【国際関係学部】JICA職員を招いた講演会を開催、国際協力事業と実務の実際について学びました!

2023.08.07

7月10日(月)3時限目、国際関係学部「国際協力実務論Ⅰ」(担当:三田貴教授)の授業の一環として、公開講座「地球規模課題の解決に向けた国際協力—ネイチャーポジティブに向けてー」が開催されました。独立行政法人国際協力機構(JICA)の田中 祐太郎氏にお越しいただき、JICAの仕事内容についてご講演いただきました。

(学生ライター 国際関係学部4年次 佐藤 美宇)


田中氏は大学院時代に地球環境学を専門とされておりました。「人と自然が共存できる持続可能な社会の実現に貢献したい」との思いからJICAに入構し、現在は「ガバナンス・平和構築部計画・課題戦略推進課」に在籍されています。ブラジルでの駐在経験もあり、講演では実務で行われるプロジェクトの立案の考え方についても教えていただきました。
授業冒頭講師の紹介を行う三田教授(左)と、田中氏(右)
授業冒頭では、JICAが行う国際協力について説明がありました。田中氏から「JICAと聞いて連想するものを2つ書いてください」という質問が投げられ、受講生はStormboard(オンライン付箋ツール)上に各人が考える答えを共有しました。学生の回答を見た後、田中氏はJICAの仕事を「ODA(政府開発援助)による開発途上国の国創り」と表現され、ご自身の職務を「開発途上国の課題解決のプロデューサー」だと話されました。JICAの協力事業は、技術協力(人を通して日本の制度や技術を伝える協力)、資金協力、民間連携(民間のリソースを活用した協力)など6種類の協力方法があります。相手国側から農業や都市開発などの課題解決の要請を受けた後、JICAはこれまでのノウハウを活かしオーダーメイドで解決策を提案します。JICA職員は、解決を要する課題を必要なタイミングで、相手国側の合意を得ながら戦略を策定し、コンサルタントや民間企業、専門機関などさまざまなアクターと連携して案件をプロデュースしていると教えていただきました。
授業の様子
授業中盤には、学生自身が「自分がJICA職員だったらネイチャーポジティブに対してどのような支援を行うか」を考えました。ネイチャーポジティブとは、2030年までに生物多様性の損失を減らして生態系を回復させることを意味します。今回は、アマゾン熱帯雨林の消滅を事例に問題分析のコツについても教えていただきました。
問題分析をするステップとして、「問題を具体化する」→「現場の人の声を聞き取り調査する」→「統計情報で事実確認をする」と段階的に行うことの大切さを教えていただきました。アマゾン熱帯雨林の場合、1984年と2020年の衛星画像を比較すると熱帯雨林が茶色に変化していることが分かりました。画像を拡大すると、農地拡大が要因であることが読み取れました。現地調査では、田中氏がブラジル駐在していた時の写真を見せていただくことで、農地開拓のための焼き入れや大豆農地の実情を知ることができました。統計情報では、ブラジルの農産物生産量を見ることで、世界最大規模の農業大国としてのブラジルを客観的に評価することができました。
問題分析でブラジルの農地開発が真の課題と明らかになった後、JICA職員として具体的な事業にどのように落とし込んでいくかを教えていただきました。課題解決のためには、更なる問題分析を通して原因を細分化し、事業を実施する際に誰にどのようなメリットがあるのかをストーリーとして考えることがプロジェクト実施までの一連の流れだそうです。「フレームワークはスマートでクールだが、現場で物事を進める際には現地で駆け回り人を巻き込む必要がある。」と経験者ならではの言葉が印象的でした。
最後に、田中氏自身が国際協力を行う上で心がけていることをマインド面とスキル面に分けて教えていただきました。マインド面のアドバイスの一つで、「自分の常識は世界の常識ではない。個人が持っている常識を否定せずに共感しながら物事を考える」と仰っていたことが印象的でした。多様な価値観を受け入れることが他者との協働を行うことに繋がると解説していただきました。スキル面では、問題の構造化や専門知識の深掘りが大切だと話されていました。
学生からの質問の様子
実務家として活躍されている方のお話は、非常に興味深く勉強になりました。受講生からの質問ではJICAの勤務地や大学時代に受講すると良い科目などが見受けられ、このお話を機に国際協力を仕事にしたいと思った学生が増えたのではないかと思います。
私にとっては、問題分析のステップと利害関係者を考慮することについて教えていただけたことが、一番大きな学びの収穫でした。問題を具体化する場面では自ら仮説を立て、その後のステップでは事実確認をしているとのことでした。今後どのような仕事を選んだとしても、自分で考えて関係者の話を聞いたり資料で確認したりすることは、仕事の成果や現状を高めるために、有効かつ社会人として必要なスキルだと思いました。
また、課題解決に向けて利害関係者を整理するお話を聞いて、以前受講していた国際協力実務論Ⅱでプロジェクト策定に向けて利害関係者を分析するグループワークを行ったことを思い出しました。授業で学んだことが実際の仕事で使われていることを知り、田中氏が仰っていた「大学は専門知識を深めるために重要な場所」という言葉が心にしみました。卒業までの残り半年間で、自分の学びをさらに深めたいと大きな刺激を受けました。
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