【国際関係学部】広島県平和推進プロジェクト・チーム 西澤氏が広島県の核廃絶や平和推進の取り組みについて講演
10月26日(木)5時限目、国際関係学部「平和構築論Ⅱ」(担当:クロス京子教授)の授業に、広島県平和推進プロジェクト・チームの西澤真理子国際連携担当監をゲストスピーカーとしてお招きしました。西澤氏には「平和構築における広島県の取組み~県庁職員として目指すもの~」と題して、広島県の核廃絶や平和推進の取り組み、平和行政に携わるご自身の経験、今後の展望についてお話しいただきました。
(学生ライター 国際関係学部3年次 米田 幸輝)
西澤氏は広島県庁初の国際職として入庁され、入庁と同時に立ち上がった「放射線被曝者医療国際協力推進協力会議(HICARE)」で国際医療協力に携わられました。その後県が実施する環境、教育、ガバナンス等、多様な国際協力・復興支援事業に従事され、現在は湯崎知事が設置した平和推進プロジェクト・チームに在籍されています。ご講演は3部構成になっており、第1部では広島県の平和行政について、第2部はG7サミット開催の経緯や意義について、第3部では今後の広島県の取り組みについてお話しいただきました。
授業冒頭講師の紹介を行うクロス教授(左)と、西澤氏(右)
第1部では、広島の平和行政の始まりと変化についてお話しいただきました。1945年8月6日の原爆投下によって廃墟となった広島は、戦後復興を進める過程で、平和行政を新しいアイデンティティとして獲得していったそうです。平和祈念式典に代表される「祈る平和」から、被爆者医療の経験を世界の被曝者医療に生かすなど、「創り出す平和」へと、広島の国際貢献のあり方が模索されるようになりました。UNITAR(ユニタール)やJICAと協力しながら、カンボジアやミンダナオなど、紛争終結地域などへの人材育成支援事業が実施されました。現在の知事である湯崎知事のもとでは、「国際平和拠点ひろしま構想」が打ち出され、「平和創造機構ひろしま(HOPe)」が設立されました。核兵器のない世界を目指し、人道性・安全保障・持続可能性の3つのアプローチを通した取り組みが進められているそうです。平和推進プロジェクト・チームの取り組みとして、オバマ元米大統領やフランシスコ教皇などの各界リーダーの広島訪問促進や、高校生など次世代人材育成などの活動についてもお話ししていただきました。国際関係学部では世界各地の紛争解決の取り組みを学ぶことは多いですが、自治体の現場での取組みやノウハウを伝える活動を教えていただけた貴重な機会でした。
第2部では、2023年5月に広島で開催されたG7サミットに対する広島県の取り組みについてお話しいただきました。この広島サミットは3年間の誘致活動の末に実現したそうです。広島県では、G7広島サミットに合わせて、さまざまな関連イベントが実施されました。G7サミットの評価は広島では割れているそうです。核兵器国を含むG7の首脳が初めて被爆地を訪れ、平和祈念資料館を訪れるなど、被曝の実相に触れた意義は大きいという意見がある一方で、被爆者たちが推進してきた核兵器禁止条約に全く触れられないなど、今回のサミットは失敗だったという意見もあるそうです。ゼレンスキー大統領は現在のウクライナと広島を重ね合わせ、平和への希望を膨らませました。G7後は、以前よりも資料館を訪れる外国人観光客が増えたそうです。広島県などの核兵器廃絶を訴える活動により、核兵器の恐ろしさと危険を認識する人が増加したことは大変意義があることだと思いました。
西澤真理子氏による講演の様子
第3部では、持続可能な未来に向けてお話しをいただきました。「へいわ創造機構ひろしま」を中心に、ポストSDGs目標として、真に持続可能な世界に向けて、核兵器の廃絶を訴える取り組みが進行中であることを伺いました。地球温暖化やグローバルヘルス、食糧問題同様に、既存の脅威として核兵器の存在を位置付け、持続不可能な社会のために、脱炭素・脱分断そして脱核兵器が需要であると学びました。
ご講演の最後には学生から質問を受けていただきました。「G7に関して広島の一部の人々は開催に反対していたが、核保有国にメッセージは伝わったのか。パフォーマンスではないのか」という質問に対し、西澤氏は首脳たちに被爆証言をした小倉 桂子さんが「伝わったと思う」というのを聞いたこと、またカナダのトルドー首相が滞在最終日に再度資料館を訪れたから、「実際に資料館の中に入っていないので見たわけではないが、伝わったと感じる」と答えられました。
西澤氏は、これから社会に出ていく私たちへのメッセージとして、好きなことを仕事にすること、また続けることの大切さを挙げてくださいました。核兵器の廃絶も含め、気候変動など地球規模のイシューが山積しています。政府だけでなく、被爆国の人間として何ができるか考え、行動に移していく必要性を感じました。政府ではない、地方自治体である広島県の核廃絶と平和促進のための取り組みを伺い、私たちも問題に立ち向かうインセンティブが高まりました。
学生からの質問の様子