【国際関係学部】2億9240万人のニーズ—緊急人道支援の仕組みと現状について学びました!(国際協力実務論Ⅰ)

2024.07.08

柴田裕子氏による講演の様子①

6月3日(月)3時限目、国際関係学部「国際協力実務論Ⅰ」(担当:三田貴教授)の授業で講演会、「緊急人道支援とは:その仕組と今」が開催されました。今回の講演会では、主に、人道支援関連のお仕事に従事されており、現在フリーランスでご活躍されている柴田裕子(しばた ゆうこ)氏にお越しいただき、緊急人道支援の仕組みと現状について理解を深める機会としました。

(学生ライター 国際関係学部4年次 柳田 百合彩)


講演者の柴田氏は、大学生時代は国際協力にはまだそれほど興味を持っていなかったため、卒業後は民間企業に就職しました。しかしその後柴田氏は国際協力の重要さに気づき、米国の大学院へ留学して公共行政学の修士号を取得しました。その後NGOでアフガニスタン、シエラレオネ、リベリア、イラク、など様々な地域の事業を担当し、東日本大震災などの国内の災害支援にも関わりました。2012年からはジャパン・プラットフォームでNGOによる人道支援への助成事業などに関わり、2023年7月からはフリーランスとして活躍されています。
柴田裕子氏による講演の様子②

講演では主に3つの内容がありました。一つ目は、緊急人道支援とは何かを学ぶものでした。はじめに緊急人道支援に関する学生の理解が確認されました。学生は「人道支援は現地の人々だけではどうにもできない緊急事態の際に外部からサポートするもの」「人道支援は人の命を救うことや命が危険な状態から助けること」などとそれぞれの考えを示しました。柴田氏からは、人道支援は短期的な支援で、主に自然災害に被災した地域や紛争地やその後の地域で実施され命に関わることが主となるとその特徴の説明がありました。人道支援に対して開発支援は、長期的な支援で主に発展途上国で実施されるものを指し、構造的・系統的な課題への対応が中心で、経済開発・社会開発に焦点があてられます。しかし、最近は以前より人道危機も長期化する傾向にあり、広い意味で人道支援が捉えられることも多く、開発と人道支援の境目は曖昧になっています。また、災害などに関して人道危機を予測し、事前に支援を実施し、人道危機の深刻化を抑えることもあるそうです。

モザンビークにおけるサイクロン被害への対応について説明する柴田氏
次に、人道支援の昨今のトレンドや人道支援を取り巻く環境について学習しました。人道支援を必要とする人の数は、2023年までは毎年増加していましたが、2024年は少し減少がみられているとのことです。それでも、支援を必要とする人の数は年間2億9240万人にもなると知り、私はあまりの数の多さに驚きました。現在一番支援が必要なのはシリア、スーダン、アフガニスタン、エチオピア、コンゴ民主共和国などでした。柴田氏は、日本で大きなニュースとなって取り上げられるのはガザやウクライナのことが多いが、人道ニーズが多い国はほかにもあり、それらの国では、ガザやウクライナと違って資金が集まりにくいと指摘されました。紛争地における人道支援のニーズを減らすには紛争を止めるのが一番ですが、人道支援者としてできることというのは限られており、資金はいくらあっても足りないという課題があるそうです。また近年は、コストや効率の面から、現地のNGOや自治体への直接的なサポートも推進されているとのことです。
国連人道問題調整事務所の予測型支援を説明する柴田氏
三つ目の内容として、アフリカ南東部のモザンビークの事例から現場での実務の様子を解説していただきました。2019年3月、モザンビークにサイクロン・イダイが二度に渡り上陸しました。二度目に上陸したときサイクロンはより強力なものとなっており、それが予測できなかったことと、モザンビークが経済的にあまり発展していなかったこともあり、同国にとって大きな打撃となりました。被災者は185万人で、400人以上の人が亡くなり、11万人もの人々が避難生活を余儀なくされたそうです。被災して1ヶ月経過してもトイレもない状態が続き、仮設住宅の建設も間に合っていませんした。クラスター・アプローチという教育や保健医療など支援分野ごとに調整するシステムを活用することで、どの地域でどの団体がどういう支援をしているか理解しながら各団体の調整が進められたそうです。
授業担当の三田教授(左)と学生の質問に答える柴田氏(右)
この講演会を受けて、私は自分の大学卒業後のキャリアについて選択肢が広がったと感じました。それは、柴田氏が国内外で多方面に活動されていることや、支援活動での貴重な経験を話してくださったことに刺激を受けたからです。今回お話いただいた内容は、柴田氏の活動の一部に過ぎないと思いますが、人道支援には多くの種類があり、支援する側と現地のニーズにずれが生じたり、場合によっては押し付けになってしまうことがあるといった注意点も理解できました。そして、自分が学生という立場で十分に学べる環境にあることと、将来にはまだ多くの選択肢があることに気付かされました。挑戦するときには、良い結果や成果、大きな感動を求めてしまいがちですが、「興味が変わってもいい」「違うと感じてもいい」と柴田氏が助言してくださったことで、チャレンジすることに前向きになれる力をいただいた講演でした。
PAGE TOP