【理学部】物理科学科 齊藤准教授が京都大学と大阪大学との共同研究で「摩擦のある粉体の状態密度と剛性率に関する学術論文」を出版

2023.05.16

研究成果

京都大学の井嶋大輔氏を中心に、理学部物理科学科の齊藤准教授らは摩擦のある粉体の状態密度と剛性率に関する研究を行い、ダイナミカル・マトリックスの固有値と固有ベクトルを使って線型応答領域の剛性率と定常せん断下における応力の変化を予測することに成功しました。これらの研究成果はいずれも学術誌Physical Review Eの論文として掲載されました。

掲載論文

著者:Daisuke Ishima, Kuniyasu Saitoh, Michio Otsuki, and Hisao Hayakawa
題目:
Eigenvalue analysis of stress-strain curve of two-dimensional amorphous solids of dispersed frictional grains with finite shear strain
掲載誌:
Phys. Rev. E 107, 034904 (2023)
DOI: 10.1103/PhysRevE.107.034904
URL: https://doi.org/10.1103/PhysRevE.107.034904

著者:Daisuke Ishima, Kuniyasu Saitoh, Michio Otsuki, and Hisao Hayakawa
題目:
Theory of rigidity and numerical analysis of density of states of two-dimensional amorphous solids with dispersed frictional grains in the linear response regime
掲載誌:
Phys. Rev. E 107, 054902 (2023)
DOI: 10.1103/PhysRevE.107.054902
URL: https://doi.org/10.1103/PhysRevE.107.054902

研究概要

粉体など巨視的な粒子から成る物質に変形を加えたとき、力学的にどのような応答を示すかを知ることは応用上極めて重要です。特に、接触する粒子と粒子の間に働く摩擦力が系の力学的な応答に果たす役割は大きく、摩擦力の効果を明らかにすることが最優先課題の一つです。
そこで、本研究では粒子間に接線力(摩擦力)が働く粒子系にせん断変形を加えたとき、どのような応答を示すかを分子動力学シミュレーションによって調べました。まず、擬二次元的に配置した球形粒子を想定し、粒子間に接線方向の弾性力を導入します。
但し、各粒子が平衡位置の周りで微小振動する場合を調べるため、クーロン摩擦など塑性的な変形は考慮しません。
これにより、各粒子の回転自由度を加えたダイナミカル・マトリックスを計算することができ、微小なせん断変形に対する粒子系の剛性率の表式が得られます。剛性率の表式はダイナミカル・マトリックスの固有値と固有ベクトルを含んでおり、ダイナミカル・マトリックスの各要素は粒子の平衡位置を与えて初めて決定されます。
従って、分子動力学シミュレーションで求めた粒子位置を使ってダイナミカル・マトリックスの各要素を計算し、数値的に固有値と固有ベクトルを求めることで剛性率を計算しました。計算した剛性率は分子動力学シミュレーションで直接求めた剛性率とほぼ100%一致しており、数値データのインプットが必要ではあるものの、摩擦のある粒子系の剛性率を理論的に予測することに成功しました。さらに、定常せん断下における粒子系の応力変化についても同様の解析を行い、急激な応力降下(アバランチ)が起きる場合を除き、分子動力学シミュレーションの結果をほぼ100%説明することに成功しました。

参考

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