で明らかになった火星大気のすがた
著者:小郷原 一智
研究成果
地球と火星で最も大きく異なるのは地表気圧で、地球では1013hPaですが、火星ではおよそ200分1の6hPaです。ただし、火星の両極では冬になると大気主成分である二酸化炭素が相変化するので、大気の全質量が季節によって増減します。それゆえ、平均地表気圧も季節によって20-30%程度変動します。日本で考えれば、季節によっては富士山5合目くらいの気圧になるということです。超強力な台風の中心気圧ですら900hPaまで下がらないことを考えれば、火星の気圧の季節変化がいかに大きいかがわかります。
1999年のMars Global Surveyor(MGS)による火星観測の開始以来、火星大気研究は急速に進展し始めました。MGSと現在も運用中のMars Reconnaissance Orbiter(MRO)は合計で約四半世紀にわたる長期の火星観測データを提供しています。地球以外でこれほど長期にわたって継続的に観測された惑星はありません。その結果、火星の平均的な温度構造と大気循環はもとより、今までは地球でしか知られていなかった大気の構造の年々変動や、ダストストームや氷雲などの局地的な大気現象の活動度の長期変動などが、長期間の継続観測データから明らかになってきました。もしかしたら、地球でみられるエルニーニョ・ラニーニャ現象と西部赤道太平洋の対流活動の関係のように、火星でも局所的な大気現象と数万kmにもおよぶ大規模な大気現象がリンクしている可能性があります。そこで、この解説では21世紀の探査機による火星大気観測で明らかになった、平均的な火星大気の描像とその年々変動についてレビューしています。21世紀に活躍している火星探査機はあまりに多いので、とてもすべての観測結果をまとめることができませんが、軌道上からのリモートセンシングと火星地表面での気象観測を含めて、できるだけ幅広い観測結果を取り扱っています。
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