【国際関係学部】国際経営論Ⅱにてジェトロの板谷 幸歩氏が分断と協調の岐路に立つ世界貿易と企業への影響について講演

2024.12.25

板谷 幸歩氏

11月21日(木)、「国際経営論Ⅱ」(担当:植原行洋教授)の外部講師として日本貿易振興機構(ジェトロ)調査部国際経済課の板谷幸歩氏をお招きし、最新の国際ビジネス情勢について、講演をしていただきました。

今回のご講演ではジェトロが毎年発表している『ジェトロ世界貿易投資報告2024年版』の内容を解説していただきました。
  1. 世界経済と世界貿易のいま、
  2. 半導体やEVなどで本格化する補助金導入や貿易管理、
  3. サステナビリティ推進と新たな逆風
の3つのトピックスを中心にお話をしていただきました。
この3つのトピックスの共通テーマとして、「トランプ大統領(11月5日の米国大統領選挙で勝利)で世界貿易がどうなるのか」という、誰もが関心を持っている最新のテーマが掲げられました。次期トランプ政権は新しい関税の導入に意欲的で、全世界からの輸入に一律10%以上の関税を賦課することや、対中追加関税率の60%への引き上げ検討を表明しており、このような関税政策が実行された場合は日本企業もその影響は避けられないであろうと紹介しました。また、同政権により気候変動政策の転換の可能性もあり、特にインフレ削減法(IRA)運用見直しを危惧する企業が多いと教えてくれました。
世界経済が低成長時代に突入したことや、日本企業が、貿易・投資活動においてインフレや円安の影響を大きく受けているとの説明がありました。さらにロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の不安定化、そして中国と欧米などの政治経済の緊張など幅広い地政学的な観点から世界情勢を説明してくれました。
昨今世界の投資が集中する産業として、再生可能エネルギー、バッテリー、半導体、クラウド・AIを挙げ、これらの産業の投資案件が世界中で行われていると説明しました。特に半導体産業は米国やEUの半導体支援策や、日本におけるTSMC社の熊本県進出を例に、巨額な補助金に基づく個別企業の支援が世界各地で起きているとしました。印象的だったのは、投資が集中する産業のいずれにおいても中国の存在感があり、欧米諸国と中国の競争や対立にビジネス界は目が離せないということです。
最後に、サステナビリティへの対応など、企業は社会的責任が求められるが当たり前になったものの、EUや米国のこれまでの野心的な環境政策に対して企業からの反発の声があがるといった傾向も出ており、見直しの動きがあることも教えてくれました。
世界視野でダイナミックに展開した講義の時間はあっという間に過ぎ、今後世界が分断されるのか、あるいは協調の世界が現れるのかといった岐路にあることが理解できる貴重な機会でした。
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