【経営学部】教科書の著者との出会い。森口ゼミで関西学院大学 吉村 典久教授が特別講義
2024.07.30
経営学部 森口 文博助教が担当する「演習1」では、経営戦略とアントレプレナーシップをテーマとした学びを深めています。2024年度は関西学院大学経営戦略研究科の吉村 典久教授が編著された「新しいビジネスをつくる」(中央経済社)を指定図書として、輪読を実施してきました。そして、授業の最終日、この書籍の著者である吉村教授をゲストとして迎え、対話型の講義が実施されました。本の著者との出会いを通じて、学生は何を学び感じたのか。その様子をレポートします。
社会課題(困りごと)の解決を通じたビジネスを
まず、経営戦略論の歴史を振り返りながら、近年の経営戦略論の特徴であるCSV(Creating Shared Value)の考え方の説明がありました。CSVとは、企業が社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるアプローチであり、社会的な価値と経済的な価値の両立を目指す考え方です。社会課題、すなわち社会の困りごとの解決を民間企業が担うようなケースが増えており、本来は国がその解決を担ってきたことから、社会課題には大きな市場とビジネスチャンスがあることを、GoogleやAmazonの事例を用いて説明されました。世界の国々のGDPとこうしたGoogleやAmazonの時価総額を比較し、1つの企業が1国のGDPを上回っているという事実に、学生は驚いた様子でした。また、これらの説明を背景に、前期の輪読で学んできたakippa(駐車場シェアリングサービス)が行ってきた社会課題の解決に関する事例の解説がありました。
さらには、社会の困りごとの解決の事例として、日清食品がアフリカで展開しているカップヌードルの事例や三洋電機による全自動の洗濯機の開発事例の紹介があり、学生はメモを取りながら聞き入っていました。
社会課題(困りごと)の解決手段を小学校の4科目で考える
次に、社会の困りごとを解決する手段として、リクルート石川明氏による国算理社メソッド(※1)を用いて分析する方法について説明がありました。吉村教授は、akippaの事例をこのメソッドに当てはめて解説をされました。akippa株式会社では、社内の壁にメンバー全員で世の中にある困りごとを大なり小なり200個書き出すこと(国語)からスタートし、その中の一つに「コインパーキングは現地に行かないと空いているか分からない」という書き込みからヒントを得て、一般家庭の空き駐車場や空地を活用した一時貸しサービスakippaの創出につながったと解説がありました。
※1:出所:2022年7月11日 日経産業新聞001ページ「新規事業 私に任せて」
小学校での4科目を用いて社会の困りごとの解決策を提案する手法。国語では「不足・不便・不快・不都合」といった、誰がどのような「不」をかかえているのかを言語化することからスタートし、算数ではその「不」の大きさを数値化すること、理科では「不」が起きた原因をつきとめること、社会ではなぜ「不」が解消されないのかを分析する方法である。
経営・経営戦略の本質
さらには、経営学の「経」の字から、その由来が「お経」にあるという話や、戦略とは、「戦」という字から競争をイメージしますが、いかに戦いを「略」するかが本質であるとの説明に、森口ゼミ生は驚いた表情を見せていました。
あっという間の90分間で、輪読を行ってきた書籍の著者から直接学びを得ることを通じて、森口ゼミ生は次の学びに向けた刺激を受けた様子でした。秋学期はアントレプレナーシップに関する輪読や社会連携活動を行う予定です。
森口ゼミ生からの感想
- 世の中の情勢は変わるということを聞き、その時代に求められている事業を行い、世の中の困りごとを解決していくことが経営学部生である私たちの使命であると感じました。
- 吉村先生の話がとてもうまく、ついつい聞き入ってしまいました。 知識も豊富で授業などでは得られない話も聞くことができ、大変充実度の高い講義でした。
吉村 典久 教授のプロフィール
テレビ和歌山・「6wakaイブニング」木曜日隔週コメンテーター
専門:経営学、企業統治論、経営戦略論
主要著書に『1からの経営学』『新しいビジネスをつくる』などがある。