【現代社会学部】第5回「現代社会学研究会」を実施しました!

2023.12.06

日時:2023年11月29日(15:00~16:30)
会場:サギタリウス館S508教室(オンライン併用)

第5回現代社会学部研究会では、研究報告の他、データ社会をテーマにフリーディスカッションも実施しました。本学部教員の他、大学院生1人、本学URA2人等を含む、18人の参加があり、活発なディスカッションとなりました。今回の研究報告は次のテーマで現代社会学部現代社会学科の金光 淳教授が行いましたので紹介します。

研究報告:「記憶社会学へのネットワーク・アプローチ:豊島の現代アート作品が想起するもの」(金光 淳教授)

現代アートへの造詣の深い金光教授は、2016年以降、現代アートのフェスティバルである「瀬戸内国際芸術祭」に焦点をあて、瀬戸内海の島々(小豆島、豊島など)における観光社会学調査を展開してきました。2016年のフィールド調査では、豊島は小豆島よりも現代アートが地域イメージの形成に寄与していること、なかでも地元の人達には、アート作品や豊島美術館が「産業廃棄物の問題」を連想させていることを明らかにしました。
フィールド調査を実施する前、金光教授は豊島における産業廃棄物の不法投棄問題、いわゆる「豊島事件」をよく知らなかったそうですが、この調査をきっかけに島の現代アート作品と豊島事件や産業廃棄物問題をめぐる負の記憶との関連に、より深く注目するようになったとのことです。
2022年には豊島美術館訪問後の鑑賞者を対象に、豊島美術館から想起するものを聞き取った後、「豊島事件」の説明や関連写真を見せるという介入行為を行いました。その後、再び豊島美術館から想起することを聞き取り、鑑賞者の想起したものの介入前・介入後の2つのネットワーク図を描き、比較しました。その上で、ネットワークの変化をアライダ・アスマンの蓄積的記憶、機能的記憶(過去と現在を接続する集合的な記憶)という記憶のモデルに基づきながら読み解きました。金光教授は、介入によって鑑賞者は、アート作品にストーリーとしての意味付けをし、機能的記憶を再構成したのではないかと結論づけています。
金光教授の報告は、調査の結果のみならず、社会・文化的記憶としての現代アートの意義や、現代アート鑑賞の醍醐味を紹介する興味深いものでした。金光教授は今後、日本人鑑賞者だけでなく、外国人鑑賞者に対しても調査し、さらに研究を発展させるとのことです。

(文責:現代社会学部 藤野 敦子教授)

金光教授の研究報告(サギタリウス館S508教室)
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