【国際関係学部】JICA職員を招き「研究論文執筆、将来のキャリア形成」について学びました!
2023.10.16
10月10日(火)4時限目、国際関係学部の「研究演習Ⅱ」(担当:井口 正彦准教授)の授業で、ゲストスピーカーとして、JICA(独立行政法人 国際協力機構)緒方 貞子平和開発研究所リサーチオフィサーの槌谷 恒孝氏を本学にお招きし、以前勤務されていたUNDP(国連開発計画)や海外青年協力隊におけるご自身の経験をもとに、国際協力や国際平和構築、途上国などにおける人道支援の在り方についてお話しいただきました。また授業内で、現在井口ゼミに所属している3年次生が一人一人独自に設定した研究テーマを発表し、そのテーマに関連した学生が抱える疑問に対して、さまざまな成功・失敗事例などを用いながら詳しく的確なアドバイスをいただくことができ、個人の研究において新しい視点やアプローチの手法を得ることができる貴重な機会となりました。
(学生ライター 国際関係学部 4年次 池田 遼真)
今回、学生からは多種多様な分野に関連する質問が行われ、「グローバル・コモンズでもある途上国における森林伐採保護は、どの程度、途上国の経済成長の可能性を奪ってしまう行為となってしまうのか」、「先進国は果たして途上国が真に必要とする国際援助を果たせているのか」といった、槌谷さん自身がUNDPイエメンオフィスで勤務され、途上国で実際に感じてこられた肌感覚を生かした意見をいただくことが出来るような質問から、「途上国で勤務した際に、直面した困難はなにか」といったキャリアに関する質問もありました。
この質問に対して槌谷さんは、ご自身が実際にその問題を解決するために取り組んでこられたプロジェクトの概要や結果、現地での生活を通して目で見て肌で感じてきたご経験をもとに、とても親身になって答えていただき、質問した学生は槌谷さんの貴重な回答を一言一句聞き逃すまいと熱心にメモを取っていた姿が非常に印象的でした。
個人的には、槌谷さんが学生への回答の中でご紹介されていたUNDPで実際に行われたプロジェクトの一つが非常に印象に残りました。そのプロジェクトとは、単に援助をして終わるのではなく、現地の人のエンパワメントをいかに高めていくか、という観点からの支援です。これは、貧困に苦しむ方々が本当に必要な支援を実現するかという観点にもつながります。具体的には、UNDPから不安定な生活を行う人々自身の街のインフラ整備を依頼し、その労働に対して日当を支払うというものです。しかし、これだけでは一時的な雇用を生み出すのみの仕組みとなってしまい、彼ら自身で経済や産業を発展させ循環させていくまでには至りません。そこでUNDPが取り組んだのは、例えば10ドルの賃金に対して、5ドル自分自身の生活などに、残り5ドルは将来の為に貯金をしておくように提案することです。そうすることによって職や収入の創出、インフラ改善が行われるだけでなく、貯金したお金を持ち寄って数人でグループを作り新たなビジネスへの挑戦を行い、そこに対してUNDPも全力で支援をし、自分たちで稼げるシステムを作り出す事が出来る可能性が高まるという仕組みのものです。これを槌谷さんは「Cash for Work(仕事の為のお金)」としてUNDPで取り組みとして進めていたそうで、この仕組みを聞いた学生は大きくうなずきながら、仕組みの狙いや目指すべき支援の形について学びが深まっていく実感を得ながら、お話に引き込まれていました。
今回の取材を通じて、それぞれの国に価値観があり基準も尺度もバラバラな中で、開発援助や平和構築、途上国に対して適切な人道的支援を行っていく中で重要なのは、やはり現場の目線に立って考えて見るという事だと感じました。たとえ先進国の善意100%で生み出された支援があったとしても、それが貧困に苦しむ方々にとっての100%幸福を感じられるものではなく、むしろ必要のないものとなってしまう恐れも秘めているのです。学生として国際関係を深く学んでいく上で、実務経験者の体験談を聞くことで見えてくる真実がどれだけ貴重なものかに気付くことが出来た非常に有意義な時間となりました。
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