理学部 物理科学科の伊藤豊教授が半導体中の未知の超微細場のゆらぎを発見

2022.04.20

研究成果

理学部 物理科学科の伊藤豊教授は,半導体Cu2Oの中の2つの同位体63Cuと65Cuの核スピン格子緩和時間の詳細な測定を銅核四重極共鳴法によっておこなったところ、格子振動による緩和過程に加えて、超微細場からの磁気ゆらぎを分離測定することに成功したと発表しました。この研究成果は、米国物理学会の学術誌Physical Review Bの本論文として掲載されました。

掲載論文

著者 Y. Itoh
題目 Nuclear spin-lattice relaxation studies of Cu2O
掲載誌 Phys. Rev. B 105,094429(2022)
DOI 10.1103/PhysRevB.105.094429
URL: Physical Review B

研究概要

非磁性の真性半導体であるCu2Oは格子ゆらぎが支配的であると長年思われてきました。自然界に存在する2つの同位体63Cuと65Cuの核スピン格子緩和曲線の詳細な測定を、現代的な核四重極共鳴スピンエコー法によっておこなったところ、電気四重極ゆらぎによる緩和過程に加えて、超微細場からの磁気ゆらぎが存在することを発見しました(図)。真性半導体には電気伝導キャリアは存在しないはずなので、未知の電子スピンゆらぎといえます。イオン欠陥に起因する希薄なキャリアによる核スピン散乱機構が原因と解釈可能ですが、その測定例は実際にはあまり多くありません。バンド間の電子正孔束縛状態のエキシトンによる散乱機構も考えられ、その理論的な解明は今後の展開に期待されます。
図:63Cu核スピン格子緩和率の2つの揺らぎ成分の温度変化

参考

京都産業大学 教員紹介ページ: 伊藤 豊教授
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