【理学部】物理科学科 岩下准教授が超安定なガラスを実現する新規な手法に関する学術論文を出版
2023.07.07
研究成果
理学部 物理科学科 岩下 靖孝 准教授らは、主に分子動力学法を用いた数値シミュレーションにより、random bondingと名付けた新たなアプローチが高度に安定化されたガラス状態を実現することを明らかにしました。この研究成果は学術誌Nature Communicationsの論文として掲載されました。
掲載論文
著者:Misaki Ozawa, Yasutaka Iwashita, Walter Kob & Francesco Zamponi
題目:Creating bulk ultrastable glasses by random particle bonding
掲載誌:Nature Communications 14:113 (2023)
DOI:10.1038/s41467-023-35812-w
URL:https://www.nature.com/articles/s41467-023-35812-w
研究概要
物質科学の観点では、ガラスとは窓ガラスのような特定の物質を指すのではなく、分子の構造が液体の状態のままで固まってしまった状態を指します。身の回りでも窓ガラスやワイングラス、高分子のガラスであるプラスチックが活用されているように、材料として結晶化による固体とは異なる様々な長所を持っていますが、「そもそもなぜ結晶化せずにガラス化する(ことがある)のか?」という根本的な疑問は、現代物理学の大きな未解明問題として残されています。そこで重要となるのが、ガラスは分子のエネルギーが最小にならずに固まってしまった非平衡状態であるという点です。そこで、よりエネルギーが最小に近い(=超安定な)ガラス状態を実現すれば、ガラス状態の本質とは何かという疑問に理論的に迫ることができ、更には材料としても硬さ、化学的安定性などの優れたガラスになることが期待されます。
これまでに、実験では薄膜のガラスを超安定化する手法、シミュレーションではランダムに選んだ分子(粒子)を空間に固定するrandom pinning法で超安定なガラスを実現できることが知られていますが、どちらも3次元的な系(物質)に適用することは困難です。そこで本研究では、筆頭著者の尾澤を中心として分子動力学法を用いた数値シミュレーションに取り組み、ガラス化の過程においてランダムに選んだ隣り合う2粒子を結合するrandom bonding法により、超安定なガラス状態が形成されることを実証しました。更に岩下を中心に微粒子を用いた実験を行い、random bonding法が実験系にも適用可能であることを示しました。
これまでに、実験では薄膜のガラスを超安定化する手法、シミュレーションではランダムに選んだ分子(粒子)を空間に固定するrandom pinning法で超安定なガラスを実現できることが知られていますが、どちらも3次元的な系(物質)に適用することは困難です。そこで本研究では、筆頭著者の尾澤を中心として分子動力学法を用いた数値シミュレーションに取り組み、ガラス化の過程においてランダムに選んだ隣り合う2粒子を結合するrandom bonding法により、超安定なガラス状態が形成されることを実証しました。更に岩下を中心に微粒子を用いた実験を行い、random bonding法が実験系にも適用可能であることを示しました。

参考
- 京都産業大学 教員紹介ページ:岩下 靖孝 准教授