理学部 宇宙物理・気象学科の小郷原准教授が、深層学習を用いて火星ダストストームの自動検出を行う方法を提案しました

2022.02.09

研究成果

理学部 宇宙物理・気象学科の小郷原一智(おごはら かずのり)准教授は、火星で多発するダストストームを、深層学習を用いて自動検出する方法を開発しました。惑星大気に深層学習を応用する研究はあまり例がなく、学術誌Computers and Geosciencesに掲載されました。

掲載論文

著者:Kazunori Ogohara and Ryusei Gichu
題目:Automated segmentation of textured dust storms on mars remote sensing images using an encoder-decoder type convolutional neural network
掲載誌:Computers and Geosciences, 160, 105043 (2022)
DOI:
Automated segmentation of textured dust storms on mars remote sensing images using an encoder-decoder type convolutional neural network - ScienceDirect
URL:
https://www.sciencedirect.com/
science/article/pii/S0098300422000103

研究概要

火星には年間(1火星年)1000個以上のダストストーム(砂嵐)が各地で発生していることがわかっています。その大半は、だいたい本州程度の大きさより小さく、local dust stormと呼ばれています。本州って大きい!と思われるかもしれませんが、火星全体を覆ってしまうダストストームや、数千km以上ある高低気圧スケールのダストストームのある中では、小さいと言えるでしょう。気象学では、およそメソスケールと呼ばれているスケールです。
実は、このようなlocal dust stormは、どういったときに発生するのかよくわかっていません。高気圧が来たときに発生するのか、低気圧が来た時なのか、前線が通過した時なのか、昼間なのか夜間なのか。それがわかれば、どんな大気現象がダストストームを引き起こすのかわかります。
小郷原准教授は、ダストストームの発生時に典型的な周囲の大気状態(気圧配置)を明らかにしようと考えました。しかし、そこで問題が発生します。1火星年で1000個以上発生すると言われるlocal dust stormはいつどこで発生しているのでしょうか。そのようなデータベースは研究開始当時ありませんでした。自分で見つける必要があったのです。
ちなみに、現在利用できる火星大気の観測データは20年分です。ちょっと気が遠くなりますよね。
そこで小郷原准教授が注目したのが、当時少しずつ巷で取り上げられ始めた機械学習の一つである深層学習でした。数十枚程度のダストストームの観測画像を抽出し、「ここがダストストーム!」と機械に教えるための「教師画像」を手作業で作りました。それらを用いて、深層学習の「ダストストーム識別器」を訓練すると、ダストストームっぽさを教えてくれるのです(図1)。
御覧の通り、ダストストームの領域が白く表示されています。自信がないところは灰色になるわけです。これにより、画像中にダストストームがあるか無いか、だけでなく、面積も計測できるようになりました。もう少し工夫すれば、もしかしたら大雑把な形状まで自動で認識できるかもしれません。
図1 Arcadia平原西部におけるダストストームの領域分割の例
(上段)ダストストームの観測画像
(中段)小郷原准教授が作成した教師画像 白いところがダストストーム領域
(下段)深層学習の結果、教えてくれたダストストームっぽさ

参考

教員紹介ページ:小郷原 一智 准教授
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