【理学部】物理科学科 内田和之教授が多重折りたたみグラフェンについての理論物理学の研究成果を物理学専攻の修了生と共著論文にて発表

2023.07.10

研究成果

理学部 物理科学科 内田 和之 教授が、多重折りたたみグラフェンについての理論計算の研究成果を日本物理学会の英文学術雑誌Journal of the Physical Society of Japanに共著論文として発表しました。共著者は、2023年3月に本学理学研究科物理学専攻を修了した清水 泰斗さんと神原 大輝さんです。

掲載論文

著者:Taito Shimizu, Daiki Kamihara, Kazuyuki Uchida
題目:
Atomic Structures of Multiply-Folded Graphene Layers on Flat Substrates
掲載誌:
Journal of the Physical Society of Japan, 92, 074602 (2023)
DOI:10.7566/JPSJ.92.074602
URL:Journal of the Physical Society of Japan

背景

紙や布のような層状の物質は、あまり伸び縮みはしませんが、やわらかいために折りたたむことができ、多種多様なかたちを作ることができます。原子スケールの物質でも薄い膜状物質を作ることができれば、それを折りたたんだ構造体を作ることができ、折りたたむ前にはなかった性質を持たせることができます。今回の研究で着目するグラフェンは、原子1個分の厚みしか持たない究極の薄さの層状物質です。グラフェンを折りたたむことによって、様々な役立つ性質を引き出すことができるものと期待されます。

研究概要

実験手法の進歩によって、ナノスケールのグラフェン1枚を狙った箇所で狙った方向へ折りたたむことが可能になってきましたが、その原子構造の詳細についてはまだよく知られていませんでした。本研究は、平坦な基板上に載せられたグラフェンを多重に折りたたんだ場合にどういった形状のものが実現するのかという問いの下、ナノスケールの原子構造を理論計算の方法で明らかにしました。 図は安定構造の一つを図示したもので、4重折りたたみ構造を示しています。
図:4重折りたたみの場合の安定構造の1つ

用語

グラフェン
炭素原子だけでできたナノスケールのシート状物質。グラフェン製法に関する先駆的な研究が2010年ノーベル物理学賞を受賞したように画期的な物質です。純粋な基礎物性の興味として面白い性質をもつだけでなく、さまざまな応用が期待される機能性素材でもあります。

参考

PAGE TOP