【国際関係学部】国際貿易論Ⅱ「フェアトレードにおける生産者と消費者のつながり」をテーマに講演会が開催!

2023.01.17

2022年12月23日、国際関係学部の国際貿易論Ⅱ(担当:横山教授)では、有限会社シサム工房から人見とも子氏をゲスト講師としてお招きし、フェアトレードにおける生産者と消費者のつながりについての学内公開授業が行われました。実際にフェアトレードに携わっておられる方からの現場のリアルな視点を学ぶことができる、国際関係学部らしい特色ある授業でした。

(学生ライター 国際関係学部4年次 渡辺 美琴)

人見氏の講演の様子

今回のゲスト講師である人見氏が取締役を務める有限会社シサム工房では、アパレルやコーヒーなどを中心にフェアトレード商品の企画・海外現地での生産・日本への輸入、京阪神や東京での実店舗およびオンラインでの販売を展開しています。

授業のはじめに、人見氏は、学生たちに「今、服を着ている人?」と尋ねました。もちろん全員が手を挙げましたが、次の質問で、「どこの誰が作った服かわかる人?」と尋ねたのに対して、どこの誰が作った服かまでわかって服を着ている人は多くはありませんでした。学生たちが自分の着ている服のタグに付いている生産国を確認してみると、made in 「China」「Korea」「Indonesia」「India」など、日本以外で生産されたものでした。人見氏のお話しによると、日本国内で販売されている衣類の98.2%が輸入品で、日本製であっても原料をたどると海外から来たものがほとんどです。つまり、日本のほぼ100%の衣類は輸入で成り立っているということになります。「誰が作ったか知らなくても、私たちは洋服を通して世界とつながっているんです」と人見氏は話されました。

そして、今のアパレル産業が抱える問題を表す2つの事例を紹介してくださいました。

アパレル産業が抱える問題の事例を紹介する様子

第一に、ファストファッションが作り出す劣悪な労働環境の事例です。2013年にバングラデシュのダッカ近郊の町で多くの縫製工場が入居していた雑居ビルが崩壊した「ラナ・プラザ事件」です。もともと非常に狭く構造が弱い建物を違法に増築し、労働者から安全面に関して強い要請があったにも関わらず、ビルの所有・経営者は全く対応しなかった上に、要望を訴える者には解雇を突きつけました。地方から働きに来ている貧しい労働者たちは反対もできず、結果的に突然の崩壊事故となり多くの人が犠牲になったのです。ファストファッションは製造原価の切り下げによる利益の追求が目的となってしまうために、低賃金だけでなく労働環境も劣悪なまま放置され、労働者の権利が蔑ろにされてしまいがちです。

第二に、児童労働や低賃金労働の問題です。世界全体では途上国を中心に(一部では先進国も含めて)子ども(5~17歳)の10人に1人がさまざまな産業の現場で働かされている現状があるということです。コットン(綿花)の栽培が世界一盛んなインドのコットン農場では、幼い子ども(特に女児)が学校に行けずに働いている現状があるといいます。児童労働の要因は、貧困や親の賃金の低さ、子どもの就学率の低さが挙げられます。また、ムンバイのような都市部でも、大きな所得格差を背景に、貧困層の狭く劣悪な住居が密集するスラム街が今でも多く存在し、そのような地域では家庭の所得が非常に低い上、子どもの就学率も低い状態です。

講演の様子

シサム工房では、このような状況への取り組みとして、ムンバイのスラム街で衣類の縫製工場を営むNPOをパートナーとして、日本で販売する衣類の縫製を発注し、十分な報酬を支払っています。教育を十分に受けることができず、職に就くことも難しい女性に無料で縫製の訓練を提供し、ミシン一つで収入を得ることが可能になるよう技術サポートをしています。

このような低賃金労働・児童労働や危険な現場での労働が生じていることの原因としては、私たち消費者が、ファストファッション・メーカーによる衣類を安さだけを重視して大量に購入すること、そしてそれを気安く廃棄もしていることが挙げられます。そして、その行動に至る背景として、私たち消費者が、生産国やそこでの作り手のことにあまり関心を持たないことや、一般的なビジネスでは製品がどこでどうやって作られたのか透明性がないことも関係しています。利益の追求だけが目的となる生産・消費の構造になってしまうと、コストを下げるために生産者が搾取されてしまうという構造があるのです。

人見氏は、「フェアトレードは、お買い物が途上国に暮らす人たちの自立を支援する仕組みでもあります。お金の行く末を意識して、投票のようにお金の使い道を選択する人が増えれば社会は変わります」ということを強調されていました。さらに、「社会全体でSDGsへの関心が広がっていくにつれて、大手企業のビジネス現場でも持続可能な社会への配慮が重視される変化が現れていく様子が見えてきています」とも話されました。

学び多き講演でした
今回の公開授業を通して、私たちは、消費者としての行動・選択にあたって、その先で与えるインパクトを考えた消費を意識することや、社会や企業に対して「知りたい!」と声をあげることで、企業が取り組みを変え、公正な貿易の流れが構築され、それが生産国の労働環境を変えていくことにもつながるのだということを学べました。

国際関係学部の授業では、外交、ビジネス、国際協力の現場で活躍する実務家を招き、世界の最前線の知識や実情を学びます。
他にもさまざまなゲストスピーカーによる講演会を開催しています!

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