【国際関係学部】デロイトの山田航介氏を招いた講演会が開催され、近年注目されている生成AIの未来について学びました!
2023.11.29

11月14日(火)3時限目、国際関係学部「国際ビジネス論II」(担当:植原 行洋教授)の授業の一環として、「生成AIの未来」が開催されました。デロイトの山田 航介氏にお越しいただき、Chat GPTに代表される生成AIの未来についてご講演していただきました。
(国際関係学部3年次 俵 隆之亮)
授業では、はじめに山田氏と植原教授が選定した4つのレポートについて学生から発表があり、学生と両氏との間で意見交換が行われました。発表の新サービスは「歌声採点」「会議の生産性向上」「日本食」「医療」でした。

最初の学生のアイデアは、「生成AIの技術を用いることで従来の採点機能のみならず、修正点を一箇所ずつ指摘するボイストレーナー的な機能や、本人に合う音域の曲紹介などのサービスを提供できるのではないか。カラオケ文化が根付くアジア太平洋地域に潜在市場があるのではないか」というものでした。山田氏と植原教授からは、「カラオケとは日本独自の文化であり、高い技術や知見を持っている日本企業もいるため、こういった生成AIサービスが実現できると面白い」という意見でした。
次は、「音声認識や言語処理などを生成AIは得意であるため、会議のファシリテーターのような役割を生成AIが人間代わりに担うことができるのではないか。議事録等の未だ人間の手によって行われている業務を生成AIが自動作成することや、会議の中で出た意見をAIが自動的に分析し、新たなアイデア創出することができるようになると会議の生産性を高めることができるのではないか」というアイデアでした。また、教育現場での応用についても提案がありました。「グループで議論を行う機会が増加傾向にある。そこで生成AIの技術を用いて学生の発言数などを含め参加度を可視化できれば、教員からのサポートも得られやすくなり、また教員の負担軽減にもつながるのではないか」というアイデアで、山田氏や植原教授からは、「ビジネスの現場では、生産性の低い会議が多くなりがちになるため、生成AIによる中立的かつ優れたファシリテーターや自動議事録が導入されれば、会議の生産性を高めるであろう。このような技術に対するニーズは間違いなくあるだろう」という意見でした。

続き、「生成AIの技術を活用し、日本食のレシピ作成やパーソナライゼーション、料理のアシスタントなどを含むアプリを開発することで、より質の高い日本食サービスを世界に提供できるのではないか。近年、海外での日本食への関心が高まっており、自宅でも日本食を楽しみたい人が多いのではないかと考え、需要は大いにあるのではないか」というアイデアが紹介されました。
最後のアイデアは、「医療従事者の過重労働が問題になっており、生成AIを活用することで軽減できないだろうか。具体的には、患者自身が自宅からパソコン・スマホなどで生成AIツールに病状を相談し、病名や病状などの詳しい説明が可能になれば本当に治療が必要な患者のみの通院となり、医療現場の負担軽減に繋がるのではないか」というアイデアでした。
山田氏と植原教授は両アイデアに対して高い評価はしつつも、「他の企業をいかに巻き込んでいくか、誰がメインのサービス提供企業になるのか、医療診断は信頼性確保が重要でありどう担保するのか」という指摘もありました。

授業の後半は、山田氏より、生成AIの現状と未来についてお話ししていただきました。山田氏は、「生成AIは競争のルールを変えるゲームチェンジャー」と表現されていました。生成AIを活用することで、プロセスの効率化やサービスの向上などを実現することができ、企業の生産性が高まります。また、知識集約型のコンテンツを生成するためのコストを大幅に削減する可能性を秘めていることや、新しいアイデアや創造の価値をより速く、より質の高いものにする可能性があるとし、ゲームチェンジャーの潮流に乗り遅れるな、と学生に投げかけました。世界の生成AI市場は2025年には6.4兆ドルまで増加すると考えられており、先行した企業がより多くの果実を獲得し成長する(Winners Takes All)としました。
一方で生成AIには未だ課題が多く残っている現状を紹介してくれました。例えば、フェイクコンテンツの生成やデータの権利問題、最終判断の責任問題などです。生成AIは一見すると革新的な技術ですが、時には人間の手では制御できない場合もあるため依存しすぎないことが重要です。そのため、「AI活用の課題」を踏まえたAIリスク対策、すなわちAIガバナンス実施の機運が高まっています。ただし、過剰な規制や、実験・失敗を叩きすぎることは日本全体にとってもイノベーションの進度を遅くさせてしまうため、注意が必要だとしました。

学生の発表・意見交換から始まり山田氏の講演に終わった講演会は、終始学生が真剣に聴講する姿が印象的でした。山田氏と植原教授は早稲田大学ビジネススクールで同級生だったそうで終始笑顔が溢れる雰囲気の中執り行われました。
生成AIは私たちの身近なものとなり、うまく活用すれば素晴らしい技術です。しかし、時には人間の手では制御しきれない可能性もあります。講義を通して生成AIへの理解を深めることができ、非常に有意義な時間でした。