【国際関係学部】アラブ圏の政治について知る—教員によるNews解説ワークショップを開催—

2022.12.27

12月6日(火)、「国際関係学部教員によるNews解説ワークショップ」では、国際関係学部の教員が専門分野を用いて、タイムリーなニュースを学生に解説する国際関係学部独自の取組です。今回は、『「周辺」から(へ)の眼差しーアラブ圏における政治・アラブ圏をめぐる政治』というテーマのもと、北澤 義之 教授とマコーマック ノア 教授に、中東アジアにおける昨今の政治情勢について解説していただきました。

(学生ライター 国際関係学部3年次 佐藤 美宇)

はじめに、「ユダヤ人」国家イスラエルの多元性について、北澤教授にお話していただきました。イスラエルは、地中海東岸に位置し、中東における民主主義国家として有名です。また、世界におけるユダヤ人人口の半分がイスラエルに住んでおり、その特色は、政治にも影響しています。11月11日に開催されたイスラエル総選挙では、右派のリクード党が過半数の議席を獲得し、ネタニヤフ大統領が再選を果たしました。社会全体においても、右傾化が進んでおり、長年対立しているパレスチナ問題では、占領地を返すべきではないと考えている国民が多いことが現状です。ユダヤ国家として国家運営をしている一方で、ユダヤ人のアイデンティティが、ユダヤ教徒としてのユダヤ人、文化的なユダヤ人、出身地の違いによるもの(アシュケナジーム、ミズラヒーム)など、様々であり、多様化が進んでいることを教えていただきました。最後には、「国際関係を正しく理解するためには、エスニシティを固定的に考えずに、多元的に考える必要がある。」とメッセージを頂きました。
「ユダヤ人」国家イスラエルの多元性について解説する北澤教授
次に、マコーマック教授から、カタール・ワールドカップと「多様性」をめぐる議論についてご講演していただきました。汚職や人権問題の顕在化を理由に、カタール開催を否定的に捉えている海外週刊誌も一部存在します。しかし、女性の社会進出や労働問題の解決など、カタール国内における変化が表れています。このような現状から、カタールのリーダーシップはW杯を色々と政治利用しているが、開催自体はより自由な社会の実現につながる可能性があると教えていただきました。しかし、世界のイスラムフォビア的(イスラム嫌い)な風潮が強すぎたため、カタール開催に対する批判が予想以上に強くなったと分析されていました。最後に、「カタールにおける変革は明確であるにも関わらず、外部(他国)から「十分に変化していない」という激しい批判があれば、改革は難しくなっていくのではないか」と仰っていました。
カタール・ワールドカップと「多様性」をめぐる議論について解説するマコーマック教授
「中東=宗教色が強い」というイメージがありましたが、今回のワークショップを通して、宗教国家内における分裂やグローバルスタンダードに向けた変革などアラブ圏の知らない一面を知ることができました。また、ニュースを見ることの大切さや学んできたことを基に事例を考察することの面白さに気付き、より一層勉学に励みたいという気持ちになりました。
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