【経済学部】地域づくり人特別講義「女子会から生まれた場所づくり」

2023.11.20

経済学部の専門教育科目「地域づくり人特別講義」は、受講生が“地域づくり”について多面的に考察する能力を身に付けることを目的に開講している科目です。地域づくりのキーパーソンを講師として招聘し、その地域が抱える課題、取組みの経緯・苦労・成果など、そして地域づくりの現場から見た日本社会について、それぞれの視点からお話しいただきます。今回の授業では、伊藤弥生公認会計士事務所/クロスオーバーネットワークで代表を務めていらっしゃる伊藤 弥生氏をお招きし、働く女性の支援活動についてお話を伺いました。

(学生ライター 経済学部4年次 木下 真菜)

伊藤弥生公認会計士事務所/クロスオーバーネットワーク 公認会計士・税理士/代表 伊藤 弥生氏
伊藤氏は、大学院在院中に公認会計士試験に合格されました。卒業後は監査法人での監査業務を経て、伊藤弥生公認会計士事務所を開設。代表に就任され、現在も従事されています。また、公認会計士とシステムエンジニアを掛け合わせたデータライズ株式会社を立ち上げられています。さらに、結税理士法人を設立されており、税理士としてもご活躍されています。伊藤氏の現在の主な活動内容は、監査・会計コンサルティング・会計セミナー・税務顧問です。その中で、クロスオーバーネットワークという、働く女性のネットワークづくりにも取り組んでおられます。この活動を立ち上げた理由として、自身の経験があったからと語る伊藤氏。女子会と呼ばれる「女性同士で語る場」では、家事や育児以外にも働く女性ならではの悩みが話題にあがることが多いと言います。もちろん楽しい話題もありますが、それら全てを含んだ、「生き方」そのものの悩みがあること。しかし、それらを容易に相談する場、悩みをぶつけられるところはあるのだろうか。情報交換や悩みを共有することができ、自由に意見交換ができる場をつくることで、働く女性を応援できないか。という思いから発足されました。モットーは、“垣根なく、利害なく、社交辞令なく”。女子会の延長線上から始まったこの活動には、ある約束があります。それは、「絶対に否定しないこと」。悩みも意見も自分で決めるもの。この場は、何かのきっかけづくりの場であって、価値観を押し付ける場ではないのだと語られました。
当初は飲み会のようなものだったそうですが、徐々に活動範囲は広がっていき、勉強会を開くことに。参加者は、業界も世代もバラバラです。内容は、成功者に学ぶものではなく、皆でディスカッションを通して、今をどう生きるべきか、生きるということを考えるものだと伝えられました。勉強会はシリーズ化され、『ほんまもんの女になる道場』や『女性のための次世代リーダー養成塾』、時には『私たちなりのSDGs』などがあります。学校では習えない、ここにしかない社会人の勉強会を随時開催されており、第7回地域再生大賞(2006年度)で優秀賞を受賞されています。講義では、さまざまなシリーズをお話いただきましたが、自分はどんな人間なのか、これからどうしていくか、一瞬一瞬を大切に考える場なのだと感じました。また、クロスオーバーネットワークから派生した、ブルームマネジメントという活動もされています。士業メンバー(公認会計士、税理士、行政書士、弁護士など)によって、起業を志す女性を支援するプロジェクトです。この活動のきっかけも、自身の経験が大きく影響していると語られました。起業するにあたり出てくる数々の問題。経営者として一番大事にしなければならないことは、「売上を上げること」だと言います。この問題に専念できるように、他のことは専門家に頼れるようにと。情報と相談相手が不足しないように、プラットホームになれるよう活動されています。また、この活動の特徴は、全員が個人事業主として開業経験があること、そしてワンストップサービスです。円滑で安全な事業の開始や、持続のためのサポートを充実させることで、幅広い段階の起業家を支援できるようになっています。
ブルームマネジメントWebサイトより
講義の終盤には、将来像についても述べられました。支援する側、される側、共に成長できるように。生き生きと働く女性が増えることを目標に活動していきたい。そして、伝統・観光・文化だけでなく、経済、生活といっても“やはり京都でしょ”と言ってもらえるよう動いていきたいと伝えられました。受講生との質疑応答では、資格勉強におけるモチベーションの維持についての質問がありました。それに対し、伊藤氏は、ご自身が心掛けていらっしゃった3つのポイントを丁寧に教えてくださいました。それは、「目標達成後の未来を思い描くこと」、「週1で必ず休憩を取ること」、そして「飽きないような勉強の仕方をすること」です。これらは、資格勉強だけに限らず、目標達成のために長期間の準備が必要となるような取組みに対しても有効だとのことでした。ほかにも、対象を女性と限定して活動される理由については、“たまたま自分が女性として生まれたから”と答えられました。時代が関係する部分もあったと言いますが、ひとりの人間として仕事をしているのに、「女性だから」という理由で受けた困難や差別は多かったと語る伊藤氏。そんな社会で生きる女性の助けに少しでもなりたい、同性だからこそ話し合えることを気軽に話し合える居場所づくりを意識していると、講義全体を通して伝えられました。
受講生の質問に答える伊藤氏
今回の取材を通して、伊藤氏の「“キラキラ”は絶対に使わない」という言葉が印象に残りました。独立・起業と聞くと、自らにとってプラスなことが起こると想像してしまうことが無きにしも非ず。しかし、全てがうまくいくことなどあり得ません。それゆえ、起業関連の相談を受ける際には、キラキラは使わず、現実を見せて伝えることを決めておられます。講義で語られたお話には、共通点があると感じました。それはどのお話も、キラキラという言葉を使われていないのに、キラキラしていたということです。決して容易ではない事業の数々を成し遂げられている伊藤氏。それらを語られているのに、受け取り側は、内容を容易に理解することができました。それは、わかりやすい話の流れや言葉の使い方、話すタイミングなど、伊藤氏のキラキラした世界観に引き込まれていたからなのではないかと感じました。なにか行動を起こす際に出る、どうしてその行動を起こすことになったのかという考え。また、起こしたことによって得られたプラスやマイナス。聴き手を引きつける話題の展開に、深く感銘を受けました。
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