【経済学部】地域づくり人特別講義「ローカルを掘った先にあるものとは」

2023.03.20

シェアビレッジ株式会社/ハバタク株式会社/プラットフォームサービス株式会社 代表取締役社長 丑田 俊輔氏

経済学部の専門教育科目「地域づくり人特別講義」は、受講生が“地域づくり”について多面的に考察する能力を身に付けることを目的に開講している科目です。地域づくりのキーパーソンを講師として招聘し、その地域が抱える課題、取組みの経緯・苦労・成果など、そして地域づくりの現場から見た日本社会について、それぞれの視点からお話しいただきます。
今回の授業では、シェアビレッジ株式会社/ハバタク株式会社/プラットフォームサービス株式会社で、代表取締役社長を務めていらっしゃる丑田 俊輔氏をお招きし、遊びと学びのまちづくりについてお話を伺いました。
(学生ライター 経済学部4年次 木下 真菜)

丑田氏は、福島県の会津地方で生まれ、東京の下町で育ち、2014年から秋田県五城目町に在住されています。
丑田氏の最初の起業のきっかけは、大学2年生で受けた講義だったそうです。インターンやプロジェクトにも参加し、“巻き込まれ型起業”という形になったと語られました。そうして、2004年に、公共施設を活用して多世代・多地域が繋がり育つ場としたコワーキング・シェアオフィス、ちよだプラットフォームスクウェアの創業期に参画します。会社を起業する上でお金は必要不可欠ですが、その資金を地域のつながりの中から集め、地域に再投資し続けることにされています。そこには、地域とつながって共に事業を育んでいくという思いが込められています。また、日本一周の旅や世界各地を放浪旅した経験から、2010年には教育事業を展開し東京、米国、ベトナムに拠点を置くハバタク株式会社を設立されました。

さまざまな活動の最中で起きた東日本大震災。この出来事が、大きなターニングポイントになったと語られました。自身の生き方や子育ての環境。くらしを自分たちでつくったり、助け合う関係性の重要さを考えるきっかけになったそうです。ビジネスの仕方は、人によって、場所によって違います。丑田氏は秋田に住まいを移し、田舎の暮らしを楽しむ中で生まれてくるアイデアやつながりから、新たなビジネスを立ち上げていきました。その事業のひとつが、五城目町でスタートしたシェアビレッジです。都会と田舎、二項対立を越えた学び合いは、エリアにとらわれることなく、コミュニティの中で資金や維持管理を運営する「新しい村」の取組みです。解体寸前の築139年の茅葺き古民家をコモンズ(共有資源)とした新しいコミュニティから始まったこの事業。現在はコミュニティづくりを支援するプラットフォームとして、国内各地だけでなく世界にも広がっています。ここでは、公でも私でもない、「共(コモンズ)」を持つことでできる繋がりを大切にされています。

くらしの中に、コミュニティ・コモンズをもつこと。くらしの中に、自ら参加し、つくる場所・仲間をもつこと。「あそび」を日常に。これは、丑田氏が活動されている取組みに共通することです。
五城目町には、520年続く朝市があります。朝市は、最近でこそ野菜や魚介類を売る場というイメージがありますが、もともとの市場がそうであったように、多世代が多種多様なモノを提供しても良いのでは?という地元女性達の声がけから、「ごじょうめ朝市plus+」という新しい朝市が生まれました。また、町にある遊休不動産を使って、大人も子どもも没頭できる自由空間をつくれないかと考え、「ただのあそび場」を地域住民とともにDIYしてつくられました。こうした場所には、カフェやパン屋さん、絵本・アート屋さんに酒造屋さんまで、草の根から様々な事業が生まれていきます。小学校でさえも住民参加型でつくられています。誰かが、ふと思った疑問やアイデアを、地域みんなで考えて悩んで、答えをみんなでつくり出す。こうして五城目町はつくられていることを、講義を通して感じました。
受講生に語りかける丑田氏

丑田氏は、受講生からの質問に、“お金を使って回すだけが仕事じゃないんですよ、それはひとつのものさしでしかないんです。”と答えられました。何かをすれば、何かが起きる。それは、対話にも繋がり、物議をかもしたりもします。逆に、トラブル防止にもなったり、文化成熟するきっかけにもなったりします。変化があることは、地域と向き合うことになり、お金と向き合うことになります。そんな「つながりの経済」もあるんですと伝えられました。

今回の取材を通して、丑田氏の“余白がビジネスチャンスになることもあるんですよ”という言葉が印象に残りました。大人も子どもも、性別も出身地も関係ない。各個人が心の中に持っている、「あそび」や「余白」の部分にある疑問やアイデア。そのひとつひとつが合わさり、つくられた町はどんな町なのだろうと、五城目町に足を運びたい気持ちでいっぱいです。また、丑田氏がおっしゃった、ローカルを掘っていくと見つかるかもしれない、世界に繋がる「なにか」を私も見てみたいです。

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